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2018.10.20

【今週の大人センテンス】元オセロ最年少世界王者から新王者へのサプライズ祝福

citrus

 

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第110回 配慮と偶然が起こした奇跡

 

「じつを申しますと、以前の記録は私自身が1982年に打ち立てた15歳という記録、今回大幅な更新でございます。たいへんな快挙でございます」by谷田邦彦(全日空機長)

 

【センテンスの生い立ち】

10月9日~12日にチェコで行なわれた第42回世界オセロ選手権で、日本から出場した福地啓介君(11)が、最年少優勝記録を更新した。彼を含むチームJAPANの帰路の経由地であるドイツ・デュッセルドルフ空港で、一同が乗り込んだ飛行機に「オセロの世界チャンピオンに、この飛行機をご利用いただいています」という機内アナウンスが流れた。声の主は、36年前に15歳でオセロ最年少世界王者になった谷田邦彦機長(51)。続けて、こう言って新王者を祝福した。アナウンスが終わると、機内はあたたかい拍手に包まれたという。

 

【3つの大人ポイント】

  • 自分の記録を破った後輩の快挙を心から喜んでいる
  • 女子のチャンピオンと団体戦の優勝も祝福している
  • 「あえて踏み越えること」の大切さを教えてくれた

 

日本から出場した11歳の少年がオセロの世界大会でチャンピオンになった――。それまでの最年少優勝記録を大幅に更新した――。これだけでも、大きな驚きに満ちたとても嬉しいニュースです。しかし、この快挙のニュースは、それだけでは終わりません。最年少世界王者の福地君をはじめ、女子の部で二連覇を達成した管原美紗さん、そして団体戦では14年連続の優勝と、素晴らしい結果を残したチームJAPANが乗った帰りの飛行機で、ケタ外れのサプライズが待ち受けていました。

 

そう、36年前に15歳で当時の最年少世界王者になった谷田邦彦さんが、その飛行機で機長を務めていて、コックピットから祝福の言葉を贈ったのです。サプライズにもほどがあるというか、ドラマでもこんな展開はあり得ません。この感動的な機内アナウンスが広まったきっかけは、チームJAPANのひとりで昨年を含めて過去5回オセロ世界チャンピオンになっている高梨悠介さん(じゃんぷ @jump1022)の動画tweet。18日10時の時点で17万近くの「いいね」が押され、6万7000以上リツイートされています。

 

純粋な偶然ではなく、オセロといえば谷田さんということで、チームの帰国便の機長になるように、全日空側が調整していたそうです。だからといって、この「奇跡」が色あせるわけではありません。フライトの予定が決まった段階では、大会の結果は未知数です。36年前に記録を作った元最年少王者と、記録を更新したばかりの新しい王者が空の上でこういうかたちで出会ったのは、粋な配慮と快挙の達成が作りだした「奇跡」だと言えるでしょう。

 

アナウンスの内容は谷田機長が考えたとか。自分の記録が破られたことなんかより、オセロの世界に新しい才能が登場したことを心から喜んでいる様子が、ひしひしと伝わってきます。福地君への祝福だけでなく、女子のチャンピオンや団体戦で14連覇した日本チームへの祝福も述べているところに、きちんとしたお人柄と深いオセロ愛を感じずにはいられません。自身のTweet(TANIDA,Kunihiko @kunihik_dartani)では、福地君のご両親にも賛辞を贈ったり、日本オセロ連盟の功績を称えたりもしています。

 

暗いニュースや殺伐とした出来事が多い中で、このニュースは私たちに大きな感動や幸せを与えてくれました。それは、福地君が見事な結果を残したことはもちろん、谷田機長がマニュアルや慣例を踏み越えて、自分の判断と責任で異例のアナウンスをしてくれたおかげ。飛行機に乗り合わせて、アナウンスを聞いてあたたかい拍手を送ったほかの乗客も、このニュースをさわやかで気持ちいいものにしてくれた大切な立役者です。

 

昨今は「決められた範囲を超えた行動」や「マニュアルに外れた行動」は、とかく非難されがちです。胸に手を当ててみると、いつの間にかそんな風潮に影響されて、自分の中に「とにかく余計なことはしない」「自分の仕事だけしていればいい」と考えてしまう部分があることに気づく人も多いでしょう。谷田機長は、たぶんある程度の覚悟を決めて、あえて踏み越えてくれました。その勇気と心意気にも胸打たれずにはいられません。

 

何にでも文句をつけるのが好きな人や、とにかく文句を付けることがプライドの拠り所になっている人は、このニュースに対して、どんな意見を持ったのでしょうか。「特定の乗客のことだけをアナウンスするなんて、ケシカラン!」「全員がオセロが好きとは限らないじゃないか。オセロが嫌いな人の気持ちを考えなくていいのか!」「余計なアナウンスをしているヒマがあったら、飛行機を安全に飛ばすことだけを考えろ!」……。もし、そう思った人がいたとしたら、じつにくだらなくて、じつに気の毒です。

 

今回は、幸いなことにそういう声は聞こえてはきません。日本もまだまだ捨てたもんじゃありませんね。ただ、ほかのことに対して、上のマヌケで無意味なイチャモンと同じようなことを言ってドヤ顔をしている人は、ネット上でも実生活でも後を絶ちません。そういう視野も了見も狭い自己満足野郎のおかげで、世の中はどんどん窮屈になっていく一方です。いい迷惑です。あら探しばかりしている日々を送っていて、本人も辛いんじゃないでしょうか。いや、大きなお世話ですけど。

 

谷田機長のアナウンスは「あえて踏み越えること」の大切さを教えてくれました。感動させてもらった私たちも、少しずつでいいので、いろんな場面であえて踏み越えてみましょう。忙しそうな同僚の仕事を手伝う、電車や街で困っている人に声をかける、スーパーのカゴに残されたレシートをゴミ箱に捨てる……。仕事でも日常生活でも、あえて踏み越えたところや踏み込んでもらったところにこそ、喜びや幸せがあると言っても過言ではありません。

 

そして、この飛行機に乗り合わせた乗客のように、他人の快挙や喜びに対して「そうか、それはよかったね」という気持ちを抱ける人でありたいものです。中には「それがどうした」と感じた人もいるかもしれませんが、お付き合いでもいちおう拍手することで、他人の喜びのおすそ分けをもらうことができたはず。カッコつけて冷めた態度を貫いた人は、せっかくのちょっと幸せになれるチャンスを逃したことになります。

 

飛行機に乗り合わせた乗客だけでなく、それはニュースを知った私たちも同じこと。そしてどんなニュースに対しても同じこと。物事に対して常に批判精神を持つことは必要ですけど、無駄にニヒルな態度をとったところでいいことなんて何もないし、いい大人がそういうスタンスを得意気に取ってもみっともないだけです。なんて言うと、ニヒルな態度こそが知的でカッコイイと思っている方から、ご批判のコメントをいただくんでしょうね。

 

 

【今週の大人の教訓】

マヌケなイチャモン欲とどう戦うかは人生における重要な課題

コラムニスト 石原壮一郎

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