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美肌の湯 その23 青森県・古牧温泉 青森屋 編集/井上 智明

このブログではあんまり触れてはいませんが、僕は青森県が大好きです。

魅力的な温泉がたくさんあって、四季ごとの自然が美しく、食文化が豊かで、お宿にもそれが反映された何度でもリピートしたくなる個人的名宿が多いから、というのが主だった理由なのですが、忘れちゃいけないのが、おみやげがとにかく充実しているところ! 地酒をはじめ、りんごや帆立、うに、鯖、長芋、ニンニク…あげたらきりがない農産物や海産品、それを加工した食品、スイーツにせんべい、はたまた「ひば」のいい香りがするグッズ……旅に出たら道の駅や、産直市場、駅のお土産コーナーには長居せずには気が済まないほどのおみやげ好き僕のハートを揺さぶりまくる素敵な逸品の数々が待ち受けています。それは車で行ったらトランクに入りきれないほど買い込み、新幹線で行ったら、途中で宅配便を送ってしまうほどなのです。

…話が脇にそれてしまいましたが、今年3回目(!)の青森への旅は今までのどれとも違う目的を持って向かいました。それは「祭り」。弘前や青森のねぶた祭りのシーズンはもちろん夏ですが、季節関係なくそのお祭りが体感できる「青森屋」という温泉宿が三沢にあるらしいと聞いていたからです。別に普段からそこまでお祭り好き!というわけではないのですが、食事をしながらそのお祭りをまとめて見られるらしいということで、「なんだかワイワイと楽しそう」ととても気になっていたのです。それはもう旅の日程のなかでも“秋の奥入瀬渓流散策”以上にメインディッシュに考えていたくらい。なんか理由はよくわかりませんが「どうも行かなきゃいけない」気がしていたんです。

ということでやってきました、「青森屋」。エントランスからして、「粋な和のたたずまい」が印象的。そびえ立つでかい大衆旅館をイメージしていたのですが、ちょっと違います。案内されたお部屋も和モダンなしつらえです。はあ到着、ふううなんて、言ってるうちに今日は忙しいんだった、さっそくお風呂お風呂っと。今回残念がらお風呂の写真はありません。だって、「撮影禁止」ってド~ンと貼り紙されてますからね。

ということでパンフレットの写真より。

でも、たとえそれが書かれていなかったとしても今回は撮影できませんでした。なぜなら、大きな池の中に浮かんだ露天風呂にもヒバの香りで満たされた内風呂にも、とにかく出たり入ったりずっと絶え間なくお客さんが出入りしているのです。もちろん芋洗い状態に混んでいるわけではなく、ほどよい距離感は保てるくらいなんですけど。大混雑ではなく、大繁盛です。もちろん大きなお宿ではありますが、お風呂からして活気があります。

入口はこんな。

で、お風呂あがりに今度は、宿の別棟?ともいえる南部曲屋へ。昔の厩戸住居が一体となった古民家なのですが、ここで手作り工芸体験ができるのです。いくつかあるメニューの中から、「一番役に立ちそう」という理由で南部塗の箸作りに挑戦です。

朴訥なお兄さんに教わります。

誰にもできる簡単な模様付けのプロセス(ほかはプロの職人さんがやってくれる)ながらも個人の腕とセンスで出来上がりは全く違ってくるという恐ろしい世界に最初はおずおずとやっていたのですが、そのうちつい没頭してしまって、気づけば夕食の時間…

津軽塗に没頭するの図。

大げさすぎずに小ぎれいにまとめたつもりですが、仕上がりは2か月後に自宅に届くそうなので、楽しみに待つことに。

で、お楽しみの晩ごはん。左右に分かれた升席みたいのが並んでいるのですが、これが平日にもかかわらず満席!盛り上がっています。センターのステージ上でこのあと繰り広げられる「青森の祭り」を待ちかねています。…とその前に食事の話。こういうショーやってるところの食事ってだいたいお粗末なことが多いのですが、青森屋は違います。きちんと一品一品おねえさんが段になった升席の間を縫うように運んできてくれてきちんとメニューの説明をしてくれます。この移動、女の子には結構大変だって思うんですが、みんな笑顔です。で、すごくおいしい!青森三大牛の焼き物(毎回肉をアップしているので今回は写真は割愛)、名物せんべい汁、4段(!)になった巨大せいろ蒸しとどれもアツアツがうれしいです。

すんごいデカいせいろ蒸し。

地酒も宿オリジナルがちゃんとあってラベルも「祭り」っぽい。新鮮なお刺身にもあいます❤ と、祭りの前にすっかり盛り上がってしまって、いい気分です。

これが、会場のセンターで行われています。活気ありますね!

で、食事も終盤に差し掛かって、引っ張るだけ引っ張られたところで、お祭りショーのスタートです。津軽三味線のイキのいいバチの音から始まり、五所川原、弘前、八戸、青森のそれぞれの夏祭りのおいしいところを、なぜか全員若い女の子の一団が、元気に華やかに演じています…ってあれ?あの子ってさっきここで料理運んでいた子では?

