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知念里奈さん(44歳)「これがミュージカルに?」ベストセラー原作への挑戦秘話

今や日本のミュージカル界に欠かせない存在となった歌姫・知念里奈さん。今年1月に初演されたミュージカル『ケイン&アベル』は、2年振りのミュージカル出演となりました。「2年振りの舞台で、やっぱり私にはミュージカルなんだなぁ、って」と、改めてミュージカルに対する愛情を再認識されたそうです。今回の美ST ONLINEでは、知念さんの今年の出演第2作目であり、芥川賞作家・平野啓一郎さんの傑作小説を原作とした世界初初演のミュージカル『ある男』の観どころ&聴きどころについて、たっぷりとお話をうかがいしました!

お話をうかがったのは…俳優・歌手 知念里奈さん(44歳)

《Profile》

1981年2月9日生まれ。沖縄県出身。1996年10月、シングル「DO-DO FOR ME」で歌手デビュー。翌年、「precious・delicious」で第39回日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞。その後「Wing」、「Be yourself」などヒット曲を連発し、ヒットチャートを席巻。2003年にミュージカル『ジキル & ハイド』でミュージカル俳優としても活動開始。『ミス・サイゴン』、『レ・ミゼラブル』等代表作多数。今年8月から平野啓一郎氏の傑作小説『ある男』のミュージカル版が世界初初演となり、劇中で城戸香織役を演じる。
ミュージカル『ある男』公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/aman2025/
知念里奈さんInstagram:@rinachan29

最初は「この作品をミュージカルに!?」と驚きが。稽古では“作っては壊し”を繰り返す日々

元々平野啓一郎さんの原作小説は読ませていただいていて、映画版も映画館へ観に行っていました。なので最初にオファーをいただいた時は「この作品をミュージカルに!?」と驚いたんです。きっと原作をお読みになったり映画をご覧になられた方なら、きっと私と同じ感覚になられたのではないでしょうか。

本番まで1カ月を切り(取材は7月半ば実施)、俳優達もスタッフさん達の中にも着々と焦りが感じられる中、今はとにかく演出家さんのもと、稽古で作っては壊しを繰り返している状況です。原作があるとはいえ、長い作品を2時間ほどにまとめなくてはならないし、さらに音楽や歌まで入りますからね。音楽にはジェイソン・ハウランドさんが参加なさっているのですが、彼はグラミー賞やエミー賞を受賞なさるほどの才能の持ち主。彼の生み出す音楽のゾクゾクする感じはすでに稽古中でも感じているので、本番を迎える頃には素晴らしいミュージカルになっていると確信しています!

自分には「ない部分」「違う部分」「知らない部分」を理解したい欲求が役作りの土台に

私は今回のミュージカルで浦井健治さん演じる城戸章良という弁護士の妻であり、幼い子供を持つ母でもある香織を演じています。『ある男』は原作も読みましたし映画も拝見しましたが、ある種、香織は作品にピリッとしたスパイスを与える役だと思うんです。優しい夫や可愛い子供がいて、満たされているようでどこか心に隙間風が吹いているような。
いつもは役作りをする時、自分に似ていたり共通している部分から入っていきます。ですが今回演じる香織はとても複雑。人には色んな顔があることを思い知らされます。私にも夫がいて子供がいますから、その共通点をとっかかりにしながらも、私とは違う部分を模索して私なりに理解して膨らませていくことが、香織を演じるうえで非常に重要だと思っています。原作ありきではあるものの、今回のミュージカルでは原作とは違う部分もあって。平野啓一郎さんに承諾を得ながら進めているのですが、ミュージカルオリジナルの部分は俳優が肉付けをしていくしかなくて、やりがいがあると言うか、非常に難しい(笑)。与えられたシーンとセリフで精一杯演じるのみ、ですね。

『ある男』での章良と香織の夫婦関係は、ともすれば観ていただける方々が感情移入しやすい関係性だと思っています。多かれ少なかれ夫婦をしていると意思疎通の齟齬があったりしますし、気付けばお互いが別の方向を見ていることを思い知り、孤独を感じることも。作品の中ではこの夫婦は、章良がとある事件にのめり込むことで家庭を顧みなくなりどんどん破綻をしていくのですが、破綻しつつも夫婦関係の解消までは行きつかない微妙な心理など、二人の醸す雰囲気で感じとっていただければなと思っています。

ミュージカル歴22年。お客様からの声が徐々に良い反応に代わってきたのを肌で感じています

今回の座組は過去に共演経験のある俳優が多く、何かわからないことがあればすぐに相談できて、とにかく安心して演技ができる信頼しかない座組です。中でも鹿賀丈史さんは私がミュージカルデビューした22年前、『ジキル&ハイド』でも共演させていただいていて。『ジキル&ハイド』以降何度か舞台現場などでお会いする機会はありましたが、新しい作品でご一緒するのは本当に久しぶりのこと。70代になってもなおパワフルに、そして素敵に舞台に立たれる姿は心から尊敬しますし、常に刺激を与えてくださる偉大な先輩だと思っています。

歌手として芸能界デビューをさせていただいて、感じるままに歌を歌ってきて、ソプラノの声の出し方もわからなかった私が、22年もミュージカルを続けているだなんて本当に信じられないこと。最初の頃はお客様から厳しいお言葉をいただくこともありましたが、徐々にフィードバックが良い反応に変わってきたのを肌で感じましたし、そうしているうちに楽しくなって、もっとやってみたい!挑戦したい!という気持ちに突き動かされてきたような気がしています。今年の初めに久しぶりにミュージカル出演をさせていただき、改めてミュージカルの楽しさやそこから得られる充実感を噛み締めています。
そんな中での、私にとって今年第二弾であるミュージカル『ある男』。世界初演というプレッシャーはありますが、この作品はミュージカルになるべくしてなった作品だと確信していますし、座組みんなでベストを尽くして原作に魔法をかけます。是非、魔法のかかったミュージカルを劇場まで観に来ていただきたいですね。

撮影/川谷昌平 ヘア・メイク/髙原優子 取材/キッカワ皆樹 編集/浜野彩希

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知念里奈さん(44歳)「これがミュージカルに?」ベストセラー原作への挑戦秘話

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