2023/2/10 （2023/9/29 更新） PEOPLE

俳優・鈴木亮平さんが語る、人生の大きな2つの転機

大胆な役作りと深い洞察力をベースにした演技力に定評のある、今、最もノッてる俳優として注目を集める鈴木亮平さん。2月10日に全国公開される映画『エゴイスト』では、同性愛者である主人公を演じています。そんな鈴木さんが今ハマっていることから人生の転機まで、包み隠さず気さくに語ってくださいました。

▶︎鈴木亮平さんインタビュー前編はこちら

――鈴木さんは役柄と見事に一体化する俳優さんとして定評がありますが、公私ともに興味のあることにはのめり込んで、とことん深掘りするタイプなのでしょうか？

仕事に限らず、物事には主観的にググッと入り込むタイプなので、逆に自分を客観視してセーブすることは常に心がけています。俳優という職業は様々な人物を演じるので、役に入り込む能力とそれを客観視する能力の二通りを鍛えられている気がします。

お話を伺ったのは……俳優・鈴木亮平さん（39歳）

〈Plofile〉
’83年、兵庫県出身。’06年、俳優デビュー。その後テレビドラマや映画、舞台で数々の話題作に出演。おもな出演作は、NHK連続テレビ小説「花子とアン」、NHK大河ドラマ「西郷どん」、映画『俺物語‼』『ひとよ』など。’21年に映画『孤狼の血 LEVEL2』にて日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。’23年2月10日〜全国公開予定の映画『エゴイスト』では、主人公・浩輔を演じ、東京国際映画祭でも高い評価を得た。4月28日に映画『TOKYO MER～走る緊急救命室～』が全国公開予定。

仕事を離れても、興味を持ったことをとことん深く掘るタイプでして。今、一番ハマっていること……ちょっと難しい話になってもいいですか？（笑）最近は、「自動車業界の将来」について考えています（笑）。ガソリン、電気、水素、ハイブリッドなど車のエネルギー源はどれが将来的にベストなのか？自動車産業にまつわる世界各国のそれぞれの思わくを考えたり、人類の歴史的に見て車は今後どうなっていくんだろう……とか、いろいろと思いを巡らせています。日本の自動車業界がこれからどう展開していくのか、に今は興味津々です。僕が考えたところで何の権限もないんですけどね（笑）。そういう、どうでもいいことや自分とは何の関係もないことをあれこれと調べたり考えたりすることが大好きなんですよ。

美術館で絵を見る時も、「この絵がなんとなく好き」と感じるのはもちろんですが、それと同時に「この画家がどういう想いでこの絵を描いたのか」「この絵は美術史の中でどういう意義があるのか」というような背景を考えるのも好きなんです。画家にも描きたかった絵、生活のために描かざるを得なかった絵などいろいろとあるはずなので、画家の文脈や想いを一枚の絵から読み取りたいな、と。
それから「なぜ自分はその絵が好きなのか」を言葉で説明できるようにすることも意識しています。僕にとってはそういうことが、自分と違った人を理解して演じる今の仕事につながっている気がします。

――お忙しい毎日だと思いますが、食生活で気をつけていることや、食のマイブームなどはありますか？

花粉症があるのでアレルギー対策としてなるべく小麦を控えるように気をつけています。麺類が大好きなので、たまには食べてしまいますが、仕事前日にはあまり食べないように心がけていますね。そうしたら自然とニキビもできにくくなった気がします。

どうしても我慢できないのは甘いもの。大好きなので、何かしら毎日食べていますね。どちらかといえば洋菓子派で、大きいリンゴがドーンと入ったアップルパイは大好物！焼いたリンゴやバナナなど、熱したフルーツはどうしてこんなに美味しいのか？と唸ります（笑）。

最近のマイブームは、ファミレスのパンケーキ。人が周りにいて雑音がある場所のほうが集中できるので、台本を読んだりする時には近所のファミレスによく行くんですよ。そこで出合ったパンケーキが、意外と言っては失礼かもしれませんが（笑）、妙に美味くて。たっぷりの生クリームとフルーツが乗った軽やかな生地の質感がクセになって、皆さんにおすすめしたいですね（笑）。

――鈴木さんにとっての人生の転機とは？また、俳優・鈴木亮平としての転機はどの作品でしたか？

今までの人生で最も大きな転機と言えるのは、高校1年の時にアメリカ・オクラホマ州へ留学したこと。初めて自分の国を外から見たり、自分自身がマイノリティな存在になったことで、世界にはいろんな価値観があるんだ、自分の常識が全てではない、と気づかされました。それが当時の僕にとっては良い意味で大きなショックで。結果的にその体験が今の自分の基盤になっている気がします。

とにかく俳優になりたくて、そのためにはまず東京へ行かなくては、という思いで東京の大学に入ったことが次の転機ですね。在学中は学内の劇団の活動に没頭していましたが、当時の後輩が脚本家だったり、先輩がドラマや映画の制作に関わっていらっしゃったりと、最近一緒に仕事をする機会も多いんです。

俳優としては、すべての作品が転機と言えるくらい様々な役を演じてきたので、どれかひとつに絞るのは正直言って難しいです。最近だと、テレビドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」の脚本を読んだ時に、これは日本のドラマ脚本の最高峰だと震えました。複雑な世の中を描いたものとしてこれ以上のものと出会えるだろうか？と思うくらい素晴らしかったですね。僕自身もいろいろと考えるきっかけになりました。また、「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」は、観た後に明日からまた頑張ろう、と思えるような大きな希望を感じる作品でした。ドラマの醍醐味を味わえる、また別の意味での最高峰だと思っています。

――鈴木さんも今年は40歳。ご自身の40代のテーマなどがあればお聞かせください

僕が今、40歳を目前にして思うことは「やりたいことは思い立った時に即実行するべき」ということ。当たり前ですが、体力も気力も年齢とともにどんどん衰えていきますから。もちろん、50代、60代、その先の年代になっても楽しいことは必ずあるとは思いますが、今の自分の年齢で楽しい！と思えることは先送りせずに今やらなくては、と自分に言い聞かせています。幸せなことに仕事に追われている日常ですが、「今楽しまずにいつ楽しむんだ？」と常に自分に問いかけていますね。
今やりたいことですか？もしも1週間休みが取れたら、小笠原諸島へ行きたいですね。大好きな海でダイビングをしたり、大自然の中で生物を観察したり。小笠原諸島には、独自進化を遂げた小笠原オオコウモリやマイマイなど希少な生物がたくさんいるので、詳しい人に案内していただいてじっくり眺めてみたいです。

今までは「自分の仕事に一生懸命取り組む」というスタンスでしたが、40歳のテーマはそれから一歩進んで「自分の作品を残す」ということ。「自分の生きた証として残したい作品になるのか？」を自問自答しながら、一つ一つの作品に責任を持って取り組みたいです。あとは、今までとは違う環境に身を置いて経験の数を増やしていくことも課題。40歳といえば人生折り返し地点、と考えてまとめに入るのではなく、ここから本当にやりたかったことに挑戦したいと思っています。