HEALTH
寝ようとした瞬間に体が「ビクッ」と跳ねて、眠りかけていた意識が戻ってしまうことはありませんか? その動きは、ジャーキングと呼ばれる入眠時に起こりやすい反応の一つかもしれません。多くは一時的なものですが、疲労やストレスなどが重なると起こりやすくなります。ジャーキングが起こる理由や改善のためのセルフケアを紹介します。
ジャーキングとは、寝入りばなに体がビクッとする現象のこと。医学的には、筋肉が自分の意思とは関係なく収縮する「ミオクローヌス」の一種です。
ジャーキングは、寝入りばなや浅い眠りのときに起こりやすいのが特徴。単発でたまに起こる程度なら過度に心配しすぎなくてもよいものですが、頻度が増えると眠りを妨げ、睡眠の質の低下にもつながりやすくなります。
ジャーキングは一つの原因だけで起こるというより、疲労やストレスなどが重なり、体が休息モードに入りにくいときに起きやすくなります。ジャーキングが起こる主な原因を紹介します。
仕事が忙しい日が続いたときや睡眠不足が重なったときは、体は疲れているのに神経は高ぶったまま、という状態になりがち。また、慢性的に睡眠不足の状態では睡眠中に十分な疲労回復ができず、自律神経も乱れやすくなります。
その結果、布団に入っても体がうまく休息状態にならず、眠りに落ちるタイミングでジャーキングが起こりやすくなります。
ストレスもジャーキングにつながる要因の一つ。ストレスがたまると自律神経が乱れて体は緊張しやすくなります。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つからなり、交感神経は体を緊張・興奮状態にします。ストレスがたまっていると交感神経が優位になり、体が緊張しやすくなるのです。
また、布団に入ってから仕事のことや人間関係の悩みなどを考え続けてしまうと、脳は休むどころか活動モードのままに。これにより、自律神経がスムーズに切り替わらず、体が無意識に力みやすくなり、ジャーキングにつながるのです。
夕方以降のカフェインや寝酒、寝る直前のスマホの使用などによって眠りの質が低下していることも、ジャーキングにつながる要因です。
カフェインを摂取することで、覚醒作用により交感神経が刺激されやすくなります。また、アルコールは一時的に寝付きをよくするように感じても、実際には眠りを浅くしやすいもの。
さらに、夜間に明るい光を浴びると睡眠に関わるメラトニン分泌に影響します。眠る直前まで画面を見続けると、体は休みたいのに脳が刺激を受け続けてしまい、眠りが浅くなってジャーキングが起こりやすくなります。
ジャーキングを改善するには、睡眠に関する習慣を整えることが大切。今日から始められるセルフケアを紹介します。
睡眠環境を整え、寝室は体が自然に「休んでいい」と感じられる空間にしましょう。照明は間接照明を使って明るすぎないようにし、音や室温、湿度にも気を配ります。
冷房を使う場合は、冷風が直接体に当たらないよう風向きを調整したり、薄手の寝具でお腹や脚を冷やしすぎないようにしたりするのがポイントです。
就寝前にデジタルデトックスをするのも効果的。寝る前にスマホやタブレットなどを使うと、ディスプレイからの光の刺激だけでなく、情報による刺激も受けやすくなります。SNSやニュースなどをなんとなく見ているだけでも、脳が働いて休息モードに入りにくくなるのです。
就寝前の30分だけでもスマホを触らない時間を作り、静かな音楽を聴く、アロマを使うなど、刺激の少ない過ごし方に置き換えてみましょう。小さなデジタルデトックスを取り入れることで、寝入りばなの緊張を和らげるサポートになります。
体内時計を乱さないようにするために、就寝・起床の時間をできるだけ一定にするなど、生活リズムを整えることも大切です。休日に寝だめや夜更かし、長時間の昼寝をすると体内時計の乱れや睡眠の質の低下を招きます。これらはできるだけ控え、平日と休日で生活リズムが変わらないようにしましょう。
また、朝に光を浴びるとセロトニンの分泌を促すこともできます。セロトニンは神経伝達物質の一つで、気分の安定に関わるほか、メラトニンの材料にもなります。朝は窓際で過ごす、散歩をするなど、積極的に光を浴びましょう。
夕方以降の過ごし方を見直すことも、ジャーキング対策の一つ。コーヒーや緑茶、チョコレートなどカフェインを含むものは寝付きに影響することがあるため、夕方以降はできるだけ控えましょう。
また、晩酌も眠りを浅くすることがあるため飲みすぎには注意。就寝前は心身をリラックスさせることを優先しましょう。
ジャーキングを繰り返しやすく悩んでいるなら、漢方薬を活用するのもおすすめ。漢方薬は自然由来の生薬を複数組み合わせて作られており、心と体のバランスを整えながら不調の改善を目指します。ジャーキングのような繰り返しやすい不調にも効果が期待できます。
ジャーキングには「自律神経を整える」「体にこもった熱を冷ます」「精神を安定させる」などの働きがある漢方薬を選びましょう。
・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
気分がふさぎ、のどに異物感がある人に。エネルギーの流れをよくして精神の緊張をゆるめ、自律神経を整える効果が期待できる漢方薬です。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅこつぼれいとう)
不眠、イライラ、動悸などの症状がある人に。エネルギーの流れを整えて体の熱を冷ますことでストレスによる不調を改善します。
漢方薬は症状や体質によって合うものが異なるため、自分に合う漢方薬を知りたいなら専門家に相談するのがおすすめです。
また、ジャーキングはさまざまな要因が積み重なって起こるため、どれか一つのセルフケアだけではなかなか改善しない可能性があります。漢方薬だけに頼るのではなく、ほかのセルフケアと組み合わせましょう。
ジャーキングは健康な人でも起こることがある生理的な反応です。たまに起こる程度であれば必ずしも病院で診てもらう必要はありません。ただし、頻度が高い、眠れない日が続くなど、睡眠不足を招いて日中の活動にも支障が出ている場合は脳神経内科や精神科などに相談しましょう。
ジャーキングに似た症状が起こる病気には、てんかん発作や周期性四肢運動障害などが挙げられます。周期性四肢運動障害では、睡眠中に下肢の筋肉が周期的に動き、寝付きが悪くなったり途中で目が覚めたりすることがあります。睡眠中に何度も足がビクッとなる場合は病気の可能性があるため早めに医療機関で相談しましょう。
就寝前は心身への刺激を減らして、リラックスさせる習慣を意識しましょう。ぬるめのお湯での入浴や軽いストレッチ、読書、深呼吸など、自分が心地よいと感じる習慣を行うと、体が休息モードに入りやすくなります。
教えてくれたのは…医師 木村 眞樹子さん
編集/根橋明日美 写真・イラスト/PIXTAほか
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