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美肌の湯 その16 田沢湖高原温泉郷 ロッジ・アイリス 編集/井上 智明

さて、ずいぶん久しぶりになってしまいましたが(恐ろしいことに今年一回目なのです)、年明けから「MEN’S 美ST」と本誌との作成に追われすぎて、毎日深夜帰宅…さすがに更新のスキすらありませんでした!

前回から、こっそり続いている秋の東北温泉巡り・第二回です。

一回目は念願の山形県・「湯どの庵」で舞い上がってみたのですが、今回もはじめて伺うお宿です。

乳頭温泉郷…温泉ファンなら誰でも憧れる秘湯揃いの聖地。いのうえも何度となく訪れ、いくつかの宿に泊ったり、泊らなくても立ち寄りだけしにいったりと、毎年のように行く東北温泉の旅でも定番の目的地なのですが…今回、秋の紅葉シーズン(つくづくいつの話だっつーの)で混雑しすぎていて、泊まりたかった「鶴の湯」が全く予約が取れない! 「はあぁ、困ったもんだ」と悩んでいたら、思い出しました!あるお宿の存在を。その名も「ロッジ・アイリス」。いのうえがよく宿選びの参考にしている、とある方のブログで絶賛されていたお宿なのです。(最近ほとんど更新されていないので寂しい)

「ロッジ~」とか「ペンション~」とかつくところには基本的には泊まりません。何せ、温泉がお目当てなのですから。山登りやヒゲにオーバーオールのおじさんはいらないのです。名前がちょっと気恥ずかしい、というのもあるし。が、「どうもこの人の温泉選びの感覚は自分に近い」と信頼するその人のブログでは「お湯よし、環境よし、食事よし」と書かれているではないですか!ここは意を決して、人生初「ロッジ」とシャレこみます。

16時少し前、同じ温泉郷の黒湯温泉に入ってから、お宿に到着。外観はログハウス的な「ザ・ロッジ」な感じ。…静かです。入り口にも誰もいない…あれ、ここだっけ?下駄箱みたいなところに靴を入れつつ「こんにちは~」、「…」あれ?受付みたいなところで、「すいませ~ん」「はいっ」。お兄さんが愛想よく現れます。ああよかった、ここであってた!

ロビーは天井も高く清潔で、いい感じ。案内されたお部屋も新館のちょっと広めの居心地のいい部屋。大きな窓からちらほら紅葉し始めた林の木々が見渡せ、吹き抜ける風がすっごい気持ちいい。もう、この段階でこのお宿「当たり!」の予感です。

窓辺のソファでぼんやりし続けそうになり、うっかりやばいやばい、明るいうちにお風呂行かないと!

ずっとぼんやりしていたい。

いそいそと廊下からこれまた「ザ・ロッジ」なお風呂の入り口を抜けて内湯へ。先客が1人いました。「あ、ひとりじめじゃないんだ」、駐車場に車がないから「一番乗り!」って思ってたんだけどなあ。で、まず内湯へ。

鶴の湯ほど真っ白ではありませんが、なんとなく白く濁ったお湯が静かにぼくを待ち構えています。かけ湯もそこそこにズブズブブ…と浸かります。はあ、極楽極楽。いかにも硫黄泉が濃厚~ってほどではないけれど、ほどよくマイルドで硫黄の香りもしっかりあるちょいぬるめのお湯が肌と仲良くなっていきます。

他に人がいなくなったのを見はからって、いそいそと露天風呂へ。部屋の窓から見た林の続き?から木々の木漏れ日が差し込んで、お湯もぬる目でゆるゆるとぼんやりしてしまいます。