あ、さっきまでお運びしてた子だ。

そうなんです、フロア係をやりつつ、ひと段落したらステージへって算段だったんですね。威勢のいい太鼓の響き、思わず引き込まれる笛の音、伸びのある民謡の節回し、「ラッセーラ」の掛け声…全てが混じりあって、自分はじっとしていても耳に目に体にどんどん入り込んできて駆け巡ります。何、このグルーブ感?みたいなもの。なんかすごく楽しくなってきた。

1人何役もこなす子も。結構練習必要なんだろうなあ。

で、最後の青森ねぶた祭りのところで、このお祭りにはお囃子に合わせて踊る、「跳人」という役割の人がいるというお話が出ました。で、進行のおねえさんが、「このお祭りの主役ともいえる跳人がいません。お客様でどなたかやっていただける方いませんか?」と。え?あ?オレ、やるの?なんだかすすめられるままに、ステージへ。

あのう、僕は人見知りで、面倒臭がりで、後ろでひっそりしているタイプなんだけど…あれ?気づいたら花笠かぶってます。なんだかんだ言いながら、楽しそう。

上手な人がやるとこんなに華やか。知らぬ間にリズムに合わせておぼつかないながらも跳ねています。

センターで丹前着てておぼつかないのが、僕です。
あっという間に時が過ぎ、「え?もう終わり?」…なんかまだ足りない。「本当のお祭りに出れば?」と言われて、よくよく聞いてみると、この跳人というのは、衣装さえあれば誰でも、地元の人じゃなくっても参加できるそう。来年の夏、日程的には週末ながらもちょうど締切真っ最中の難しい時期。う~っむ、でもちょっと行ってみたいなあ。え、途中で踊るのやめちゃダメなの?夜どおし踊るの?? でも、徹夜明けに青森まちなか温泉(という名前の温泉があるのです)に入って汗を流すのも気持ちよさそう…で、魚だしのくどうラーメンでビール!というのもいいねえ。なんて、早くも一年近くも先のことを想像してしまいました。と、いうように青森って一度行くと「次はここ行こう、あの温泉に入ろう、あれ食べたい」って次のことを考えてしまう不思議な魅力があるんです。

ということで、すっかり気分良くなって、お風呂に入ってぐっすり眠りました。(愛用している快眠アプリの熟睡率が90%超!)

…翌朝。早起きしてお風呂に入って、朝食へ。昨日、お箸づくりに燃えた南部曲屋で、地元のおばあちゃんがサーブしてくれる囲炉裏端の朝ごはんです。

おばあちゃんと料理長さん。

何よりだし巻き卵がサイコー!津軽弁のおばあちゃんのトークがいまいちよくわからないながらも和めるひとときを過ごしたあとは、さらに「りんご馬車」に乗ります。かぼちゃの馬車みたいに、巨大なりんごがくり抜かれて馬車になっている…なんてことはもちろんなくって、普通の馬車の客席のテーブルにりんごがたんまり載っているのです。これに揺られながら、本当に広い青森屋の敷地内を巡ります。馬を引いているのは…あれ?昨日トラクターで蒸かし野菜売ってたお兄さんだ! 

お兄さん+りんご+りんご割り器。

どうも本業はこちらのようです。衝撃のりんご割り器(青森では当たり前の、瞬間的にりんごが6つ割りになる便利グッス)を使ってりんごをいただきながら、お兄さんの話に耳を傾けました。

ということでチェックアウト直前までぎっしり遊び倒した今回の旅、本当は屋台で飲んだくれたかったし、マッサージもやりたかったし、すぐ近くの共同湯も行きたかったし…と1泊ではとても足りないエンタテインメント・ワンダーランド。

でも、何より印象に残ったのは、青森屋でお仕事している地元の人たちの楽しそうなこと。お祭り実演の女の子たち、曲屋のおばあちゃん、津軽塗を教えてくれたメガネくん、馬車を引いてたお兄さん、料理長さん…いつでも笑顔、っていうわかりやすさより、もっと真摯に向き合う感じ。なんだかとても生き生きして美しく見えます。

過疎が進んだりと、地方の危機が叫ばれて久しいのですが、このお宿では「日本全国の地方がどこもこんなだったらいいのに」という淡い夢すら描けてしまうほど、みんな元気。どんな豪華な施設より、おいしい料理より、実はお湯力よりも、そこで出迎えてくれる「人」がお宿の魅力を最終的に決めてしまうのだ、と駅までのバスに乗ってお宿のみなさんの旗を振ってのお見送りを見ながら、強く実感する旅でした。

馬と僕。

お見送りまで至れり尽くせり!

●古牧温泉 青森屋
青森県三沢市古間木山56
青い森鉄道三沢駅から徒歩10分(送迎バス出てます)
☎0176-51-2121
noresoreaomoriya.jp/

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