PEOPLE
映画『ミナリ』で韓国人俳優としては初となるアカデミー賞助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン(76歳)にクローズアップ。20代で一躍スター女優となり、プライベートでの結婚、離婚、子育てを経ながらも70代の今、最高に輝いている理由に迫ります。独特の魅力を放つ彼女の人生哲学とは?
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73歳で米アカデミー賞助演女優賞を獲得したユン・ヨジョン。受賞作『ミナリ』では、破天荒で品のない老婆役ながら奥に潜む慈愛を巧みに演じましたが、アカデミー賞では、打って変わって知的で気品を帯びた佇まいで登場。しかも流暢な英語によるウイットに富んだスピーチや受け答えは、多くの人を魅了。さまざまな表情を見せるその顔には、彼女の人生が刻まれています。
幼い頃に父が他界し、シングルマザーの元で育った彼女は、母を助けるために大学を中退して芸能界へ。23歳で挑んだ初映画『火女』では、純粋な娘が狂気じみた悪女へと変貌する過程を見事に演じ、一気にスター女優に。「人がどう思うかではなく、他と違うからこの役を選んだ」と語った若い頃の彼女は、可愛いというよりはコケティッシュ。普通を嫌うちょっと生意気な表情も見て取れ、それが独特の魅力でもありました。
人気絶頂の27歳の時に歌手のチョ・ヨンナムと結婚し、夫の留学に付き添い渡米。言葉の壁もありアメリカで俳優業を断念し、事実上の休業。夫の度重なる浮気で夫婦仲は破綻し38歳の時に帰国。息子たちを養うために芸能界へ復帰しますが、当時まだ保守的だった韓国では離婚した彼女への風当たりは強く、「顔を見たくない」という苦情の電話もあったほど。この時期は生活のためと割り切り、どんな役も引き受けました。それでも彼女は、この一連の厳しい期間がなかったら、現在のような女優としての自分は存在しない、と言います。
子育てを終え、2010年の『ハウスメイド』では、『火女』の頃の輝きを想起させる凄みのある演技を知らしめました。またリアルバラエティで見せる少し毒舌&ユーモアのある姿で、全世代の尊敬と人気の的に。
彼女がよく口にするのは、「いくつになっても人生の正解はわからない。だって私もこの歳は初めてだから」。自分の年齢を認めつつ、常に未知へ好奇心を持って臨む心が彼女をさらに美しい顔にしているのです。
23歳。主演女優賞を総ナメにした映画デビュー作『火女』。鬼才監督キム・ギヨンによる過激な作品を自ら選び、〝普通〟を好まない、自分のセンスに自信を持つ強い意志が顔に表れている。
62歳。第63回カンヌ国際映画祭では「ある視点賞」を受賞した『ハハハ』と韓国内で助演女優賞を多数受賞した『ハウスメイド』の2作品上映。復帰後の辛い時期を乗り越え、貫禄と新たな自信を感じさせる表情に。
73歳。第93回米アカデミー賞で、アジアで2人目、韓国人初の助演女優賞を獲得。シルバーヘアも美しくセットされメークもきちんとしているが、カンヌ時よりも自然体で、さらに垢抜けた印象。
「私はすべての選択を自分の心に従ったので、その選択とともに生きるのが私の責任です」”I made all my choices following my heart,so it’s my responsibility to live with them.”(2022年4月8日「prestigeonline.com」より)
「考え続けている限り、悩みはあって当たり前よ」(tvN2022年放映「ヨジョンの思いがけない旅程」より)
「若さを羨むと老人は醜くなります」(2021年4月28日「hani.co.kr」より)
1947年 6月19日京畿道開城府(現・北朝鮮開城市)で高麗人参栽培者の長女として誕生。
1966年 19歳。オーディションで芸能界へ。漢陽大学中退。
1971年 23歳。『火女』で映画初出演。主演女優賞を多数受賞。
1974年 27歳。歌手チョ・ヨンナムと結婚。渡米。俳優は休業。
1985年 38歳。夫と不仲になり帰国。家計のため俳優復帰。
1987年 40歳。協議離婚成立。ドラマ「愛と野望」が大ヒット。
2010年 62歳。『ハウスメイド』で青龍映画賞助演女優賞受賞。
2013年 66歳。バラエティ番組「花よりお姉さん」で大人気に。
2021年 73歳。『ミナリ』でアカデミー賞他、16もの映画賞で助演女優賞を受賞。
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2024年『美ST』2月号掲載
編集/石原晶子
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2024年12月16日(月)23:59まで
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