露天風呂でぼんやり・・の図。

出たり入ったり写真撮ったり内湯に行ったりと温泉を満喫した後は、さっきいた部屋の窓際の椅子にてぼんやり…というか、うつらうつら。そよ風が気持ちいい~zzz

そうこうするうちに6時半になったので、いそいそと1階のお食事処へ。もう、食事が並び始めています。お造りに、お寿司に、塩辛風…そうなんです、ここは山の真ん中なのに海の幸が新鮮でおいしいらしい、とブログにも書かれてあったっけ。お刺身とかもそこらの冷凍ものとは明らかに違います。チェックインの時にいたお兄さんがさらにできたての天ぷらや蒸し物なんかを運んできます。そして、卓上には秋田牛の鉄板焼き!もう二人用のテーブルににいっぱいいっぱい並んでいます!どれもうまい!しあわせ!食べきれない!

さんまのお寿司なんで、新鮮でないと出せません!

ところが一個だけ気になることがあります。オレのほかにお客が…いない…さっきお風呂にいたけどな…時間が選べるシステムだから他の時間帯なのかな?ということで、食堂にテレビに向かい合ってオレ一人、あと宿のお兄さんがひとり。宿の人も他にいないの?

日本酒がすすみます。塩辛(だったと思う)ふうなもの。

ということで、量も質も空間も贅沢すぎる晩ごはんを満喫しすぎてひと眠り。

夜中にまたお風呂へ。深夜は露天は入浴できないって書いてあるのですが…あれ?鍵かかってない。ということで月明かりの露天風呂も堪能しました。あ、もちろん、お客さんにも誰とも会いません。(深夜はたいていどこの宿に行ってもまあ、一人で入浴を楽しめるのがいいところ)いい気分で、お風呂上がりの廊下をてくてく歩きながら、「あれ…?今日、オレこの宿に客ひとり?」。寂しいというよりもちょっとした解放感。廊下で思いっきり伸び~しちゃいました。

贅沢だなぁ、別に貸し切り料金払ってないのに。何十年も温泉の旅をしてきましたが、こんなのはじめて❤

翌朝、朝ごはんのテーブルに着いたときにその予感は確信に変わりました。朝ごはんは時間決まってるのに誰もいない。やっぱ、オレ一人じゃん! 昨日お風呂であった人は、日帰り入浴だったみたい…またもや、テレビと向かい合いつつ(温泉行くと朝ドラ観るようになりますねぇ)、適量の健康的な朝ごはんをいただきました。運んでくるお兄さんも、昨日と同じ。まさか宿の人もひとり?

でも、だんだん心配になってきました、このハイシーズンに、こんなにおいしくてお風呂よくて居心地もいいのに客が1人…とかで、やっていけるの?

で、チェックアウトするときに、「すいませんねぇ、ひとりのために」なんて言ってみたら、例のお兄さん「いいんですよ、1人でも来ていただけるだけで」って!ほんと、すまないねぇ。宿を出る時にちらっと振り返ったら、宿には他にもう少し年上のお兄さんとおばさんが何やら働いていました。さすがに一人ではなかったです。客一人に三人でおもてなししていたんだね…

ホントに贅沢なひと晩を過ごさせていただきました。

完璧なまでのひとりの時間を手に入れて、自分とゆっくり向き合ってみると今まで気づかなかった自分の感情や体調、肌の変化にも目が行き届き、自己プロデュース力に磨きがかけられるような気がします。「あ、なんだ。そんなことだったんだ」と急に仕事のヒントなんて思いついたり。自分の中できちんと自己整理ができるような気がします。

今度からは、どこかに泊まれなかったかわりに、ではなく「この宿お目当て」に訪れてみたいです。

そうそう、オチとして調子に乗りすぎて、窓辺で風にあたってウトウトしたせいで風邪ひいちゃいましたけど(涙)それくらい居心地よかったってことで。

次回は、東北温泉旅の最終回です。(次回予告を入れないと更新ペースが鈍るので)

●ロッジ・アイリス
秋田県仙北市田沢湖生保内駒ケ岳2-139
☎0187-58-1101
1泊2日¥9,000くらい~
www.lodge-iris.jp/index.htm

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