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2017.03.15

【小物王のつぶやき】「カドケシ」登場で気づいた、新品でないと味わえない気持ちよさ

citrus

 

新品でないと味わえない気持ちよさ、というのは確かにある。パソコンやスマホを買った時の画面に貼ってある透明シートを剥がす瞬間とか、クリーニング仕立ての糊の利いたシャツに袖を通す時とか、新茶のパッケージを開けた瞬間のお茶の香りとか、買ってきたばかりの雑誌のページがちょっとくっついてるのを剥がしながら読む時とか。買ったばかりの消しゴムの、尖った角のところで小さな文字を消すのも、新品の気持ちよさの一つ。

 

多分、コクヨの「カドケシ」を考えた人というのは、その、まだ使われていない角を最初に使う気持ちよさを商品化したかったのではないかと思うのだ。もちろん、消しゴムの角は小さな文字や細かい部分の狙った個所を正確に消しやすいという「便利」な部分だけれど、それなら小さな消しゴムを使えば解決する。ところが、「カドケシ」は、何とも面倒くさそうな加工の元、やたらと角が多い消しゴムを実現している。

 

 

■尖がった角への深い執着が生んだ名品

 

これは、「角は一回使ったら、それはもう角ではない」とった、「角の尖り具合」に関する深い執着がないと実現しないデザインなのだ。だって、角が28個だよ、何だよそれ。しかも、恐ろしい事に、この「カドケシ」、カッコいいのだ。そして、見ればすぐ分かるのだ、「あ、角が多い消しゴムだ」ということが。

 

それは売れる。新品の角を何度も使える消しゴムが、その機能のための最も無駄のないデザインで登場して、しかも、さほど高くもないのだから買ってみようかという気にもなる。元々、日本人は小さな文字を書くのが大好きだから、小さな消しゴムが大好きなのだ。「カドケシ」も、構造としては小さな立方体の消しゴムが沢山くっついているようなもので、だから見ればすぐ使い方も分かる。特に、消しゴムの角が好きな人には一発で届く。「コクヨデザインアワード」の受賞アイディアの商品化なのだけど、そりゃ商品化するよね、という、そういうのが好きな人に確実に届くデザインと機能。

 

 

■アイデアを追加した類似商品も続々と

 

当然、類似の、でもちょっと違うアイディアの消しゴムもいっぱい出てきた。消しゴムの中から棒状の細長い消しゴムがせり出すもの、消しゴムの下に薄くて平たい消しゴムが用意されているもの、それこそ、小さな消しゴムが大量に袋に入っている、という、何かを見失いながら、しかし「カドケシ」の本質だけは鋭く突いたような製品まででてきた。角のような尖った部分で消すという機能だけを追うなら、それらの類似品でも全く問題がないどころか、使い方は人それぞれだから、「カドケシ」よりも合う製品を見つける人もいるだろう。まるパクリは問題だけど、それなりにアイデアを追加した類似品がいっぱい出て、ちょっとしたジャンルになっていくのは、ユーザーとしては嬉しい事なのだ。選択肢が増える、ジャンルが多様性を持つ、というのは、一つの何かに統一されるよりも確実に楽しいし、ユーザーに優しい。100人中99人が「これ」と言っても、それが合わない1人は必ずいるのだ。そして、そういう人に対して、「こっちもあるよ」と差し出せるのが、正しい社会というものだろう。

 

 

■MoMAも認める圧倒的なルックス

 

しかし、機能以外の、そう「ルックス」が圧倒的にいいのだ、「カドケシ」。コクヨのショールームには、「カドケシ」の形のソファだってあるのだ。しかも、それがまたカッコいい。つまり、あのデザインは大きくなってもカッコいいわけだ。既に、角のRも大きくなって、そんなものでは細かい部分は消せなくても、見た目はしっかりとカッコいい。それはやはり名作と言っていいだろう。ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York)の「MoMAデザインコレクション」に選定されたのは伊達ではないのだ。よく考えると、バカみたいな製品でもあるのに、便利でカッコいい。発売から14年経ってなお、角が多い消しゴムといえば、それは「カドケシ」。MOMAのデザインコレクションに選ばれた製品なのに、「カドケシ」なんていう、見たままの、ベタに日本語の製品名だというのも、ちょっとした愛嬌になっている。

 

世間には新品ではなく、ヴィンテージの魅力というのも色々あるし、畳はともかく、古女房には、古いからこその魅力があるけれど、「カドケシ」に関しては、ヴィンテージ派にも「新品、いいな」と言わせる力がある。それは、物凄い事なのだ。私なんて、未だに、「カドケシ」を店で見るたびに、「うーん」と唸ってしまう。結婚して、もうすぐ25年になるからではなく。

小物王 納富廉邦

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