SKINCARE

《29年間ビューティ担当のベストコスメ》【第29回】クレ・ド・ポー ボーテの「ラ・クレーム」

高級クリームというと、1999年に日本上陸した「シスレイヤ」、「クレーム ドゥ・ラ・メール」、2006年に発売されたシャネル「サブリマ ージュ」とゲラン「オーキデ アンペリアル」など外資系ブランドの名が多く思い浮かぶなか、国産ブランドで名前が真っ先にあがるの が、クレ・ド・ポー ボーテの「ラ・クレーム」。〝最先端で最高〟が宿命であるクリームは、私たちの肌に何をもたらしてくれるでしょうか?

今月の殿堂コスメは、高級クリームの「秘伝のレシピ」。クレ・ド・ポー ボーテの「ラ・クレーム」

クレ・ド・ポー ボーテ ラ・クレーム 30g ¥60,000【医薬部外品】(クレ・ド・ポー ボーテ)。38年の歴史を持つ「ラ・クレーム」はクレ・ド・ポー ボーテとなった1996年に高級クリームブームのさきがけとなる。処方に大きな変化があったのは2007年、レチノール誘導体を配合し抗シワを強化、テクスチャーも軽くして毎日使えるように。2011年から「肌は、脳と同じように自ら考え、さまざまな情報を処理する能力(=肌知性)をもつ」という「ブレインスキン理論」を採用し、キー成分である「イルミネイティングコンプレックス」を配合、2016年には「同EX」でハリ効果を強化した。膨大な試作を繰り返すより、これだけの有用成分を入れて最高レベルの製品を作るのにも、〝最短で〟完成まで持って行くべき、というハイレベルな製作秘話に驚きました。この8代目は2020年2月21日発売。

\ここがすごい/
1:毛細血管、コラーゲン、夜の肌メカニズム、すべての最新知見が凝縮
2:絶妙なバランスで完成できたのは、優れた才能と技術があってこそ
3:名品こそ時代とともに進化する

美しくなろうとする肌本来の力を高めるため、限界を定めずに進化を続けるアイコンクリーム

高級クリームはブランドのシンボルであり、その価格の高さもあって失敗は許されないという宿命を持っています。また総合的に多くの悩みに効かなくてはいけないという命題も。6万円という価格は自信がなくてはつけられません。「ラ・クレーム」の初代は1982年に誕生した前身の「クレ・ド・ポー クリーム」(3万円)、2代目1992年「クレ・ド・ポー クレームシュペリエル」(これ以降は5万円)。そしてクレ・ド・ポー ボーテとして生まれ変わった1996年の3代目から「ラ・クレーム」となりました。その後2004年、2007年、2011年、2016年(ここから6万円に)を経て、2020年2月21日、8代目が発売。私はこの8代目が歴代のラ・クレームの中で一番好きです。軽いのにすぐに潤い、たっぷり睡眠を取ったような翌朝の肌には感動しました。最新ラ・クレームの真価とは何でしょうか。

 最大ポイントは血管の99%を占める毛細血管と肌の関係の研究です。「ゴースト血管」という言葉を聞いたことがありますか? それは血液が流れなくなった毛細血管のこと、その状態が続くと毛細血管は消えてしまうのです。加齢で減るのは避けられないとしても、生活習慣や環境によって消えるのは予防すべきです。何故なら、毛細血管が劣化したコラーゲンの場所を見つけると、そこに新しい毛細血管が作られ、新しいコラーゲンが毛細血管の周囲に枝葉のように生まれていくからです。だから毛細血管はとても大事。スキンケアで〝血流血流〟と言われる理由、私は初めて納得できました。毛細血管の密度と太さがあるほど、肌の弾力レベルは高いのです。

