FEMTECH
生殖医療が進化したとはいえ、全員が成功するとは限らない不妊治療。今回は10年にわたる治療を経て養子縁組の道を選んだ、不妊ピアカウンセラー・池田麻里奈さんにお話を伺いました。また、養子縁組を考えるうえで知っておきたい基礎知識についても紹介します。
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10年に及ぶ不妊治療で2度の流産と死産を経験し、がんばってもどうにもならない現実に直面。42歳の時に子宮腺筋症で子宮を全摘することに。出産はできなくなりましたが、この先ずっと子供を育てたい気持ちは消えずに生きていくだろうと感じ、以前から考えていた養子縁組について真剣に話し合いたいという思いを手紙に書いて夫に渡しました。夫の答えがノーだとしてもきちんと話し合って結論を出したい、自分の気持ちを知っていてほしいと思ったんです。手紙を読み、夫も「君の考えにつきあうよ」と養子縁組を決意してくれました。
当初は血の繋がらない子を愛せるのかという不安もありました。でも実際に赤ちゃんが来てからは、「努力して愛する」なんて考える余裕がないほどお世話に必死。どうにかこの命を大切にしようとだけ思っていました。そうしたら、いつのまにか家族になっていました。一緒に泣いたり笑ったりする時間で家族になるんですね。今は自分の命よりも大切な存在です。
息子は自分が養子であることは分かっています。赤ちゃんの頃からいつも「うちに来てくれてありがとう」と話していました。隠しているといつか絶対矛盾が生じる。ごまかしたり、嘘をついたりするのは息子にとってよくないと思ったんです。息子は産みの母親と育ての母親、2人のママがいることを当たり前と思っているようです。幼稚園に行くようになると、お友達はママが1人しかいないことに驚いていました。それくらいうちでは隠すことでもなんでもない普通のこと。世の中の普通にはこだわらなくなりました。
もし今、不妊治療中で養子縁組に関心があったら、治療中から同時進行で考えてほしいです。子供と親の年齢差は45歳までのことが多く、リミットがあります。養子縁組の選択肢があるうちに自分たちの意思で、夫婦の道を選んでほしいです。
「なぜ子供を迎えたいのか2人でとことん話し合い、自分たちの意思で覚悟を決めました。決心してからは民間の養子縁組あっせん団体に登録。養子を迎えるための説明会・研修を受けました」
妊活・流死産・養子縁組の相談を行う『コウノトリこころの相談室』主宰。5歳の男の子を育てている。著書に『産めないけれど育てたい。ー不妊からの特別養子縁組へ』(KADOKAWA)
写真左:「44歳の時、生後5日で我が家へ来てくれた息子。一目で愛おしさが溢れました。本当に小さくて、抱っこするのもドキドキでした」(池田さん)
原則として養子の年齢は15歳未満。養親は夫婦どちらかが25歳以上であればOK。厳密ではないが、養子を迎える親と子の年齢差は45歳までが多い。40代で養子縁組を考える場合は早めに準備を始める必要が。
居住している地域から離れた団体を選ぶことも可能。妊娠中から実親のサポートに入ることもあり新生児の委託も多い。養子縁組の費用が発生するが、縁組の成立後も長期間フォローが受けられることがほとんど。
児童相談所に相談し、研修・調査を経て養子縁組里親に登録。費用がかからず公的機関の安心感がある一方、手続きに時間がかかることも多く、マッチング期間が3カ月に及ぶ地域も(地域によって異なる)。
※養子縁組には「特別養子縁組」と「普通養子縁組」があり、それぞれ必要な手続きや条件が異なります。
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2024年『美ST』9月号掲載
撮影/小川 健 取材/伊藤恵美
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