HEALTH
免疫の老化は40代から加速しています。免疫力の低下症状に気づいたら、生活習慣の見直しを含む早期ケアが大切。本記事では免疫が落ちた時のサインや病気のリスク、免疫力を下げる生活習慣、更年期との関係性について詳しく解説します。
免疫は「疫(えき)から免れる(まぬがれる)」という文字通り、伝染病などから逃れること、つまりウイルスや、ばい菌などの病原体から体を守ってくれる反応のことを言います。
東京女子医科大学医学部卒業後、同大学内分泌内科勤務。米国ヴァージニア大学留学にてホルモンと老化の研究を行う。
その後、 東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート助教授を経て、2010年にエミーナジョイクリニック銀座を開設。脳疲労、コロナ後遺症、アレルギー等の根本治療の専門家としてマルチに活躍中。
※以下、写真はすべてイメージカットです。
免疫力が低下すると、病原体やウイルスから体を守る力が弱まります。それによって元気な時なら感染しない細菌やウイルスに感染したり、体調不良が続くことも。人によって生じる症状はさまざまですが、体からのSOSサインを見逃さないことがとても大切です。下記6つのチェックリストを参考にしながら、早めにセルフケアしていきましょう。
快便は健康のバロメーターと言えるほど、私達にとって重要なシグナル。お通じがあっても、毎日出ない、便がコロコロする、量が少ないといった不快症状がある場合は腸が不健康なサイン。腸には全身の約70%もの免疫細胞が集まっているため、免疫力低下の原因になりやすいのです。
体の冷えは、婦人科系疾患やアレルギー、甲状腺機能低下症に悩む多くの女性に共通する症状の一つ。常に手足が冷たい慢性冷え性は、血行だけでなくホルモンバランスも含めて体の営みが上手くいかないリスクの一つとなります。
冷えで起こりやすい主な心身の不調として、慢性的な疲労や集中力の低下、頭痛やむくみなどの症状が挙げられます。また、血の巡りの悪さは健康面だけでなく、肌の不調や乾燥、抜け毛といった美容面にも影響を及ぼします。血行不良をそのまま放置すると、代謝機能や免疫機能が低下し、仕事の能率低下や大きな病気につながることも。
ホルモンバランスの変化は免疫力の低下に影響します。生理痛の症状がひどい場合、主な原因は冷えや自律神経障害、ストレスと言われています。それらは免疫機能の低下を引き起こす要因でもあるので、婦人科疾患の背景に免疫力低下が潜んでいる場合もあるんです。
免疫機能が高い健康な人の場合、風邪は1週間前後で治ることがほとんど。しかし、一旦風邪にかかると治りづらい方、喉の痛みや微熱症状がずっと続くような方は要注意。加齢やストレスによる自律神経の乱れ、腸内環境の悪化など複合的な要因で免疫力が下がっている場合、ウイルスへの抵抗力も弱くなり、病気の長期化や二次感染のリスクもあります。
食欲不振は、何かしらの体の不調を示す重要なSOS。「最近、食が細くなってきた」という方は、代謝や胃腸の働きが落ちて免疫機能が低下している可能性があります。
また食事で十分な栄養補給ができない状態が続くと、体力や筋力の身体機能が低下し、さらに免疫力が落ちるという悪循環に。
「昼夜逆転の生活リズムで朝すっきり起きられない」「寝不足が続いている」「眠りが浅くて睡眠の質が悪い」という方は、免疫力が低下している可能性大。
睡眠中に分泌される成長ホルモンなどには、細胞の修復や疲労回復、免疫細胞の働きを高める役割があります。そのため、睡眠不足や不規則な生活が続くと、脳や体の回復が十分追いつかずにだるさが残ったり、自律神経の乱れから様々な心身の不調やストレスを増長させることも。
睡眠時間が7~8時間取れていなかったり、成長ホルモンやメラトニン(睡眠ホルモン)がしっかり出せる夜の10~11時に眠りにつけていない、日付が変わってから就寝しているという方は要注意です。
それでは、免疫力を下げないためにはどんな習慣が大事なのでしょうか?今回は特に「食習慣」に焦点を当てて、免疫力の維持に役立つヒントを伊東先生に教えていただきました。
冷たい飲み物は内臓を冷やすことになるので、あまりおすすめできません。過度に腸内を冷やすと下痢やお腹の不調につながることもあり、免疫力低下のリスクも高まります。健康的な水分摂取のためにも、氷は控える、常温以上にしてから飲むといったちょっとしたひと手間も免疫維持に有効です。
コーヒーやお茶をたくさん飲む人も要注意。カフェインには利尿作用があるので、体に必要な塩分やミネラルまで排出されてしまいます。免疫力アップのためには、“水分とミネラルを保持できる飲み方”を意識することも大事。例えば、ペットボトルの水500mlにひとつまみの自然塩を入れて、さらにレモンを絞ると香りがついて飲みやすくなりますよ。
白砂糖やブドウ糖の摂り過ぎも免疫力を落とす要因の一つ。なぜかと言うと、体を酸化させてしまうことや、血糖値の乱高下が起きやすくなることにより、免疫力の低下症状をさらに招きやすくなるからです。