 資生堂の20年以上を超える研究のきっかけは「お風呂あがりの肌はハリがあるよね」という会話でした。温まることで血流が上がるのはもちろんですが、毛細血管の構造とその中の因子に関係があるのでは? という点に着目したのです。鍵はインテグリンα5という毛細血管細胞にあるタンパク質でした。コラーゲンを作れという指令を出すインテグリンα5は加齢により減っていくのです。インテグリンα5を増やす決め手になったのは真皮にアプローチする酵母。6年以上の研究で硬い細胞壁を取り除き、セラミドで包まれた肌との親和性が高いバイオ成分「セラファーメント」を作り出しました。

 スキンケアの基本は「防御力」と「修復力」です。生まれながらに持っているその力を最大限に高めることが化粧品の役割。夜のお手入れが効果的なのは内外からの刺激が少なく、肌が安定しているため、新陳代謝がめざましく成長ホルモンも高まって修復に力を注げるからです。しかし、現代では、気温、睡眠不足、スマホなどの内外ストレスによって肌の修復のために使うエネルギーを夜に防御に使わざるをえない状況に。だからラ・クレームは、本来の〝夜の肌活〟を「スキンイルミネイターリッチ」でサポート。加えて、強くなった紫外線の害。日中の紫外線によるダメージは浴びた直後だけでなく、なんと8時間後に再び活性酸素が増加するというショックな事実が判明……肌のゴールデンタイムが台無しではないですか。そこで夜に高まる酸化ストレスを抑制する「緑茶エキス」と「エクトイン」を配合しました。

 さらに夜のお手入れの有利性は、活動しないと体深部の体温は下がるのですが、リラックスして副交感神経が優位になると毛細血管が拡張。すると皮膚の温度が高くなります。普段の皮膚温平均32度のところ、夜は35度ほどになり、34度を超えると血流のスピードが一気にあがるという研究結果が。もうおわかりですね、毛細血管が元気になるのです。

 これらを含めラ・クレームに入っている主な有用成分は26ほど。各々が再生力アップ、シミ、シワ、酸化ストレス、コラーゲン産生、幹細胞や真皮や真皮基盤構造に働きかけます。先月書いたように「異なる有用成分が多く入っていればいるほど多くの悩みに対応できるが、一つの化粧品として完成させるのは難しい」――しかし、それを見事実現したのがラ・クレームなのです。

 そこには優れた研究員と「フォーミュレイター」というスタッフの存在があります。フォーミュレイターとは全ての成分と基剤、乳化の方法・温度・攪拌の速度、製品の安定性を考えて製品をデザインし完成させる仕事。今回、何か一つをほんの少し抜いただけで別モノになってしまうほどの、歴代ラ・クレームの緻密な完成度に驚いたそうです。時代を超えて受け継ぐ唯一無二の秘伝のレシピに新しく何をどう加えるか、さらに〝効かせて魅了する〟テクスチャーと香りと、輝くパッケージまで。ラ・クレームを使った時の〝静かなる感動と充足感〟は、数百人のスタッフの挑戦によって作られているのです。

\使い切っています♡/

昨年11月末の発表会の夜から使い始め、パール粒大を夜のみで3カ月半ほど。テクスチャーが軽くて瑞々しいため、つい多めに使いそうになりました(要注意)。手のひら全体で頰を包みこみ、あご先からこめかみまで持ち上げると、じんわりと浸透していき、優しい香りとともに肌のこわばりが解けていきます。使い終わって悲しい……。これがあると安心していられるので、きっと我慢しきれずにリピートすると思う。6万円÷約100日で一回600円ですが、多くの悩みに応えてくれるので、究極の時短スキンケアと言えます。

『JJ』時代から美容を担当。スーパーモデルブーム、 日本上陸前のM·A·Cをブレイクさせる。愛ある視点で厳しく化粧品を選び、「コスメは感動!」が信条。美ST ONLINEでの連載「30年目のコスメ愛」も好評。

2020年『美ST』6月号掲載
撮影/河野 望 編集・文/石原晶子

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一生元気に!自愛ビューティ

《29年間ビューティ担当のベストコスメ》【第29回】クレ・ド・ポー ボーテの「ラ・クレーム」

2025年1月号

2024年11月15日発売

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