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俳優・鈴木亮平さんが「ネガティブが逆に良かった」と語る理由

大胆な役作りと深い洞察力をベースにした演技力に定評のある、今最もノッている俳優として注目を集める鈴木亮平さん。キャラクターに息を吹き込んだかのような見事なまでの一体感はどのように体得されたのか?2月10日に全国公開される主演映画『エゴイスト』について、主人公の役柄とどう向き合ったのか、そして鈴木さんご自身の美容や「自愛」についてのお話など、たっぷり伺いました。

――映画の原作者である作家・高山真さん自身がモデルとなっている主人公・浩輔を演じるにあたって、どのように役に入られたのでしょうか?

どんな役柄を演じる際にも、僕は他の人よりリサーチを大事にするほうだと思います。例えば、実在する方ならお会いしてお話を伺うことも多いです。でも今回の『エゴイスト』は特殊なケースでした。浩輔を演じることが決まり、ちょうど映画を作ろうと動き出した時期に奇しくも高山さんがお亡くなりになったんです。この映画は彼の生きた証にならざるを得ない大切な作品なので、より大きな責任を持って演じなくてはならない、と感じました。

〈Plofile〉
’83年、兵庫県出身。’06年、俳優デビュー。その後テレビドラマや映画、舞台で数々の話題作に出演。おもな出演作は、NHK連続テレビ小説「花子とアン」、NHK大河ドラマ「西郷どん」、映画『俺物語‼』『ひとよ』など。’21年に映画『孤狼の血 LEVEL2』にて日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。’23年2月10日〜全国公開予定の映画『エゴイスト』では、主人公・浩輔を演じ、東京国際映画祭でも高い評価を得た。4月28日に映画『TOKYO MER~走る緊急救命室~』が全国公開予定。

役作りのために、生前の高山さんと親交のあったたくさんの方々にお会いして、いろいろとお話を伺いました。高山さんの人となりを調べていくうちに、だんだんと浩輔という役柄への思い入れが強くなって、最終的には自分と浩輔が混じり合うような、そんな不思議な感覚を覚えました。今回に限らず、役を演じるにあたっては、最初は他人のように思えていた人に自分から近づいていって、徐々に仲良くなって、他人とは思えなくなる。そんな愛着みたいなものを大切にしたいと思っています。そして最終的には、「もしかしたら、これは自分自身なのでは?」と思えるくらいの感覚になることを目指しています。

今回は直接お会いしてリサーチすることは叶わないという、ある意味特殊なケースだったのですが、肝に銘じたことは、必ずしも高山さんは浩輔ではない、ということですね。また、僕の演じる浩輔の恋人役・龍太は、原作を読んだ段階では「こんなにピュアな人いるのか?」と訝しく思うほどでしたが、龍太役を演じられた宮沢氷魚さんにお会いして驚きました。まっすぐでピュアなところが、まさに龍太そのもので。本当に原作のイメージにピッタリでした。宮沢さんとは相性も良くて、自然と好きになれて、恋人同士の空気を作っていくことができました。

――映画の中では、龍太の髪をドライヤーで乾かしたり、手のマッサージをしてあげたり、ご自身の眉を描いたりするなど、美容的に印象的なシーンもたくさんありました。鈴木さん自身が、普段の美容で気をつけていることなどはありますか?

美容とかケアにはわりと無頓着なほうですね。顔もボディもほとんど気を遣ってケアしてはいないです。ただ、とても乾燥肌なので、高校生の頃から化粧水→乳液の2ステップの保湿ケアだけは習慣としてずっと続けています。今までニキビや肌荒れで悩んだことは少ないほうだと思います。両親も年齢のわりにツヤツヤで若々しい肌をキープしているので、遺伝的なものなのかもしれませんね。

でも最近、メイクさんに「鈴木さんの肌は薄くてたるみやすいタイプ」と言われました。仕事で体重を増やしたり減らしたりしてしまったせいか、「顎や首の皮が伸びてしまっているから、今後、肌のたるみには気をつけたほうがいい」とも……。とは言え、現状大したケアはまだ始めてないんですが(笑)。エイジングというか、ある程度なら老けた印象も俳優にとってはいい味になる、と信じています。

体のパーツの中では、手がキレイ、と褒められることはあります。ケアという意味では、食器を洗った後などに手がカサカサしている時、ハンドクリームを塗るくらいのものなんですが。僕の手は掌が薄めで指が長い、そしてとにかく手自体が大きいんです。手の大きさについては、松坂桃李と鈴木亮平が役者界の2大巨頭かと(笑)。実際にふたりで手を合わせてみたことがあるのですが、指ごとに勝敗が別れる程度で、全体の大きさとしてはほぼ引き分け。まあ、手が大きくて得したことはないですし、細かい作業が苦手になるくらいで特に良いこともないんですが(笑)。

――映画のテーマの一つはいろいろな意味での“愛“だと思うのですが、今回は”自愛“についてお聞かせください。例えば、仕事が終わった後などにご自身を労ったり褒めたりしますか?

自分を褒めたり、労ったりはあんまりしないタイプかも。例え仕事がうまく言っても、「よくやった、自分にご褒美」という感覚はそんなにはないですね。むしろ「次はもっと上手くやりたい」と思う気持ちが優ってしまうことのほうが多いです。落ち込むことのほうが多いというか。でも、自分の強みはそこから回復する術を知っていること。これまでの人生でそれなりに体験して習得していますから、落ち込んでもしばらく待てば浮上できるということに関しては自信があります(笑)。

いちばんの回復法ですか? シンプルですが、ずばり「寝る」こと。ネガティブ感情はどこかでストップさせないと、自分にいい影響はないですから。ネガティブに区切りをつける意味でも、寝ることが回復へのいちばんの近道。
そもそも物事って捉え方によって全く違う意味を持つから、“失敗“も真逆に考えれば自分にとっての糧になる。次に同じ失敗をしないための、いい勉強になったなと思えるんです。「失敗して最悪だ!」と思ったことが教訓となって、後々良い結果につながったこともたくさんありますから。

もちろん人間なので、ネガティブとポジティブの間で感情が揺れることもある。でもイチ押しの立ち直り方があるんですよ。例えば「あの演技は違ったよな、そうは演じたくなかった」と思ってある程度凹んだ後は、何とか180度思考を回転させて「待てよ、でも、あの演技のほうが逆に良かったという可能性もあるか……と思えたら、その瞬間にパン!と思考を停止させるんです。そして寝る!(笑)「いや、でも……」というネガティブループに戻る前に思考を断ち切って、ポジティブのままで固定させてしまう。それが僕にとっては、落ち込みからのベストな回復方法です。
きっと、本質的にはネガティブだからこそたどり着いたポジティブ思考法で。うーん、でもそれができるということは、やはり根はポジティブなのでしょうか。

《鈴木亮平さん衣装》
ブルゾン¥594,000ニット¥137,500パンツ¥181,500(すべてジョルジオアルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社)

《お問合わせ先》
ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社 ☎03-6274-7070

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撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/宮田靖士(THYMON Inc.) スタイリスト/臼井崇(THYMON Inc.) 取材/森島千鶴子 編集/永見 理

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