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2018.09.14

ミュージシャンも危機を覚える…リズムネタ、歌ネタ芸人の増加の裏にあるもの

citrus

出典:「テツandトモ 公式ブログ」より

歌ネタ、リズムネタなど音楽的な要素を持つお笑いが存在感を高めている。近年の日本では、ヒット曲は2年に1曲あるかないかだが、歌ネタ、リズムネタのヒットははるかに大規模に、高い頻度で生まれている。

 

ピコ太郎の『ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)』はジャスティン・ビーバーにシェアされトランプ大統領の家族まで巻き込む世界的人気を博した。ブルゾンちえみによるオースティン・マホーン『Dirty Work』にのせた「35億」、にゃんこスターの『リズム縄跳び』なども記憶に新しいところだし、今年大ブレイクのひょっこりはんも亜流ではあるがリズムネタの一種と言える。

 

主流の漫才やコントを肩を並べる勢いでお笑いシーンを席捲する歌ネタ・リズムネタ。愛される理由を探りたい。

 

 

■歌ネタ、リズムネタとはなにか?

 

明確な区分が難しい場合もあるが、現代において歌ネタとリズムネタはいちおう異なるジャンルを形成していると考えている。

 

歌ネタ、すなわち音楽的なお笑いは狂言、猿楽、欧米のヴォードヴィルなど洋の東西を問わずかなり古い歴史がある。お笑いと音楽、演芸の垣根が曖昧だった太古の昔から、普遍的に存在する文化なのだ。それが時代とともに発展、分化、再合流してゆき、戦後になってコミックソングと呼ばれるジャンルが隆盛に。

 

ハナ肇とクレージーキャッツ、ザ・ドリフターズ、月亭可朝、あのねのね、つボイノリオ、嘉門タツオ(※2017年、嘉門達夫より改名)といったミュージシャンや芸人たちが言葉遊びやギャグ、エロを交えた面白おかしい楽曲を量産し、テレビやラジオを通して広く一般に普及させていった。

 

これによって現代の歌ネタと呼ばれるカルチャーが形成されたのだ。近年で言うとテツandトモ、はなわ、AMEMIYA、どぶろっく、クマムシ、ANZEN漫才などがその系譜にあると言える。

 

そして歌ネタから派生的に生まれたのがリズムネタ。その発祥や創始者については諸説あるが、2000年代初頭からレギュラーの『あるある探検隊』(2004年)、オリエンタルラジオの『武勇伝』(2005年)、藤崎マーケット『ラララライ体操』(2007年)など音楽や一定のリズム、フレーズに合わせてネタを披露する形態の芸人が立て続けにブレイク(※カッコ内はブレイクした年)。初期は『エンタの神様』(日本テレビ)などテレビ番組によって、2010年代からはYouTubeなど動画配信サイトによって普及していった。

 

 

■人気の理由は“わかりやすさ”か

 

歌ネタ、リズムネタは、わかりやすい。現在の漫才シーンに直接影響を与えているもの──たとえばダウンタウンの漫才は年月を経ても古びない新鮮さがあるし、練りに練られた面白さがあるが、理解するのにある程度の思考力も求められる。おそらく5歳の子供はまったく面白さが理解できないだろう。

 

それにくらべてテツandトモが揃いのジャージで「なんでだろ~」と歌い踊る姿はいかにも滑稽だし、たとえ内容が理解できていなくても楽しく観ることができる。

 

リズムネタはさらにわかりやすい。歌ネタは社会的テーマを取り上げたりアダルトな内容のものも多いが、リズムネタはさらにシンプルで視覚、聴覚に直接うったえかける。ひょっこりはんなどはその典型と言えるだろう。

 

お笑いに高等な話芸を求める層には支持されないだろうが、子供ウケに特化するという点では非常によく計算されており、海外でもウケる可能性がある。直感的でグローバルという昨今のご時世に非常にマッチしているのだ。リズムネタは今後しばらくは市場規模を拡大してゆくだろう。

 

 

■音楽シーンがつまらないから歌ネタ、リズムネタに走る?

 

また、歌ネタやリズムネタが支持を集めている背景には音楽シーンがつまらないからという理由もあると思う。先日『マドンナ(60)も言及「最近の音楽がすべて同じに聴こえる」のはなぜか』という記事を書いたばかりだが、いかなる言い訳をしても現代の音楽シーンが質的に大衆の支持を失っているのは確かだ。

 

歌ネタ、リズムネタはJ-POP離れした音楽好きに支持されて発展している要素も大きいのではないだろうか。実際、ここ十年くらいで考えると、ミュージシャンより芸人が作った曲やフレーズの方が目新しくて魅力もあるヒット作が多い。音楽業界の片隅に居る者としてくやしいことだが、お笑い業界を見ると「すごいなぁ、羨ましいなぁ」「音楽の未来ってあちらにあるんじゃなかろうか」と感嘆してしまうものだ。

 

先日も、いろんな曲をすべて山下達郎風にアレンジしてしまう、ポセイドン石川という特筆すべき人材を発見してしまった。Twitterで100万回を超える再生数を記録するなど、その破壊力には目を見張るものがある。もはやミュージシャンとお笑い芸人の垣根を越えた存在として、認知すべきではないだろうか。

 

シンガーソングライター/音楽評論家 中将タカノリ

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