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2017.09.05

人が快く感じる曲の長さは数千年前から決まっていた?ヒットソングの多くが3分~5分である理由

citrus

 

 

citrusの編集者に「どうして曲の長さは3分~5分が主流なの?」と訊かれた。たしかに流行歌にはそれくらいの長さの楽曲が多い。

 

僕は古めな音楽の専門家なのでついつい昔のことから順に考えてしまうが、江戸時代に小唄や端唄と呼ばれた流行歌は1分半から長くて5分程度。シャンソン、ジャズ、タンゴなど欧米の流行歌、流行音楽もおおむねその範囲におさまる。19世紀末から1950年代までレコードの主流だったいわゆるSP盤も3分~5分弱程度の収録時間が限界だった。

 

とは言え、レコードが発明された時点で一般的な流行歌の長さがもし10分程度だったならレコード盤のサイズを変えてでも、それに合わせて作っただろう。その時代からすでに流行歌の主流は3分~5分だったということになる。

 

1990年代以降、流行歌もサウンド偏重に歌詞の幼稚化が進みダラダラと長い楽曲が増えている。例えば僕は西野カナの『トリセツ』を「なげーな……クドいしウザいな」と思う。しかしそれでもせいぜい4分強の長さだ。6分以上になる楽曲はほとんど無く『トイレの神様』(植村花菜)のように10分になるようなものはもはや“長さ自体が話題”のネタ的な要素が大きい。

 

どうやら大衆に好まれる一曲の長さには時代や洋の東西を問わない共通性があるようだ。しかしなぜ3分~5分なのだろうか?ミュージシャンとして、音楽評論家として2週間考えぬいた結果、それには生理的な理由、歴史的な理由が存在することに気が付いた。

 

まず生理的な理由について。

 

レコードが普及する以前、音楽には一方的に聴かされるだけではなく、自分で歌ったり演奏したりダンスして楽しみたいという需要が大きかった。その場合、一曲があまりに長すぎると体力的に疲れるし、仲間内で披露する場合にもしらけてしまう恐れがある。カラオケやクラブで同様の体験をした方は多いと思う。

 

そして歴史的な理由について。

 

近世まで、東アジアでもヨーロッパでも詩の世界で主流だったのは定型詩。流行歌における歌詞も日本では短歌や俳句、中国では律詩や絶句、ヨーロッパではソネットのような定型詩を基にして発展してきたのだ。つまり、とりとめなく長くなるようなものはまれで、サイズはある程度一定になる。歌詞のサイズが決まっていれば、一曲の長さもおのずと決まってくる。それが3分前後……1分半~5分という長さだった。人が適切に感じる一曲の長さは数百年、数千年の歴史の中で遺伝子に刻み込まれている感覚なのだ。

 

まだまだ研究の余地はあるだろうが、仮説としては上々ではないだろうか。日頃、当たり前に受け入れている常識も、なぜそれが成立したのか想いをめぐらすと新しい発見があるもの。特に、音楽を作り演奏するミュージシャンたちには僕のこの記事を考えるきっかけにしてほしい。そして、よりよい創作の参考にしていただきたいものだ。

シンガーソングライター/音楽評論家 中将タカノリ

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