HEALTH
「仕事に集中していると、胸が急にドキドキする」「座っているだけなのに脈が気になる」と不安になることはありませんか? 動悸は自律神経の乱れや姿勢の悪化などで感じることがありますが、不整脈や貧血などの病気が隠れている場合もあります。長時間座っていると動悸が起こる原因や今日からできるセルフケアを紹介します。
座っているときの動悸は「座っていること」だけが直接の原因とは限りません。動悸が起こる主な原因を紹介します。
長時間同じ姿勢をとり続けることで自律神経が乱れ、動悸が起こることがあります。自律神経は体を緊張モードにする交感神経と休息モードにする副交感神経の2つからなり、両者がバランスをとりながら呼吸や体温調節などをコントロールしています。血流調節も自律神経の働きによってコントロールされている機能のひとつです。
長時間座っていると体が緊張状態になり、交感神経が優位になりやすくなります。その結果、血管が収縮して血圧が上がり、動悸が起きやすくなるのです。
長時間体を動かさず筋肉が緊張し、血行不良が起きることで動悸につながることもあります。
ふくらはぎの筋肉には下半身の血液を心臓に送り返すポンプ作用がありますが、長時間座って足を動かさずにいると、ふくらはぎのポンプ作用がうまく機能しにくくなります。その結果、下半身に血液がたまりやすくなるのです。
心臓へ戻る血液の量が減ると、1回の拍動で送り出せる血液量が低下し、それを補うために心拍数が増えることがあります。その結果、胸のドキドキを動悸として感じることがあります。
不良姿勢を続けていることで、動悸につながることもあります。猫背や前かがみなどのパソコンをのぞき込む姿勢が続くと、胸部の筋肉や横隔膜が動きにくくなります。その結果、息苦しさや動悸につながりやすくなるのです。
また、首の筋肉と自律神経は深く関係しており、不良姿勢によって首がこると自律神経の乱れが起きやすくなります。こうした首のコリが動悸につながっている可能性があります。
動悸には自律神経の乱れなどだけではなく、不整脈や貧血、甲状腺の病気などが関係していることがあります。脈の乱れやめまいなどを伴う場合は病気の可能性があるため注意が必要です。
また、エコノミークラス症候群の症状として、動悸が起こることも。エコノミークラス症候群は、長時間足を動かさずに座り続けることで脚の静脈に血栓ができ、血栓が肺の血管に詰まる病気です。血栓が肺の血管に詰まると、突然の息苦しさや胸の痛み、動悸などが現れます。
動悸以外に、片脚だけの腫れや痛み、冷汗、強いめまいなどを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
病気の影響で動悸が起きているのではない場合は、座る時間や姿勢などを見直してみましょう。仕事の合間や帰宅後に取り入れやすい、今日からできるセルフケアを紹介します。
座りっぱなしを防ぐには、30分に1回を目安に短い休憩を挟みましょう。トイレへ行く、飲み物を取りに立つ、コピーを取りに行くなど、数分の移動でもかまいません。
席を離れにくいときは、足首を回す、かかとを上げ下げするなど、座ったままできる動きを取り入れましょう。
骨盤を立てて座ることを意識し、正しい姿勢を心がけましょう。椅子には深く腰かけ、左右の坐骨で座面を押すイメージで骨盤を起こします。足裏全体が床につくように椅子の高さを調整し、足は組まず、膝はできるだけ直角に保ちましょう。
パソコンの画面が低いと頭が前に出やすくなるため、目線に合わせて高さを調節するのもポイント。自分が無理なく姿勢を保てる環境を整えましょう。
ぬるめのお湯に浸かる習慣を取り入れることも大切です。37~40℃程度のぬるめのお湯に浸かることで、体が芯から温まり、血行促進や自律神経を整える効果が期待できます。
ただし、42℃を超える熱いお湯は交感神経を刺激しやすく、逆効果になるためNG。ぬるめのお湯に10〜15分程度浸かり、心身の緊張をゆるめましょう。
自律神経を整えるために、リラックスタイムを設けるのも効果的。アロマで心地よい香りを楽しむ、静かな音楽を聴く、照明を少し落とした部屋で過ごすなど、心身を休息モードへ切り替える習慣をつくりましょう。
また、深呼吸も自律神経を整えるのに役立ちます。背筋を楽に伸ばして鼻からゆっくり吸い、吸うときより長めに口から吐くことで、副交感神経を刺激できます。自分なりのリラックス方法を選んで、心身を休めましょう。
繰り返す動悸が気になるなら、漢方薬を活用するのもひとつの手です。漢方薬は自然由来の生薬を複数組み合わせてつくられており、体質から改善を目指します。動悸の根本原因にアプローチするため、繰り返す動悸を何とかしたいという場合にも役立ちます。
動悸には「自律神経を整える」「体の熱を冷ます」「水分代謝を整える」などの働きがある漢方薬を選びましょう。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
精神不安があり、動悸やイライラ、不眠を伴う方に。気の巡りをよくして体にこもった熱を冷まし、精神の安定に働きかける漢方薬です。
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
体内の水分代謝やエネルギーの流れを整えて、動悸やめまい、耳鳴り、頭痛を改善する漢方薬です。のぼせや神経症にも用いられます。
漢方薬はのむだけでいいため、セルフケアとして取り入れやすいのも特徴。ただし、体質や症状によって合う漢方薬は異なります。自分に合う漢方薬を知りたいなら、漢方薬に詳しい専門家に相談しましょう。
コーヒー、濃いお茶、エナジードリンクなどを飲む習慣があると、カフェインによって交感神経が刺激されて動悸につながることがあります。また、喫煙習慣がある場合、ニコチンによって血管が収縮しやすくなり、動悸を引き起こすことがあります。
動悸が数分以上続く、脈が飛ぶ・乱れる感覚がある場合は、病気が隠れている可能性があるため循環器内科または内科を受診しましょう。胸の痛みや呼吸困難、めまいなどを伴う場合は緊急性があります。いつもと違うと感じたら速やかに病院を受診しましょう。
動悸が起きたときは、できるだけ楽な姿勢をとりましょう。ベルトや下着などの締めつけをゆるめて、背もたれを使った楽な姿勢をとります。鼻からゆっくり吸って口から長めに吐く呼吸を数回行い、副交感神経を刺激するのも効果的です。
教えてくれたのは…医師 木村 眞樹子さん
編集/根橋明日美 写真・イラスト/PIXTAほか
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