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小瀧望さん「何でも来い!」と思った矢先に訪れた“ちょっとヤバい”舞台

俳優としても着実にキャリアを重ねる小瀧望さんが、トム・ストッパードの傑作舞台『ロックンロール』に挑戦。難解な戯曲に「ちょっとヤバい(笑)」と本音をのぞかせながら語ってくれた信頼する共演者への思い、舞台に立つ怖さ、そして俳優としての現在地とは。

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小瀧望
1996年大阪府出身。 2014年CDデビュー。俳優としても幅広く活躍し、2020年の主演舞台『エレファント・マン』で第28回読売演劇大賞の杉村春子賞、優秀男優賞を受賞。近年の主な出演作は舞台『DEATH TAKES A HOLIDAY』『梨泰院クラス』『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』、ドラマ『刑事7人』シリーズ、『小さい頃は、神様がいて』『未来のムスコ』など。

「ほんまに最初は一人やった」舞台を続けてきて感じる“自分の居場所”

タイトルを聞いた時に僕も「ん?」と思いましたが、今回の舞台『ロックンロール』はミュージカルではございません。おそらく皆さんが教科書でしか見たことがないであろう、「プラハの春」や「ビロード革命」みたいな言葉がちょいちょい出てきます。登場人物それぞれが持つ思想や正義、平等、自由であるべきという理想を約20年かけて描く物語です。音楽とともに進んでいく話なので、そこも楽しんでほしいと思います。会話の緻密さや、やり取りの奥深さも楽しんでいただけるんじゃないかな。
そしてこの強力なキャスト陣(フライヤーを見ながら)、もう間違いない! 俺が出てなくてもこのフライヤーを見たら「間違いない!」と思うぐらい、親愛なる、そして信頼できるキャスト陣です。楽しそうな方ばっかりのカンパニーなので早くやりたいです! 再共演の方、直近で舞台を観させていただいた方、僕の舞台を観に来てくださった方もいて、どんな感じなんやろうってわくわくします。稽古は勉強会から始まるらしいので、わからんことがあったらどんどん質問します。
キャストには僕が崇めている那須佐代子さんもいます。那須さんとの出会いは僕にとって衝撃で、「なんてすごい方なんだ!」となりました。再共演の方は4人いて、那須さん、(大鶴)佐助くん、(西川)大貴くん、(斎藤)瑠希。(吉原)光夫さんはジャン・バルジャン(『レ・ミゼラブル』)を、村川(絵梨)さんは『エクウス』を観させていただいて、上口(耕平)さんはこれから『ディア・エヴァン・ハンセン』を観させていただく予定なのでわくわくです(取材は9月)。浅野(令子)さんは『梨泰院クラス』で僕のお父さん役をやってくれた浅野(雅博)さんの奥さんやし。「今度は妻がよろしく」と言っていただいて、「俺、徐々に居場所ができてる」って感じました。稽古場で再会して「あー!」みたいな感じ、僕が演劇を始めた頃はそれがなくてただただ寂しかったので。今それがあるのは続けてきた証というか、嬉しいです。ほんまに最初は一人やったから。

「何でも来い!と思っていたら…」挑む“ちょっとヤバい”難役

『ロックンロール』の物語の背景は少し前の時代ではありますが、感覚的なものは今と全く変わらないと思います。ただ会話のやり取りはちょっと違うかな。登場人物が賢い人が多くて、僕の日常会話とはまるで違います。セリフも長いし、やりとりの中に隠された“本当に言いたいこと”が散りばめられている。でも、登場人物たちが抱えている問題、苦難みたいなものは現代と変わらないと思います。

僕が演じるヤンとの共通点は…素朴? 派手に見える職業ですけど僕は意外と普通というか、昔、小池栄子さんに「小瀧は普通だからいいんだよね」って言われたことがあって。そういう意味でもわりとヤンと近いかなと思います。

