菅野美穂さんの子育て論「親だって七転八倒していることを知ってもらうのも大事」

俳優としても、46歳の女性としても母としても自分自身と向き合い、日々、一男一女の子育てに奮闘しながらも圧倒的な透明感と清らかな輝きは増すばかりの菅野美穂さん。穏やかに、怒らず、優しく微笑んで……なんていう育児は菅野さんにとっても夢物語。日常の苦悩や落ち込み、そして失敗を隠すことなく語ってくれました。

子供たちが少しだけ手のかからない歳になり、嵐のように四六時中怒鳴っていた時期から、子育ても少し楽になってきました。コロナ禍の行動制限がなくなり、学校のお母様たちとも悩みを共有できるようになって、行き詰まり感と孤独感が少し薄れました。

とはいえ今朝もひと怒鳴り（笑）。この春も、家族が仕事で長期間家を空け、元々余裕がないのに、ワンオペ育児をせざるをえなくなり、地獄の日々でした。子供たちも不安定になって、ご飯の量も減ったり。よく乗り切ったなと思います。知らず知らずに4人で家族を作っていたんですね。単身赴任のご家庭のお母様の苦労が身に沁みてわかりました。

1人のときは後回しにできたことも、後回しはもちろん、一時停止すらできないのが子育て。昔から洋裁が不得意で全部母にやってもらっていたけど、幼稚園の通園バッグを作るときに苦労して、こんな形でサボっていたツケが回ってくるのかと落ち込みました。

コツコツやることが苦手なのに、子育ては毎日コツコツと根気強さと努力が必要で、まさかこんなに根性のいることをするとは思っていませんでした。「何で私、こんなに大変なんだろう」って大きな独り言を言うと、娘が「そういうときもあるよね」って。あ、聞かれちゃったって思うけど、人生素晴らしいところを見せるばかりでなく、親も七転八倒していることを知ってもらうのも大事だから。

家族は、子供に私が怒っていても黙っていてくれます。寛容さって本当に大切なんだなって、ありがたいです。まだ子供と別で出かけたりもできないし、ほっこり落ち着く時間なんてないけど、たまに1人カフェでお茶したり、お蕎麦を食べたりする時間は気持ちが切り替えられます。やることは子供の習い事の予約だったりしますが。

美容からもずいぶん離れていて、気持ちがイライラしながら最低限のことしかしていませんでした。ところが、20年近く定期的に会っている友人のめぐちゃん（MEGUMIさん）の本『キレイはこれでつくれます』を読んで、〝美容って楽しいよね〟という観点に刺激を受けました。実際、めぐちゃんは会うたびにキレイになっています。

振り返ると、かつてはお風呂でスクラブしたり、入浴剤を入れたり、私も美容から元気をもらっていたことを思い出しました。子供に手がかかってもやれることからやってみようと、旅行に持参しても結局やらずに持ち帰るシートパックから始めてみました。朝4時半起きして支度しながらつけています。

さらに起床後、まずコーヒーを飲むのを、鉄瓶でお湯を沸かして白湯を飲むようにも。バタバタと子供の支度をしながら片手で美顔器もしています。まだ変化は感じてないけど、明らかに気持ちが強くなり、自己肯定感が高まってきました。自分を労る大切さをしみじみ痛感しています。

2023年『美ST』11月号掲載
撮影／下村一喜（AGENCE HIRATA）　ヘア・メーク／北 一騎（Permanent）　スタイリスト／青木千加子　取材／安田真里　編集／漢那美由紀