《29年間ビューティ担当のベストコスメ》【第28回】アルビオンの「フローラドリップ」

「発酵」と聞くと、肌に良さそう、健康に良さそう、と思う人が多いはず。伝統の食品技術の延長である「良かったから化粧品にも応用してみました」という時代から、化粧品を作るために行う高度な発酵へと進化しています。肌への安全性を保ちながら多くの有用成分を配合するには、発酵という技術が欠かせない。自然でありながら最新科学でもある発酵を究めた名品が、日本ブランドから誕生しました。

今月の殿堂コスメは、進化を続ける「発酵ビューティ」。アルビオンの「フローラドリップ」

フローラドリップ 160㎖ ¥13,000、80㎖ ¥7,000(アルビオン)。大ヒット化粧水〝スキコン〟(薬用スキンコンディショナー エッセンシャル)の45周年の年に発売されたアンチエイジング万能化粧液。フローラ(FLORA)の意味は「花、微生物」、ドリップは「滴」の意味から「濃い液」というテクスチャーへ繋がる。フィトケミカル研究と最新の発酵技術を組み合わせ、「白神研究所」の自社農園で有機栽培された植物を使っている画期的な製品。2019年9月16日発売。

\ここがすごい/
1:一つの化粧品が肌に合わせて効果を出す
2:そのためには多くの有用成分が必要
3:個性が異なる成分から、新しい有用成分を生み出す「発酵」で可能になる


最新科学と自然が融合する「発酵」で作られた、アルビオンのDNAを持つ〝クセになる〟万能化粧液

 通称〝スキコン〟や〝乳液ファースト〟など、アルビオンは独自性にあふれた〝クセになる〟ブランドです。去年発売された「フローラドリップ」も一度使ったらやめられない。使い心地、その効果の確かさ。感じていた乾燥がなくなり、次に肌全体がレベルアップされたと強く感じ、その実感をもう一度味わうためにまた使いたくなるのです。乳白色でトロッとしたテクスチャーとハーブの香り、シンプルを究めたボトル。この潔い佇まいの1本に、実は最先端の科学と自然の融合が詰まっている、というのが今月のお話です。

 最新コスメを調べると「発酵」という言葉が目につきませんか? 日本の化粧品においては、
1980年、酵母による発酵の基礎研究から生まれた「ピテラⓇ」を主成分としたSK-IIの「フェイシャル トリートメント エッセンス」から注目され、現在は、特定の乳酸菌・ビフィズス菌に代表されるプロバイオティクス(腸内フローラのバランスを改善することによって、有益な作用を人にもたらす生きた微生物)が話題になっています。そして、このフローラドリップはまさに〝発酵ビューティ〟のハイライトと言えるでしょう。

 フローラドリップ誕生の背景には「スマートセルインダストリー」という潮流があります。意味は「生物による物質生産」、石油の代わりに微生物を使って新しい素材やエネルギーを作る経済産業省のプロジェクトで、100万種類ともいわれる植物が生み出す化合物を効率よく安定的に活用するための開発を推進しています。


 それまでアルビオンは化粧品に発酵エキスを使用したことはあるものの、発酵のプロセスを用いたのはフローラドリップが初めて。日々変化する肌の状態に合わせて化粧品を使い分けるのが当たり前になった時代に、「化粧品が肌に合わせて働いてほしい」というミッションを持ってフローラドリップの開発が始まりました。


 ではどうやって? ――その答えは、「できるだけ多くの有用成分が入っていれば、さまざまなエイジングの悩みに対応できる」。しかし異なる有用成分を豊富に入れ、一つの化粧品に仕上げるのは至難の業。そこで発酵という技術の出番です。微生物による物質変化である発酵は、数多くの新しい有用成分を生み出す可能性があるからです。

 過去、自然の営みである発酵はなりゆきに任せる部分がありましたが、アルビオンは高度にデザインされ、目的となる機能を狙った「化粧品のための計画的な発酵」を行いました。それを可能にした理由の一つは、フローラドリップはアルビオンが運営する「白神研究所」で作られた5種の植物を原料としていること。植物の成り立ちから、いつ採集するのが適切か、この時期の植物にはこの効果が大きいなど、長年の研究知見が蓄積されていたためです。世界遺産・白神山地の麓に位置し、10年前に始まった白神研究所の畑は2018年に有機JASの認証を受けています。フローラドリップには有機栽培したヤマヨモギ、カワラヨモギ、ヤグルマギク、コウスイハッカ(別名:メリッサ、レモンバーム)、タチジャコウソウ(別名:タイム)の5種を使用。ヨモギ属のラテン名はギリシャ神話の女神アルテミスから来た「アルテミシア」で、古くから女性疾患に効果がある薬草として使われてきました。主にカワラヨモギは抗炎症、ヤマヨモギは血行促進に効果があり、ヤグルマギクの青色・アントシアニンで高い抗炎症効果、コウスイハッカの香気成分には鎮静作用、タチジャコウソウには抗菌と収れん効果、といった具合に、個性の異なる植物5種を意図して選定しました。しかしハーブを虫除けに使うことからわかるように、実はハーブには微生物がとりつきにくい。それを発酵させる鍵になったのが、秋田今野商店の純白麹「しらかみ」です。乳酸菌などではなく麹である理由は、麹は遺伝子解析が完了して200種以上の酵素を作り出すことがわかっており、麹の酵素反応が予測できるため。そのおかげで早い段階から予め得たい肌効果を満たした結果が出て、フローラドリップの誕生に至りました。

 後日談として、5種の植物発酵液には完成時に7,814もの成分が確認されていたのですが、継続している研究によると今も増えているらしいです。そこが化学化合物とは違う点。まさに生きているんですね。それを聞いて、〝進化する発酵〟が今後どれほどの化粧品を生み出すのか、楽しみになってきました。私たちの肌未来は明るいかもしれません。

\使い切りました♡/

160㎖入りを使用。1回10円玉大くらいを顔全体に馴染ませ、そのあと気になる部分に重ね塗り。朝晩使って2カ月半で使い切り、現在2本目です。手に出したときはトロッとして、たまに糸を引くほど濃い感じがするけれど、さっぱりと顔全体につくのが不思議。そして本当に乾かない。5種の植物の香気成分による製品の香りは、自然で心地よく使っていて癒されます。脳波測定でアルファ波に大きな反応が見られ、リラクゼーション効果が得られるというエビデンスがあるそうです。
29年間ビューティ担当・ 編集I
『JJ』時代から美容を担当。スーパーモデルブーム、 日本上陸前のM·A·Cをブレイクさせる。愛ある視点で厳しく化粧品を選び、「コスメは感動!」が信条。美ST ONLINEでの連載「30年目のコスメ愛」も好評。
2020年『美ST』5月号掲載
撮影/河野 望 編集・文/石原晶子