ヤンという人物の約20年間を丁寧に演じなければ、お客さんの心が離れていくんじゃないかというある種の恐怖心もあります。「お前、今何言ってんだ」みたいなことをヤンが言われるシーンがあるんですけど、俺も台本を読んでいて思うんですよ、「これ、何の話をしてんやろな」って。根底ではずっと繋がっているんですが、ストーリーがやや断片的に描かれているのもこの作品の魅力の一つかと思います。
少し前に『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』をやって、「よし、俺は立ち向かえた!何でも来い!」と思っていたら、「これはかなり手強いぞ」的な作品が来てしまったという危機感はありますね。ただ、難しい戯曲は読んでいるだけじゃ理解が全然追いつかないことはよくあることですし、本読みでわかること、舞台に立ってからわかることもあると思います。日々、ヤンと自分の共通点、相違点をみつけて、この時期に少しずつ変わっていくのかな。

昨日、劇団青年座さんの『ハード・プロブレム』を観させていただいたんですが、それも『ロックンロール』と同じトム・ストッパード作品で、頭抱えましたね。「俺はこのような作風にチャレンジするのか…」と。『ハード・プロブレム』も『ロックンロール』と同じように専門的な言葉が雨のように降り注いでくるんですよ、カタカナ地獄(笑)。『ロックンロール』は “なんとかズム”とか“なんとかスト”みたいな言葉がめちゃくちゃ出てくるので、覚えるのも大変やけど劇場で耳と目で追う皆さんも大変だと思います。

トム・ストッパードさんは専門用語を全部理解してほしいわけではないそうなんですが、俳優としては理解して体に落とし込んで、あたかもその時代に、その職業の人として生きているように見せなきゃいけない。自分たちの力で、お客さんの心を離さずにある程度理解していただく必要があるから、めっちゃ大変やなって思いました。ちょっとヤバいですね(笑)。

俳優たちの技量、説得力が試される作品をトム・ストッパードさんは作っているんだな、と感じます。この物語の激動の時代、約20年間を届けるという意味では相当勉強して、ワンチームとなって食らいついていかないといけないなと思います。

ライブは全く緊張しない。でも舞台はむっちゃ緊張します

舞台ではすごく緊張します。ライブは全く緊張しないです、やっぱり18年やってきたことなので。百戦錬磨じゃないですけど、ライブは何が起きても大丈夫って思えるんですが、舞台はストレートもミュージカルもめっちゃ緊張しますね。特に今回は膨大なセリフ量と情報量なので気を引き締めています。
前に演出の小川絵梨子さんからいただいた、「舞台に出ちゃったら出たとこ勝負だから。全部手放して」という言葉はすごく印象に残っています。楽屋に自分で書いた“意識することの貼り紙”を眺めながら出ていくのも一つのルーティンですね。感謝の気持ちと「今日も自由に生きられますように」みたいな願掛けをしてから舞台に臨むようにしています。意識することの貼り紙には森(新太郎)さんに教わった「感情を腹に持ってこい」「毎回、最初で最後」と書いてあります。

本番前は緊張しますが、「これだけ稽古をやってきた」っていう自信もあります。絵梨子さんが「セリフなんか間違ったっていいんだから。役で生きていればそれでいい」ともおっしゃってくださって、それからすごく気持ちが楽になりました。今回は待ちに待った絵梨子さんの演出なのでまたビシバシ言ってほしいです。

絵梨子さんがお持ちになっている感覚も好きですし、性格も好きですね。すごく引っ張ってくれるんです。「足りてないよ」ってはっきり言ってくれる、ストレートに言ってくれたほうが僕はありがたいです。優しく回りくどく言われるより、「全然足りてないです!」ってはっきり言われるほうがいい。「なるほど。もっとやらな」ってなりますね。実際に「こういうこと、こういう感じ」ってやって見せてくださったりもします。ある種、座長みたいな、ついていきたい人だし、ついていかなきゃって思わせてくれる人です

『ロックンロール』



世界的な劇作家トム・ストッパードによるストレートプレイ作品。小瀧さんは愛するロックンロールと母親を守るため、ソ連軍侵攻に揺れる祖国チェコスロヴァキアへの帰国を決意するケンブリッジ大学の留学生ヤンを演じる。他の出演:村川絵梨 大鶴佐助 上口耕平 那須佐代子 吉原光夫ほか。兵庫公演(11/6~8)に続き、東京公演は11/13~12/6に上演。

 

撮影/古末優一 ヘア・メーク/佐々木麻里子 スタイリスト/村田友哉(SMB International.) 取材/中畑有理

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