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2016.12.30

やはり別格! あえて今さら『タッチ』にハマる理由

citrus

 

とくに再ブームの兆しなど微塵もないのだが、最近あのあだち充大先生の不朽の名作漫画『タッチ』にハマっている。

 

5ヵ月前、偶然コンビニの書棚で廉価版の1巻を見つけて購入し、そこからはもう毎月13日(ごろ)の発売日が待ち遠しくて……そんなこんなで現在は5巻までをゲットした。自宅のトイレに常置しており、大便のたびに何度も何度も読み返している。

 

まだ、上杉達也が明青学園(高等部)野球部に入部し、2年生の夏の予選は2回戦で勢南高校に敗退、その後の練習試合の9回に須見工の新田明男を三振に打ち取ったシーン……までで「(廉価版の5巻では)次巻に続く」になっているのだけれど、30年以上前に描かれた“古典作品”であるにもかかわらず、読めば読むほどあらためて痛感する。ホント素晴らしい漫画だなぁ……と。

 

私は本来、昔から『男組』だとか『男塾』だとか『男の星座』だとかの、いわゆる“男系”の硬派漫画を好むタチなんだが、そして『タッチ』以降しばらくの間、漫画界の主流となった“ラブコメ路線”をどちらかと言えば苦々しく考えていたクチだったりするのだが、そういう私のなかでも、やはり『タッチ』だけは別格だと認めざるを得ない。

 

まず、『タッチ』連載当時はかなりの話題となった弟・上杉和也の死。作者の頭の中では最初から決まっていた設定だと聞くが、「ここで殺すか〜!?」というまさかのタイミングで、準主役クラスの登場人物を、けっこう早い段階(廉価版では3巻)であっさり交通事故によって死なせてしまっている(※ちなみに人気キャラだった和也を「死なせる・死なせない」を巡り、編集者と作者のあいだで一悶着あった、との噂もある)。ほのぼのとした作風に隠された、作者の冷徹なストーリー計算と作品への利己的なまでの執着心がかいま見える、ラディカル極まりない展開ではないか。

 

あだち先生一番の武器である卓越したコマ運びのセンスも見逃せない。最小限のセリフを画力とアングルと画角(コマ)の大胆なメリハリによって、最大限に活かす技はもはや名人芸の域(とくに、サブキャラのコワモテ・原田正平を使った“トメ”の効果は目を見張るものがある)。私も過去に漫画の原作を手掛けたことがあるので、どの漫画を読んでも“コマ運び”にはつい目が行ってしまうのだが、コレのセンスにいたっては、今でも(タナカカツキ氏を除けば)あだち先生にかなう者はいないと思っている。

 

あと、じつはあだち先生がさして野球に精通していないフシがある点、ここがなによりもすごすぎる。さして精通していない(…と、とりあえず過度な野球フェチの私は断言しておく)ヒトが、さして野球を知らないまんま全26巻(単行本)もの長編傑作野球漫画を画力とセンスだけで描き上げてしまったのだ。いくら『タッチ』を「野球の皮を被った恋愛漫画」と解釈したところで、青年漫画はおろか少年漫画ですら、設定にそれなりの専門性を求められる昨今の漫画界の流れのなかではあり得ない話である。

 

もし「あなたのベスト野球漫画は?」を問われれば……ここ10年だと、高校野球監督を主人公にし、緻密な取材によって高校野球界のリアルを描いた『ラストイニング』を文句なくイチ押ししたいのだが、一方で、ルールも専門性も完ペキに無視し尽くした伝説の荒唐無稽奇天烈野球漫画『アストロ球団』(1972年〜1976年:少年ジャンプ)なんかも、ほのかに捨てがたかったりする。

 

このような『アストロ球団』、それに『巨人の星』や『侍ジャイアンツ』みたいな、かじった程度の知識しかない作者の妄想のみによって乗り切るファンタジーな野球漫画──21世紀となった今では逆に新しいのかもしれない。少なくとも私は読んでみたい。いや、願わくば原作してみたい……と、久々に『タッチ』と出会い、少年のごとく想いを募らせた私であった。

ネットニュースパトローラー 山田ゴメス

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