《30年間ビューティ担当のベストコスメ》【第45回】新しくなった伝説の美容液。コスメデコルテの新作〝リポソーム〟美容液
今月の殿堂コスメは、コスメデコルテの 「リポソーム アドバンスト リペアセラム」

\ここがすごい/
1:リポソームとは「リン脂質多重層の微細なカプセル」
2:リポソームがラメラ構造を直接形成する
3:角層の中層・下層のケラチンネットワークへの保水が重要
29年、秘密を解き明かし続けて完成した先代を超える新次元の〝リポソーム〟美容液
化粧品の進化が目覚ましいなかで、数十年もリニューアルしないことは今や珍しいことになりました。ロングセラーとは完成品と同意義。コスメデコルテの「モイスチュア リポソーム」はまさにそんな存在でしたが、なんと29年ぶりに「リポソーム アドバンスト リペアセラム」としてリニューアル。使ってみて、先代よりもさらに良い手応えがあると私は感じました。特にキメの整い方が半端ない!見ためも手ざわりもツルンとした肌になりました。
私が最初に「リポソーム」という言葉を聞いたのは、1986年、リポソームに初めて着目した美容液「カプチュール」がディオールから誕生した時。この時は〝デリバリー技術〟という意味合いでした。リポソームとは「リン脂質多重層のカプセル」。リン脂質は肌の構成成分であり、リポ=脂質、ソーム=丸いカプセルを指し、その中に成分を入れて届けます。
実は、1984年にコーセーの研究員が「リボソーム」(細胞内器官)の講習会だと思って参加したのが、一字違いの「リポソーム」技術に関する講習会だったという偶然からこの製品は始まっています。そこでリポソームに魅せられ、扱いが難しいリン脂質を、「安定性・感触・匂い」など含め化粧品に適合させようと、さまざまな研究を重ねていきました。さらに商品がリポソームを名乗るには、安定的にボトルの中でずっとリポソームが存在していることを役所に証明しなくてはならず(写真を撮るにはリポソームを輪切りにするのですが、それがまた至難の業)、それに2年もかかりました。そして1992年に、リポソームを名乗る認可を受けた唯一の化粧品として先代「モイスチュア リポソーム」がデビューしたのです。
化粧品におけるリポソームには、3つの特長があります。①乳化タイプ(水分と油分を混ぜる活性剤で油分を閉じ込めたカプセルを作る)に比べるとリポソームの大きさは10分の1ほど。直径は0.1~0.2ミクロンの微細な粒子。②リポソームは肌のラメラ構造(セラミドが規則正しく並んでいて、バリアを作り水分を逃さない)と似た構造を持っている。③油分が入っていないのに高い保湿効果を持つ。
加えて、新しい「リポソーム アドバンスト リペアセラム」の最大ポイントは、リポソームの新機能の発見〝リポソームがラメラ構造を直接形成〟すること。塗布したリポソームがラメラ構造を作るのです。つまりこれは、デリバリー技術であるだけではなく、リポソーム自体が美容成分だということ。リン脂質で構成される微細なカプセルであるリポソームは角層との親和性が高く、角層に浸透し、貯留して長時間うるおいを与え続けます。そして塗布された後にラメラ構造を形成し、うるおいを溜め込む肌へと導きます。
肌を守っている角層は10~15層ほどあり、それがさらに3層にわかれていることが最新の皮膚科学でわかりました。角層細胞の中にはなんと角層全体の約90%の水分があるのですが、中層・下層にケラチンネットワークが広がり、隙間に水分を保持し溜め込む保水構造にしっかり作用するのも新セラムの特徴。キメが整ったと私が感じたのは、おそらくその働きによるものです。そして、先代よりもリポソーム構成成分を高濃度に配合しています。これはリポソーム膜の強度をアップできたから。成分を一から見直し成分同士のバランスや組合わせなど処方を研究して、相当難易度が高いのですが、ぶつかって融合したり、壊れたりするのを防ぎました。
私が発表会で興味深かったのは、「ただ安定するだけでなく、美しいリポソームを作りたかった」という言葉です。2層でもリポソームとは言えるけれど、きれいな多重層を作りたいという意思は、結果、ラメラ構造の形成に有利となり、肌により良い効果をもたらしました。また、安定化だけを求めると使い心地が悪くなりがちなのが化粧品というもの。効果・安定性・使用感のいずれも妥協せず、今や欠かせないSDGs、クリーンビューティやヴィーガン処方まで兼ね備えた、現時点で最新&最高の製品が完成したのです。
29年間の信頼感を超える化粧品を作るのは大変だったろうなあ、と使いながらしみじみ思いました。基礎研究をする人、処方する人、効果を証明する人、安定的に多くを生産する工場の人、ボトルを作る人、多くの部門が一体となって追究し取り組める存在が、〝名品〟なんですね。
\使っています♡/

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2021年『美ST』12月号掲載
撮影/河野 望 イラストレーション/大沢かずみ 編集・文/石原晶子