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2017.01.13

初詣も年賀状も着物も「新しい伝統」。もっと自由に考えてもいいのでは?

citrus

 

わたしは、寺と神社の旅に関する文章を書くことを仕事にしているため、年末になると、初詣関連の原稿を依頼されることが多いです。その際、問題になるのは、「そもそも、この初詣という行事はいつから始まったものなのか」ということ。神道学の某先生にうかがってみると、古くは、一家の家長が大みそかの夜に氏神の社におこもりすることはあったが、家族そろって遠方の神社に詣でる習慣はなかった。その後、明治~大正期に、鉄道網と経済の発展により、一般庶民の行動範囲が広がった。そこで、観光業の振興のために、「初詣は霊験あらたかな〇〇へ」という宣伝を行ったのが、今のような初詣スタイルが定着するきっかけになったのではないかということです。つまり、初詣の風習は、思ったほど古いものではないんですね。

この件でいろいろ検索してみたところ、東京都北区選出の都議会議員、おときた駿さんのブログが見つかりました。

この方も、初詣がそれほど昔から行われていたものではないことを知って驚かれたようですが、だからと言って、初詣そのものを否定しているわけではありません。ご自分のお仕事である政治の世界では、このような、実はそう古いわけではないのに、「昔からの伝統」であるかのように認識されている「新しい伝統」に拘泥するあまり、社会の多様性を阻んでしまう例が多いのではないかというお話しをされているのです。これに関しては、頷ける点が多いとわたしも思いました。
 

 

■年賀状だって「新しい伝統」

 

正月関連の行事には、初詣以外にも、「古くからの伝統」だから絶対にやらねばならぬと思い込んできた物事が、実はそう古くなかったという例はいくつかあると思います。まずは年賀状。江戸時代に、一般庶民が飛脚を使って年賀状を大量に出していたという話は聞かないので、これは間違いなく、明治以降に始まった「新しい伝統」です。伝統を大切にしない無礼者と呼ばれることを恐れて、長年、お金と労力を使って年賀状を出して来ましたが、それは、おときたさんのおっしゃる「新しい伝統に拘泥するあまり、社会の多様性を阻んでしまう例」のひとつだったのです。したがって、毎年の年賀状作りをストレスと思う人は「わたしは筆不精なので、来年からは失礼します」と書いたはがきを出して、「新しい伝統」からの脱却を図ればいいわけですね。

日本の伝統的な民族衣装である着物についても考察してみましょう。このごろの若い女性は、超ド派手で現代的な柄の晴れ着を身に着け、爆発したかのようなヘアスタイルに、巨大な造花をくっつけています。これに関して、よく「着物の柄合わせや着付けには日本古来の奥ゆかしい決まりがあるのに、このごろの若い人の着物の着方はなってない」などと批判する中高年女性がいますが、わたしは、それには賛同いたしません。着物だってファッションなんだから、世につれ人につれ、変化して行くのは当然だし、大正時代と今の着物がまったく違うところを見ても、現在、おばちゃんたちが「古くからの伝統」と信じ込んでいるもろもろは、実はそう古くもなさそうです。だから若い人は、伝統に縛られることなく、自分の好きなように着物を着ればいいんです。その方が、社会の多様化を促し、着物業界の発展にも貢献できるんじゃないですかね。

正月関連以外にも、「古きよき日本の伝統だと思い込まされているが実はそうでもないもの」は、たくさんありそうなので、何に関しても、一度は疑ってみた方がいいかも知れません。また、仮にそれが本当に古くからの伝統だったとしても、誰もが必ずそれを継承しなければならないわけでもないでしょう。どの伝統を守るかは、それが新しいか古いかではなく、純粋に自分の価値観で決めるべし。それが健全な社会の多様性というものですね。

寺と神社の旅研究家 吉田さらさ

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