「性行為はできないから不倫じゃない」という60歳夫の主張は許せる？レス10年妻のいらだち【セックスレス AND THE CITY -女たちの告白-】

日本では半数以上の夫婦が陥っているといわれるセックスレス。結婚式場で働く結子さん（仮名・55歳）もその一人。繊維系商社に勤める夫・大輔さん（60）とは、もう10年近く性交渉のないDINKS夫婦です。大輔さんは55歳のときに前立腺がんの手術を受けて以来、完全なED状態。けれどそれをきっかけにキャバクラなどの夜遊びをむしろ隠さなくなり、手術前より夫婦ゲンカが増えたといいます。

「夫とは職場の上司の紹介で知り合いました。結婚は私が35歳、夫が40歳のとき。今年の12月で結婚20周年を迎えます。彼はバツイチで昔から“みんなでワイワイ夜遊びする”のが好きなタイプ。夫曰く私の第一印象も“よく笑いよく飲むお姉さん”だったらしく、似た者夫婦なのかもしれません」。
当時の結子さんは、大輔さんの会社の系列会社に勤めていました。
「女子大出身で周りの友人たちの間では“寿退社が理想”という空気がまだあった時代でした。私もそう思っていたはずなのですが、気がついたら上司に可愛がられ、やりがいのある仕事も任されて、あっという間に30代半ばに。8歳下の妹が結婚したときにふと我に返って、上司や友人に合コンをお願いしたんです」。
大輔さんとは交際が始まると同時に婚約。出会って半年で入籍し、1年後に結婚式を挙げたそう。

それでも大輔さんが前立腺がんと診断されたときは、心底心配したといいます。
「浮気された時は激怒しましたけど、彼はもともと“半分父親”みたいな甘えられる存在。天然ボケのような明るさにもずいぶん救われてきました。早期発見で手術ができたとはいえ、“このまま死んでしまったらどうしよう”と不安でひとりで泣いたこともあります」。
大輔さんは、手術とホルモン療法を経て寛解。体重もほぼ戻ったそう。
「もともと楽天的な性格で落ち込むこともなかったですね。無事に仕事にも復帰して今では系列会社の役員をしています」。
回復後は夫婦で温泉旅行に出かけることもあるといいますが、性交渉はありません。
「主治医との話を聞いた感じだと手術後も男性機能は戻っていません。でももともとセックスレスでしたし、私はまったく気になりません。むしろプレ更年期で体調が不安定になった頃に性交渉がなくなり、そのまま“老夫婦”のような関係になれたのは理想的だったかもしれません」。

ただ“老夫婦”のようになった今も、大輔さんの交友関係は枯れていない様子。
「うちの場合、今のままで不満はないんです。性交渉がないのも年齢的に自然ですし。ただ、以前にも増して夫の夜遊びが目立つようになったことがモヤモヤするんですよね」。
大輔さんは、昔から行きつけのキャバクラやクラブで遊ぶのが好きだったそうです。
「ある程度は仕方ないとは思っています。でも前は“隠す”気遣いがありました。それが最近ではクラブのお姉さんの名刺をポケットに入れたまま帰ってきます。とがめると『浮気できないんだからいいじゃないか』なんて言うんです」。
結子さんは、夜遊びにお金を使う夫の姿を見るたび、過去の浮気の記憶がよみがえり、腹が立つそう。
「だから『じゃあ私もホストクラブで遊んでいいの？』と聞いたんですが、『ハマりすぎて借金しなければ別に…』なんて妙に寛容なのもまた腹が立ちます。何より嫌なのは、若い女性と話すだけで大金を払う価値があるという考え方になっていること。昔は“付き合いたい”という野心が見えたぶんまだ理解できたんですが、今は逆に物悲しくて……。複雑ですね」。

※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。

取材・文／星子　編集／根橋明日美　イメージ写真／PIXTA