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「女の子は強いとモテない」と思っていた。直木賞・朝倉かすみさんが小説『けんぐゎい』で描いた「強くてもいい」女性の生き方

初の時代小説『けんぐゎい』で第175回直木賞を受賞した朝倉かすみさん。43歳で作家デビュー。40代からがまさに人生の始まりだったという朝倉さんに小説家になるまでの経緯や受賞作への思い、40代に伝えたいことなどを伺いました。

お話を伺ったのは……
朝倉かすみさん(66歳)

《Profile》
1960年北海道生まれ。2003年「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞、’04年「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞し、作家デビュー。’09年『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞、’19年『平場の月』で山本周五郎賞受賞。今年『けんぐゎい』(すべて光文社)で直木賞を受賞。

ファッションが大好きな朝倉さん。ブラウスはタオ コムデギャルソン、スカートはブラック コムデギャルソン、靴はプラダのブラッシュドレザー ローファーで。「今日は受賞セレモニーがあるというので、華やかにしてみました」と光文社のロビーで。

40代からがまさに自分の人生の始まりでした

作家デビューしたのが43歳。40代で自立への道を歩き始めたというか、まさに人生が始まった感じです。というのも、短大卒業後、いきなり就職するなんて私には急すぎて、ワンクッションが欲しくて無職の道を選びました。でも、就職した友達の話を聞いていると、なんだかおいていかれた感があって……。

20代後半で短期のアルバイトを始め、ひとりでお昼ご飯を食べるという初めての状況に、手持ち無沙汰から文庫本を読むようになったんです。読む本を買うためにアルバイトに行っている感じで、名作を片っ端から読んでいきました。

30歳になるとき、このままでは結婚はしないかもしれない、手に職をつけなくてはと、小説の書き方を学ぶために講座に通い始めました。でも、この段階では「絶対に小説家になる」という強い意志があったわけではなく、毎朝窓を開けるときに「なんとかなる」というあの感じで、きっとなっちゃうんじゃないかという変な自信がありました。作家になるまで10年以上かかりましたけど、自分なりの戦略は持っていたつもりです。

とはいえ、賞をいただいたり、候補になったりっていうのは運。私がどうこうするものでも狙うものでもない。毎日のルーティンを怠らずにやることが繫がっているのかもしれません。あと最近知ったのが、指輪のおまじない。右手の人差し指につける指輪が集中や行動力を高めて物事を実現へと導き、左手の小指につけるピンキーリングは、舞い込んだ幸運やチャンスを逃さず留めるというもの。そういうことがちょっとずつ運に繫がっていくと思っています。神社仏閣も通りかかったら必ず拝みます。そういうのは疎かにはしませんね。

強く生きるためには強さを肯定することから

直木賞受賞は本当に嬉しかったです。タイトルの『けんぐゎい』は、普通の人とは異なる「圏外」にいる人々のこと。江戸時代に生きた主人公のふゆは、幼い頃に疱瘡を患い、顔に痕が残り、器量が悪いだけで嫁入り話からは除外されます。聡明なのにコンプレックスを感じ、生きづらさを抱えながらも、それを乗り越えていく。それを強さというのなら、強くてもいいと肯定することが最初だと思います。私はずっと長い間、女の子はこうあるべきという社会的規範や固定観念に過剰に適応し、強いと可愛がられないのでは、モテないのではというブロックがありました。強くてもいい、はっきりものを言っていいと自分を許せるようになったのは、ここ10年くらい。きっかけはオンラインゲームです。ゲームの世界では、顔も性別も一切関係なく、強さがすべて。強いとカッコいいから強くなりたいと思う。自分も強くていいのだという感覚をここでつかめましたね。強いと人を助けることができるし、人に優しくなれる。私自身はまだ強いとはいえませんが、それ以来、意見があるのに口をつぐむことはなくなったし、わからないふりをして、その場を取り繕うこともしなくなりました。ごまかすのがめんどくさくなったというのでしょうか。

もともと感じよくしなきゃとか、いろいろなことが気になっていました。でも、だんだん自分が思うほど人は気にしていないと思うようになった。自分がコンプレックスだと感じていたことも、大体のことはたぶん大したことではないんです。それをメッセージとして小説に込めたということはまったくなくて、感じたことを書いていった感じです。ただ、コンプレックスに閉じ込められていたふゆが覚醒して、夢に繋げていく生き方をするには、自分の強さというものが絶対に必要だと思います。そして、気にしすぎないということも。年齢を重ねたせいもありますが、どうでもいいなと思う範囲が広がってラクになりました。

今日は仕事が終了という瞬間が一番の幸せ

更年期はまったくなかったのですが、持病の橋本病と、周期的にうつ病があります。うつ病の始まりは20代。症状はその時々。集中力が異常に落ちて、今考えていることがわからなくなり、本が読めなくなったり、電車やバスに乗っていて、降りる場所を間違えて永遠に家に帰れなかったり。そうなると顔つきが変わります。疲れるとなりやすいので疲れないようにしています。でも病院に行って、お薬を飲むと治るタイプで、悲観的になったことはないですね。

65歳から、美容にも健康にもいいと言われることをどんどん試そうと思っていて(笑)。年齢を経た美しさは人によって違うと思いますが、自分のスタイルがしっかりあり、それに合った装いの人は美しいと思います。でも、周囲の評価や年甲斐もないからなどと気にしすぎる人は美しく見えないと思いますね。私も以前は二の腕を出すのは抵抗があったのですが、最近はもういいかなと。

人に気を遣われないようめんどくさいと思われないよう年を重ねていきたい

内面的には、めんどくさい人だと思われないようにしたいですね。年齢を重ねると、ある程度気を遣われるのは仕方がないですが、怖くてものが言いにくい雰囲気にはなりたくない。周囲に助けてもらわなくてはいけないことがいっぱいありますから、必要以上に気を遣わせないためにはどうしたらいいかを模索中です。

今一番幸せなときは、今日は仕事がおしまいっていう瞬間。週一程度でまったく仕事をしない日を作っているのですが、そんな日はもう何もしません。お菓子を買いに行ったり、お洋服を見に行ったり、映画を観に行ったり、デパ地下で美味しいお弁当を買って家で食べたり。そんな日は本当に笑顔になっています。

40代のころの私

40代の頃の作家・朝倉かすみさん

40代はまさに人生の始まり。親は毎年誕生日に1万円をプレゼントしてくれるのですが、40歳の誕生日に「いよいよ女盛りですね」と書いた手紙が添えてありました。まさにそうだなと。

朝倉かすみさんが40代に伝えたいこと

新しいことに挑戦するって、とても素敵なこと。40代でも50代でもその気持ちがあれば何だってできます。私は70代からでも始められるピラティスをやりたくて、もう行くスタジオも決めているんです。

直木賞受賞作『けんぐゎい』

時代小説 「けんぐゎい」

江戸の市井を舞台に、疱瘡の痘痕をもつ女性が、産科医との出会いを機に自らの生き方を見定め、世間の「圏外」に追いやられた女性たちの居場所を築く。江戸時代を描きながら、現代にも通じる物語。

本記事は、美ST編集部が取材・編集しました。「美ST」は16年以上にわたり、40代&50代女性の美容とライフスタイルを追求してきた月刊美容誌です。
『美ST』2026年11月号掲載
撮影/向山裕信(cheek one) ヘア・メイク/yumi(スリーピース) 取材/安田真里 編集/和田紀子

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