HEALTH
長年、料理の仕事に携わってきた〝ばあば〟のレシピには、知恵と工夫と愛情がいっぱい。あわただしい毎日を送る美ST世代に伝え遺したい、とっておきの美容弁当を教えてもらいました。
すき煮はふたたび火にかけて煮詰め、汁けをしっかりきってからご飯にのせます。肉は旨みが出切ってしまうけれど、肉の旨みがしみた玉ねぎやしめじがおいしいので、たっぷり入れたいですね。もしあれば紅しょうが、甘い炒り卵を入れて彩りよく仕上げましょう。
【材料】(2~3人分)
牛切り落とし肉……200g
油麩……小2本
玉ねぎ……1個
しめじ……1/2パック
いんげん……50g(さっと塩ゆで)
だし……200ml
砂糖……大さじ2
醬油……大さじ2と1/2
酒……大さじ2
油……小さじ1
【作り方】
① 油麩は1cm幅の輪切りにし、たっぷりの水に5分ほど浸けて戻し、軽く水けを絞る。
② 玉ねぎは繊維に沿って1cm幅のくし形に切り、しめじは石づきを除き大きめにほぐす。牛肉は食べやすい大きさに切る。
③ 鍋に油を熱し、牛肉を全体に広げ炒める。半分くらい色が変わってきたら、砂糖を振りかけて炒め、醬油、酒も加えてさっと炒め合わせ、だしを加え、強火で鍋底をこそげながら沸かし、アクを取る。
④ 火を弱め、牛肉をまとめて端に寄せ、玉ねぎ、油麩、しめじをぎゅうぎゅう詰めるように入れ、蓋をして10分ほど煮る。味を見て、甘ければ醬油、濃い場合はみりんまたは酒を適量(分量外)加え、調える。
⑤ 器に盛り、半分に切ったいんげんを添える。
\お麩入りすき煮の完成!/
藤野嘉子さんがまとう雰囲気をひと言で表すなら〝軽やか〟。60歳を前に、都心の持ち家から下町のコンパクトな賃貸マンションに住み替え、仕事柄たくさん所持していた食器類や調理道具も、すっきり整理したと言います。
「もう若くはないけれど、夫も私も元気だし、やりたいことだってたくさん。だからなるべく身軽に、変化を恐れず暮らしていきたいと思っています。仕事ではさまざまな料理を作りますが、家で食べるのは、煮物やお浸しといった定番のおかず。だから、たくさんの道具はいらないんですよね。食べることは生きることだと言うけれど、頑張りすぎる必要はなくて、簡単な外食でも、お弁当でも、おいしくお腹を満たせるならそれで十分。これまで以上に体の声を聴いて、日々の料理を作っています」
そんな藤野家の定番から教えてくれたのが「お麩いりすき煮」。日常の〝ほどよい〟ごちそうです。
「すき焼きとなると構えてしまうけれど、『財布も自分もそんなに頑張れない。でも甘辛いお肉が食べたい』とき、手軽に作れるおかずです。主役は、切り落としの牛肉と、油麩。煮汁を吸ってモチモチしたお麩が最高においしいの。調味料の砂糖、醬油、酒は同量でもいいのですが、私はそれだと少し甘く感じるので、醬油をやや多めに。出来上がる直前に味を見て、甘ければ醬油、濃ければみりんや酒を足して調整します。料理は鍋の中で完成するのではなく、人が食べた時点で完成するものだから、食べる人の好みや体調、飲むお酒、他の料理との組合わせをイメージすることが大事。レシピはあくまでたたき台として、遠慮せず、どんどんアレンジすればいいんです。自分の感覚を磨いてね」
学習院女子高等科卒業後、香川栄養専門学校製菓科に入学。在学中から「キユーピー3分クッキング」のアシスタント、料理研究家の助手を務める。1985年に独立し、各種メディア、講習会などで活躍。フレンチシェフの夫、菓子研究家の娘とともに営む「カストール&ラボラトリー」は昨年秋に港区南青山から中央区日本橋本町に移転。通常の料理教室のほか、定番の味噌を作る会など、季節に合わせて楽しむ教室も開催している。
2023年『美ST』3月号掲載
撮影/須藤敬一 取材/伊藤由起 編集/小澤博子
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