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日本では半数以上の夫婦が陥っているといわれるセックスレス。53歳のれいこさん(仮名)は10歳年上の夫・晋助さんと2人暮らし。娘も巣立ち、セックスレス歴は10年以上。フリーランスの編集ライターとして在宅ワークをしながら、最近では美容医療とヨガにハマっています。
「私は、ちょうどバブル崩壊寸前に社会に出た世代です。4年制大学卒だったら、モロにバブル崩壊直後に就活をするところでしたが短大卒だったので、苦もなく大手メーカーに就職できました」。
とはいえ、就職してまもなく起こったバブル崩壊の余波は一般職のれいこさんの目から見ても明らかで、時折オフィスに殺伐とした空気を感じることも。営業をサポートする事務の仕事も、慣れてしまうとそう楽しいものではなかったそうです。
彼氏は短大の隣に併設されていた4年制大学の先輩でしたが、社会人になってみると大学生は子供っぽく見えてしまい、ほどなく破局。その後、2歳年上の会社の同期と付き合いますが、交際5年目で結婚を考え始めた矢先に別れることに。
彼女にとっては25歳という年齢は「まだまだこれからおもしろいことがある」可能性に満ちた時代だったそう。「ちょうど『独身女性はクリスマスケーキ。25までよく売れる』というバブルっぽい価値観が変わっていく、潮目の時代でした」。
れいこさんはひとまず「新しいことを始めたい」と思い立ちます。
「そんな頃に出会ったのが今の夫です。出会いはちょっと言いづらいですが、水商売のアルバイト。繁華街でよく配られていたポケットティッシュに書かれている求人年齢がだいたい26歳までだったので、採用されなくなる前に経験したかったんです」。
キャバクラとは少し雰囲気の違う、レースクイーンのような服装でドリンクを運ぶ六本木のダイニングバーは時給3500円から。月給22万円だった一般職OLとしては充分な金額でした。
そこの常連が、大手通信会社勤務の晋助さん。当時30代半ばだった彼は、流行り始めたインターネットについて教えてくれた恩師のような存在でもあります。
パソコン通信で親しく交流し始めた晋助さんの影響を受け、れいこさんは会社を辞めて水商売をしながらコピーライターの専門学校に通うことに。卒業後は派遣社員として印刷会社で働き、通販サイトのライティングを担当します。
30歳になった年、父親の病気をきっかけに晋助さんと結婚。10歳の年の差がありバツイチだった晋助さんですが、前の結婚では子供がいなかったこともあり、実家の両親も歓迎ムードでした。「両親もよく知っている堅い会社勤務ということもありますが、彼の実家が裕福だという理由もあったと思います」。
晋助さんは、前回の結婚で購入したマンションを都内に所有しており、ローンもすでに完済。頭金は晋助さんの両親が出したそうで、れいこさんは3LDKのマンションの家具を総入れ替えして結婚生活を始めます。
「33歳で長女を出産して、大きな夫婦ゲンカをすることもなく平和なまま20年近い時が過ぎました。多分年の差があるからだと思いますが、すごく平穏です。私は20代からずっと彼に甘えていますし、今は好きな仕事だけをやっています。元々末っ子気質なので年の差婚は正解でした」
そう話すれいこさんですが、仲が良い一方でセックスレスになるのは早かったそう。
「彼は職場の仲間と飲みに行くのが大好きだったので、グルメで大食漢。ワインも浴びるように飲んでおり、50代前半で糖尿病になってしまいました。さらに高血圧の薬も飲んでいて、会社の人間ドッグで脂肪肝を指摘されたことも。家のパントリーの棚にはガサッと薬の袋が置かれており、朝昼晩と複数の薬を飲んでいます」。
10年ほど前から、性行為において十分な勃起が得られなくなってしまった晋助さん。
「れいこはまだ若いから申し訳ないし、ちょっとEDの薬をもらえるか相談してこようと思う。2人目が欲しいなら一緒に相談に行くか?」と告げられた時、れいこさんは、「やめてよ。体のほうが大事だよ」と反対しました。
「彼の飲んでいる薬とED治療薬の相性が良いのか悪いのか調べたりしたわけではありません。でも、すでにたくさんの薬を飲んでいるのでなにか副作用があったらと心配でしたし、そこまでしてセックスレスを解消する必要はないんじゃないかと思ったんです。ただでさえ男性より女性は長生きなのに、早死にされたら元も子もないですから」。
年上の相手との結婚は経済的にも精神的にも甘えやすいこと、デメリットは相手の体が先に弱ってしまうことだと苦笑するれいこさん。「相変わらず夫婦仲は良いですし、娘がアメリカに留学してからは、2人で金曜日の夜にワインを明けて映画を見たりしています」。寒い日に肩を寄せたり、酔っ払って腕を組んで歩くようなスキンシップが今でもあるそうです。
