HEALTH
「いつもの味付けのはずなのに、なんだか味がぼんやりする」「好きだった食べ物がおいしく感じられない」などの味覚の変化に心当たりはありませんか? 味覚の変化は栄養不足や口腔ケア不足などによって起きることがあります。毎日の食事を楽しむために、味覚障害の原因とセルフケアを解説します。
味覚障害とは、味が感じにくくなったり感じ方が変化したりする状態のこと。味覚障害が起こると、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの味覚のいずれか、または複数がわかりにくくなることがあります。人によってそれぞれですが、以下のような症状が見られます。
・何を食べても味がしない
・特定の味だけ弱く感じる
・食べていないのに口の中に塩味や苦味を感じる
・甘いものが苦く感じる
味覚が変化すると食事の満足感を得にくくなり、食欲も低下することがあります。健康維持にも深く関わるため、違和感を放置せず適切にケアすることが大切です。
味覚障害は一つの原因だけで起こるとは限らず、生活習慣や体調、口腔環境などが複合的に関係します。代表的な要因を見ていきましょう。
口の中、特に舌の表面には、味を感じ取る味蕾(みらい)という小さな器官がたくさんあります。ところが、味蕾の機能は年齢とともに徐々に低下します。数も減少するため、自然と味の感じ方が変化してしまうのです。
また、加齢によって唾液の分泌機能が低下し、口腔内が乾燥しやすくなることも、味覚障害につながる要因です。さらに、入れ歯の使用などによる口腔内の環境の変化や慢性的な疾患に対する服薬も、味覚の感じ方に影響することがあります。
亜鉛は味蕾の新陳代謝に欠かせない栄養素。亜鉛が不足すると、味蕾の生まれ変わりがスムーズに行われなくなったり、味に関する信号が脳にうまく伝わらなくなる神経障害が起きたりしやすくなります。亜鉛は栄養バランスの偏った食事が続いていると不足しやすくなるため注意が必要です。
口の中のケアが十分にできていないことも味覚障害につながる要因の一つ。例えば、舌の表面に汚れ(舌苔)が多く付着すると、味物質が味蕾に届きにくくなります。また、唾液が減少して口腔内が乾燥すると、味蕾の機能が低下して味を感じる力が弱まります。
糖尿病や腎疾患などの全身疾患の影響で味覚が変化することがあります。例えば、糖尿病の場合は病気の影響で亜鉛不足が起きやすくなるため、結果的に味覚障害が起きることがあります。全身疾患の治療薬による副作用によって味覚が変化することもあるため、気になる場合は医師に相談しましょう。
また、新型コロナウイルス感染症も味覚障害を引き起こすことがある病気の一つです。多くの場合は回復すれば味覚障害も治りますが、まれに味覚障害の症状が長引くことがあります。
病気の影響以外による味覚障害の場合、原因に応じたセルフケアを取り入れることで改善できる可能性があります。日常生活で無理なく続けられるセルフケアを紹介します。
亜鉛を含む食材を積極的にとり、亜鉛不足を改善しましょう。亜鉛は牡蠣や牛肉、豚レバー、大豆製品、ナッツ類に豊富に含まれています。これらの食材を主菜に取り入れたり、大豆製品を使用したおかずをプラスしたりして日々の食事に取り入れましょう。
また、食事だけで補いにくい場合は、亜鉛製剤やサプリメントを利用する方法も。ただし、亜鉛の過剰摂取は銅欠乏症の原因になるため、服用する際は必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
口腔ケアを見直し、口の中を清潔に保つことも大切です。歯みがきをする際は歯と歯の間、歯と歯茎の間を丁寧に磨き、歯垢をしっかりと取り除きましょう。
舌苔が気になる場合は、舌専用ブラシで舌を軽くなでるように磨くのも効果的。ただし、舌磨きをやり過ぎると舌の粘膜を傷付けてかえって味覚障害が悪化することもあるため注意が必要です。
また、体内の水分が不足していると唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾燥しやすくなります。こまめな水分補給で口腔内の乾燥を防ぎましょう。
耳下腺・顎下腺・舌下腺といった唾液腺をマッサージし、唾液の分泌を促すのも効果的です。
<耳下腺のマッサージ>
(1) 親指以外の4本の指を耳たぶと頬の間に当てる
(2) 軽く押しながら後ろから前に向かってゆっくり回す
<顎下腺のマッサージ>
(1) 親指を耳の下あたりの下顎の骨の内側に当てる
(2) 耳の下から顎下まで順番に押す
<舌下腺のマッサージ>
(1) 両手の親指を顎下に揃えて当てる
(2) 親指でゆっくり押し込む
マッサージをする際は優しく押すのがポイント。食事の前などに取り入れると口の中が潤い、味を感じやすくなります。
味覚に関係するツボを押すのもおすすめ。味覚が気になる場合は「迎香(げいこう)」を押してみましょう。
迎香は鼻のふくらみ、鼻翼の左右横に位置するツボ。神経が近くを通っており、味覚に関わる神経の働きを改善する効果が期待できます。
体質や症状に合わせて、味覚障害の改善に役立つ漢方薬を活用するのも一つの手。漢方薬は自然由来の生薬を組み合わせて作られており、味覚障害につながる複数の要因に対してアプローチし、根本からの改善を目指すものです。
味覚障害には「水分のバランスを整えて口内を潤す」「水分保持力の低下を改善して唾液分泌を増やす」「体にこもった熱を取り、炎症を鎮める」「胃腸の働きを整える」などの働きがある漢方薬を選びましょう。
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
胃腸の動きを良くして栄養の吸収を助け、気力を充実させ、疲労倦怠、食欲不振などを改善します。元気がなく胃腸の働きが衰えている人におすすめです。
・麦門冬湯(ばくもんどうとう)
胃腸の働きを良くして喉や呼吸器の粘膜に潤いを与え、ドライマウスや気管支炎、しわがれ声などを改善します。口や喉の乾燥が気になる人におすすめです。
体質や症状によって合う漢方薬は異なります。合わない漢方薬を自己判断で服用すると思わぬ副作用が出ることもあるため、自分に合う漢方薬を知りたいなら漢方薬に詳しい専門家に相談しましょう。
味覚が変化したと感じたら、砂糖や塩、酢など基本的な調味料を少量ずつ試し、感じ方を確認しましょう。味覚障害が起こると、砂糖が苦く感じたり、塩味を感じにくくなったりすることがあります。
1種類ずつ試し、味そのものの感じ方や、舌の左右で味の感じ方が違うなどの違和感がないか確認しましょう。より正確に検査したい場合は、医療機関での検査がおすすめです。
新型コロナウイルス感染症が原因の場合、症状は一時的なもので、多くの場合自然に回復します。亜鉛不足などが原因の場合も、栄養改善などのセルフケアを続けることで回復が期待できます。
病気や薬が原因の場合は、原因となる病気の治療や服用する薬の変更が必要です。病気や薬の影響による味覚障害が気になる場合は、主治医と相談しましょう。
教えてくれたのは…医師 木村 眞樹子さん
編集/根橋明日美 写真・イラスト/PIXTAほか
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2026年11月16日(月)23:59まで
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