昔から「酒は百薬の長」と言われるように、お酒も適量摂取であれば血の巡りを良くしたり、神経がほぐれてリラックス効果が得られます。しかし、大量に飲み過ぎると肝臓がアルコールを分解しきれず、肝機能が低下して免疫力が落ちやすくなります。節度あるアルコールの摂取量は1日平均約20g程度。体質にもよりますが、ビールなら中瓶1本(500ml)、アルコール度数7%のチューハイなら1缶(350ml)、ワインならグラス2杯弱を目処に、飲み過ぎないように注意しましょう。
免疫力が低下すると、どのような症状が出やすいのでしょうか。ここでは、一般的に知られる風邪やインフルエンザ以外に、免疫機能が弱まった時に発症しやすい病気や症状について詳しく解説します。
免疫力が弱くなりホルモンバランスが崩れると、子宮や卵巣が腫れることがあります。いわゆる子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症といった病気ですね。健康な時であれば自分自身の免疫力で細胞の増殖を止められますが、免疫力が低下している時にはこれらが増殖して腫れや炎症を起こす可能性があります。
“お肌はヒト最大の臓器”と言われるように、私たちの健康状態を映し出す鏡。そのため、ストレスや過労で免疫力が弱まると肌本来が備えるバリア機能も低下し、炎症や肌荒れが起きやすい状態になります。肌の免疫機能が落ちた時の最たる症状がアトピー。普段は出ない湿疹や蕁麻疹が出た時は、免疫力の低下を疑ったほうがいいでしょう。
口と腸は1つの管で繋がっているため、口腔内の健康状態は免疫力に大きく関係しています。そのため、歯周病や虫歯ができるなど口腔環境が悪い時は腸内環境も悪化している状態と言えます。
逆もしかりで、口腔内のトラブルが増えると一部の悪玉菌が胃で消化されず腸にたどり着き、その結果、腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が優位になり、腸のバリア機能や免疫力もダウン。全身に炎症反応が出たり、感染症にかかりやすくなります。
この悪循環を生まないためにも、毎日の歯磨きを徹底するなど、まずはオーラルケアを徹底するということも大事です。
免疫力は20代をピークに、40代になると半減すると言われています。なので、エイジングは免疫力を低下させる一つの要因。でも、年齢を重ねても免疫が高く健康な人もいますし、逆に若くても免疫力が低い人も多いですよね。なぜなら、免疫力の低下には加齢以外にも、ストレスや睡眠・運動不足、遺伝的な体質、腸内環境の悪化や自律神経の乱れなど、様々な要因が関わっているからです。
免疫の老化は生活習慣や食生活など、自分で見直せることで緩やかにすることが可能です。
男女ともにホルモン変化が免疫力や代謝機能に関係するので、更年期や閉経は免疫力が低下する一つの分岐点だと言えます。しかし一番問題なのは、更年期の年齢(一般に45歳から55歳前後)でないにも関わらず、ホットフラッシュなどの更年期症状が出たり、若年性更年期になってしまうケース。自律神経失調や副腎疲労が原因でホルモン分泌が減少していたり、そもそも免疫力が下がってきたせいで更年期症状が出始める方もいるので要注意です。
男性の場合もホルモンの低下による影響だけとは言えませんが、いわゆる男性更年期が免疫力の低下に関係している場合もあります。
更年期特有のイライラは、女性ホルモンの減少によるセロトニン不足の影響や、自律神経のバランスが崩れることなどによって感情のコントロールが効かないなど理由は様々です。それらに加えて、家庭や仕事のストレスが追い討ちをかける場合もあります。
イライラした状態も免疫力に大いに関係します。アドレナリンが過剰分泌されることで血管を圧迫して血流を悪くしたり、胃腸の働きや代謝を悪化させるので、免疫力の低下に繋がります。イライラの感情は交感神経が優位である合図。そんな時は、リラックスに効果的な呼吸法や、体を温める運動をぜひ取り入れてみてください。次第に気分が落ち着きますよ。
寒さと免疫力については、自律神経が関係しています。冬型の冷たい気候ではどうしても交感神経が優位になりやすく、アドレナリンが過剰に分泌されます。そうすると血流が悪くなって体が冷えたり、胃腸の状態も悪化します。一方、温暖な気候では副交感神経が活発に機能することでリンパ球が活性化し、血流や免疫力をアップさせてくれます。
また自律神経以外にも、冬の冷たく乾燥した空気は喉の粘膜を乾燥させ、喉の炎症やウイルス感染のリスクなどを引き起こしやすくなります。室内では20~25℃、50%前後の湿度を保ち、十分な睡眠・バランスの取れた食生活を心がけて、ウイルスに負けない体作りを心掛けましょう。
免疫力の低下は食生活や生活習慣の乱れ、加齢などの複合的な原因によって引き起こされます。見過ごすとさらに症状が悪化し、別の病気にかかってしまう場合も。免疫力低下のサインに気づいたら早めに対処していきましょう。
画像提供/PIXTA 取材/今西香月 編集/永見 理
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