「セックスレスについては、40代前半は少し寂しかったですが、ヨガや加圧トレーニングに目覚めてストレスを解消するようになってからは気にならなくなりました」。
基本的に、晋助さんは妻にも娘にも友人にも太っ腹な性格とのこと。「彼は度を超えた散財はしませんが、気前がいいバブル男子の気質を残していて……。家庭で私は医療費や保険も含めた『私個人にかかる費用』を自分で払っているだけ。家計の大半を夫が負担しているのに、記念日にはブランドバッグや着物を買ってくれたりして決してケチな性格ではありません」。
そんな晋助さんが珍しく苦言を呈したのは、美容クリニックのおよそ30万円の領収書。最近流行りの「溶ける糸」でリフトアップする施術で使ったお金です。糸が体内に吸収された後も、コラーゲンの生成が促進されてたるみ防止になるという触れ込みですが、短い施術時間で得られる分かりやすい効果にれいこさんは大満足。
同窓会で会った友人にも「若返っている。30歳の頃のれいこの顔が浮かび上がってきた!もちろんまったく同じではないけど、そこが逆に自然でいい」と絶賛されました。
ダウンタイムも数日軽い腫れを感じたくらいで、マスクをしていたせいか晋助さんはまったく気が付きませんでした。
しかしフリーランスライターとしての確定申告などを晋助さんにお願いしていた関係で、れいこさんのカードの利用履歴は筒抜け。もともと隠す気もありませんでしたが、晋助さんは意外なことに、美容施術に難色を示しました。
「前にもやっていた皮膚科でのレーザー治療みたいなものだったらいいけど、これは麻酔のいる施術でしょ。夫の僕が今のままでいいって言っているのに、どうして顔をいじる必要があるの?」。しまいには「若い男にモテたいの?」という聞き捨てならないセリフも飛び出し、2人は珍しくケンカ状態に。
ローン嫌いの晋助さんに影響されて、半年コツコツと費用を貯めて施術を受けたれいこさんは腹を立てます。「どうしてそういう発想になるの?あなただって、育毛剤は使うし、愛車を大事にメンテナンスするでしょ。それは『モテたいから』じゃないでしょう。金銭的に可能なら大事なものはできるだけきれいに保ちたい、って自然な欲求じゃない?」。
晋助さんは、愛車のクラシックカーを18年間乗り続けており、劣化が目立つ内装パーツを交換するなどコストをかけてメンテナンスしています。
「自分で言いたくないけど、私に限って言えば、いくらリフトアップしたって若い男にはモテないよ。昔の私にそっくりな娘がいるからよく分かる。どうしたって20歳とは細胞が全然違うし、何百万かけて若返っても、もう道ばたで水商売の勧誘を受けることはない。そんなことは百も承知の上で、コンプレックスを改善して気分をあげて、更年期で暗くなりがちな気分を明るくしようとしているんじゃない」。
れいこさんの剣幕に気圧された晋助さんは、「健康被害はないの?」「どれくらいの頻度でメンテナンスをするの?」「それをやめるとどうなるの?」といった質問を。「リスクはなんにでもあるけどなるべく少ない施術を選んでいる」「1年半くらいで糸を増やせばキープできるけど、やめたら吸収されて元に戻るだけだよ」などと丁寧に答えると、「確かに老化が気になって外出したくないとか言い出すと困るからな。メンタルケアの一貫というならいいと思うよ。ただ多少費用がかさんでもちゃんとした医師を選んで、リスクが少ないやり方を探してね」と彼はしぶしぶ納得した様子。
さらに、病院選びに参加させてくれ、と条件をつけてきました。
「そうはいっても、選んだ病院の費用が高額になった場合に『差額は僕が出す』とまでは言ってくれませんでしたけど」。
れいこさんはまた、コツコツとメンテナンス費用を貯金中。
「自分で言っていてハッと気がついたのですが、彼がEDの薬を飲みたいって言った時にやめておけといったのは自己中心的だったかも。副作用があるんじゃないかと心配でしたけれど、それはドクターが判断することなので。彼だって、自分の体を若々しく保って気分良く過ごしたいだけなのかもしれない、って思い直しました」。
れいこさんは、今後は夫の希望であれば「EDの薬」を飲むことについても肯定的に考えたい、と話しています。
※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。
取材・文/星子 編集/根橋明日美
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