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2017.01.09

【今週の大人センテンス】年の初めに「べっぴんさん」が提案した幸せな生き方

citrus

 

 

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第40回 何はともあれ今年も明るく楽しく元気に

 

「飲んで 食って 歌へ」by主人公の亡き祖父の書(NHK 朝ドラ「べっぴんさん」)

 

【センテンスの生い立ち】

 

2016年10月から放送中のNHK朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」。お正月に親族が顔をそろえるが、もともと仲が良くない主人公の父とその兄が口論を始めるなど、険悪な雰囲気が漂ってしまう。すみれの祖母トク子の指示で、押し入れを探って亡き祖父の書を発見。開いてみると、素朴な字で大きく「飲んで 食って 歌へ」と書かれていた。それを見た父とその兄は、己の生き方を反省し、仕事から身を引いて次の世代に任せることを決断する。

 

【3つの大人ポイント】

 

・幸せな人生のあり方をシンプルな言葉で示してくれている

・すでにこの世にいなくても、子孫に強い影響を与えている

・年明けの放送を通じて視聴者にもメッセージを送っている

 

 

みなさま、今年もよろしくお願いいたします。余計なことばっかり言っているこの連載に、旧年中はたくさんのあたたかいご支援をありがとうございました。今年も引き続き、余計なことを言い続けていきたいと思います。

 

とはいえ、年が明けていきなり重い話も何なので、今回は明るい気持ちになれるセンテンスを選んでみました。日本の朝の風物詩というか、日本の朝をほのぼのと盛り上げてくれているNHK朝の連続テレビ小説、通称「朝ドラ」。2016年10月に放送が始まった「べっぴんさん」は、子供服の有名ブランド「ファミリア」の創業者・坂野惇子をモデルに、おもに戦後から高度経済成長期の時代を右往左往しながら生きる女性の姿を描いています。

 

「連続テレビ小説 べっぴんさん」(公式サイト)

 

あえての演出だとは思いますが、画面に漂うそこはかとない辛気臭さがこのドラマの特徴であり持ち味。今年の一発目、1月4日に放送された第76話は、近江の本家に集まった兄弟や親戚があっちでもこっちでも言い争うなど、いつも以上に辛気臭い内容でした。このセンテンスが飛び出したのは、念入りに辛気臭い展開を受けての翌日の第77話です。

 

主人公のすみれ(芳根京子)の父・五十八(生瀬勝久)と、その兄の長太郎(本田博太郎)が対立し、長太郎の息子の肇(松木賢三)が父親の長太郎に突っかかって、長太郎も気色ばみ……という状況に、祖母のトク子(中村玉緒)が激昂。「いいかげんにせい! ふたりとも出ていけ! 私が生きてるうちは、このうちはワテのうちやー!」と、ふたりの息子を怒鳴りつけます。その途端、興奮しすぎて倒れ、床に臥せってしまいました。

 

そして眠っていたトク子の夢枕に夫が現われ、押し入れにある書をふたりに見せろと告げます。探してみると、たしかにそれらしき掛け軸が。そこには素朴な字で「飲んで 食って 歌へ」という文字が書いてありました。それを見た五十八と長太郎は、顔を見合わせて大笑い。今まで胸の中に溜めていたお互いへの思いを吐き出します。できのいい弟にずっと嫉妬していたこと、自分にはないものを持っている兄に一目置いていたこと……。

 

「幸せな人生とは、飲んで、食って、歌うこと。ああ、深いなあ。さすがお父ちゃんや」

 

ふたりの息子が心を通わせた様子を見たトク子は、しばらくして主人公とふたりになった場面で、しみじみこう呟きます。その夜の食卓で、五十八と長太郎は、すっかり成長した次の世代に仕事を任せて「もう口は出さん」と宣言。それぞれに自分を縛っていた、現役への未練や無用のプライドを脱ぎ捨て、人生の次のステージへと足を踏み出しました。

 

私たちは、何のために、何を目指して生きているのか。幸せというのは、どういう形をしているのか。仕事での成功を目標にしている人もいるだろうし、家族のために生きていると考える人もいるでしょう。趣味や友達との付き合いも重要です。いろんな価値観やライフスタイルがありますが、突き詰めれば私たちは、自分の大切な人たちと、あるいはひとりで、楽しく「飲んで、食って、歌う」ためにがんばっているのかもしれません。

 

もちろん、それはなかなか険しい道のりです。人生には次々と困難が訪れるし、悩みや苦しみと無縁ではいられません。ややこしい感情に支配されたり、面倒な呪縛が付きまとったりして、笑顔を忘れてしまうこともあります。ネガティブな発想しかできなくなってしまうこともあります。自分は何のために生きているのか、どこに進めばいいのか、それを見失いそうになったときに思い出したいのが、この「飲んで 食って 歌へ」です。

 

「そんなノンキな言葉で救われたら世話ないよ」「人生、そんなに単純じゃないよ」と思う人もいるでしょう。たぶん、この言葉を念入りに噛みしめたほうがいいのは、そうやって反射的にケチをつけたくなる状態にある人です。きっと何かに疲れていたり、何かに押しつぶされそうになったりしているのでしょう。たしかに、飲んで食って歌っても何も解決しません。しかし、自分を悩ましている問題や抱えている怒りが、飲んで食って歌うことよりも大事だとか高級だとか思うのは、大きな勘違いです。

 

野暮な補足ですが、べつにお酒を飲まなくてもいいし、ごちそうを食べる必要もありません。歌うというのも、あくまで物のたとえです。踊りでも読書でも旅行でもフィギュア作りでも愛する人との秘め事でも、自分がやりたいことをやりましょう。人生は複雑に考えても仕方ない、飲んで食って歌えればそれで幸せなんだ、という大きな指標としてこの言葉を受け止めたいものです。

 

ドラマの中では、この世にいないトク子の夫が書を通じて息子たちを仲直りさせたことや、4世代が集まっていっしょに笑い合っていることを通じて、命が受け継がれていくことの意味や素晴らしさを表わしていました。年明けすぐの回で、この言葉に大きな役割を持たせたのは、制作側から視聴者への「今年は、こんなふうに生きてみてはいかがですか」というメッセージかもしれません。

 

せっかくなので、ありがたく受け止めて心の片隅に刻んでおきましょう。マイナスの感情や厄介な雑音に惑わされそうになったりしたときは、自分に向かってそっと「飲んで食って歌へ」と呟けば、たいていのことはどうでもよくなるはずです。

 


【今週の大人の教訓】

 

深刻に考えることで物事がいい方向に進んだ試しはない

コラムニスト 石原壮一郎

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