HEALTH
すっかり気温が下がり、昼と夜の寒暖差も激しい今日この頃。「急な冷え込みにお腹がゴロゴロ…。急いでトイレに駆け込んだ」なんて経験をもつ方もいるのではないでしょうか。また、症状が長引いて一日に何度もトイレに行かなければならず困った、というケースも。そこで今回は、胃腸の冷えにより下痢が起きるメカニズムと対処法を解説します。下痢は症状によっては重大な病気が隠れている場合もあるため、併せて解説します。ぜひ参考にしてください。
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胃腸が冷えて便が緩くなるのは、血流の悪さが関係しています。血流が悪くなると胃腸機能が低下し、消化活動や吸収活動が困難になります。すると、腸で食べ物に含まれる水分が吸収しきれなくなって下痢を起こすのです。
特に、女性は筋肉量が少なく熱の生成量が男性に比べ少ないことから、体が冷えやすい傾向にあります。常日頃から体を温めることを意識しましょう。
一口に下痢といっても、軟便から水状のものまでさまざまあります。通常の便に含まれる水分量は70%〜80%です。それに対して、軟便には80%〜90%、下痢便には90%以上の水分が含まれています。以下は、便の状態とその状態から考えられる主な原因の一覧です。
<症状から考えられる主な原因>
便の色に変化はないが、液状またはペースト状の場合
▶︎冷え、ストレス、食あたり、水あたり、消化不良
便が黒っぽい場合
▶︎食道や十二指腸の出血、大腸の炎症、胃炎、胃や十二指腸の潰瘍、胃がん
便が白く液状の場合
▶︎コレラ、ロタウイルス
便に血が混じっている場合
▶︎切れ痔、赤痢、食中毒
便に粘液が混じっている場合
▶︎食あたり、水あたり、消化不良、冷え、ストレス
冷えによる下痢は「色に変化はない液状またはペースト状の便」「粘液が混じっている便」の2つです。血が混じるなどの別の症状もみられる場合は、病気が潜んでいる可能性が高いため、医療機関を受診してください。
まず下痢を起こしているときは、水分補給が欠かせません。なぜなら、下痢によって体に必要なナトリウムやカリウムといった電解質と水分まで体外に出ていってしまうと、脱水症になる可能性があるからです。脱水症を防ぐためにも、スポーツドリンクや経口補水液をこまめに摂取しましょう。
冷えによる下痢には、お腹を温めることが効果的です。外側からお腹を温める方法には貼るカイロや腹巻き、内側からお腹を温める場合には温かい飲み物や食べ物を摂取する方法があります。内臓が集まる胴体部分、特にお腹を局所的に温めるようにしましょう。
胃腸機能が低下しているため、消化のいいものを食べましょう。
・消化のいい飲食物:おかゆ、じっくり煮込んだうどん、りんごのすりおろし、味噌汁、野菜スープなど
・消化の悪い飲食物:脂肪が多い肉類・魚類、藻類、生野菜、そば、ラーメン、玄米、赤飯、パン、ケーキ、コーヒー、アルコール類、炭酸飲料など
おかゆなどの柔らかいものや胃腸の調子を整えるりんごは、胃腸を休めさせるのに効果的です。加えて、スープ類やおかゆなどの温かい料理は胃腸を温めるため、冷えの改善に適しています。
調理をする際のポイントですが、胃が疲れているときに具材を大きめにすると胃に負担をかける可能性があるため、具材は細かく刻みましょう。しっかりと煮たり茹でたりして、消化しやすくすることも大切です。また、とうがらしやクミン、カルダモンなどの香辛料は体を温めますが、刺激物なので避けましょう。しょうがはOKです。
下痢止め薬には、「腸のぜん動運動を抑える薬」「腸への刺激を抑える薬」「便の中の水分を吸い取って便を固める薬」「ビフィズス菌等の整腸薬」など、さまざまな種類があります。下痢の原因によって適している薬が異なるほか、作用が強く副作用に気をつけなければならない薬もあります。そのため、医師や薬剤師、登録販売員に相談してから使用するほうが安心です。もし、排尿困難や口の渇きといった症状が見られた場合、副作用の可能性があります。少しでも異変を感じたら下痢止め薬の使用を中止し、医師に相談してください。
冷えからくる下痢には漢方薬もおすすめです。下痢の症状には、体を温める生薬や、水分の排泄がうまくいかず下痢を起こす「水滞」を改善する生薬を含んだ漢方薬が用いられます。さらに、漢方薬は症状改善だけでなく、体質改善により冷えにくい体質に導くメリットも。また、漢方薬は下痢の症状の改善のため医療機関でも処方されることがあり、薬の観点から効果も認められています。冷えによる下痢におすすめの漢方薬は、以下の通りです。
・人参湯(にんじんとう)
体を温める生薬、消化吸収を良くする生薬、下痢止め作用のある生薬が含まれます。体力が少なく手足が冷え、胃腸が弱い方に適しています。
・真武湯(しんぶとう)
体を温める生薬、水分代謝を整える生薬が含まれています。体力が少なくて冷えが強く、尿が出にくい方や下痢をしやすい方に適しています。
漢方薬は体質を選ぶ薬です。そのため、体質に合わないものを使用した場合、効果が得られなかったり副作用が生じたりすることもあります。下痢の症状や下痢しやすい体質を改善するためにも、体質を見極めることはとても大切です。自分にとってどの漢方薬が合うのかしっかりと見極めるためにも、専門家に相談したうえで使用することをおすすめします。
教えてくれたのは…「あんしん漢方」薬剤師 碇純子さん
編集/根橋明日美 写真/PIXTA
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