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【安静時や就寝中に痛む!】更年期女性の10人に1人が経験する胸痛とは?

胸が痛くなると、重篤な病気なのでは? 急に倒れてしまうのでは? など、様々な不安を感じてしまいますよね。実は、胸痛を引き起こす原因のひとつとして、更年期による体の変化が挙げられるのです。本記事は、胸痛で不安を感じている方に向けて、更年期による胸の痛みの特徴や原因、症状、受診の目安について解説します。

1:胸の痛みについて

更年期で胸痛を訴える方の症状はさまざまあります。胸内部の重苦しさや痛み、チクチク・ズキンズキンといった乳房の痛み、乳首のピリピリとした痛みは、更年期でよくみられる症状です。胸の痛みの原因は、マンモグラフィーや超音波検査で突き止められます。しかし、原因不明である場合は、ホルモンバランスの乱れで生じる不定愁訴である可能性が高いです。原因が判明したケースでは、ホルモンバランスの乱れによる「乳腺炎」や「微小血管狭心症」があります。乳腺炎の場合、痛みに伴ってしこりや乳房から母乳のような分泌液が出るなどの症状があります。微小血管狭心症は更年期の女性の約1割が発症する心臓病で、命に関わる疾患ではありません。ただし、放置は心不全を起こすリスクを高めるため、治療を受けましょう。

2:速やかに受診が必要な胸の痛みチェックリスト

微小血管狭心症のよくある症状・注意したい症状を紹介します。

【症状チェックリスト】
・突然激しい胸の痛みに襲われる
・締め付けられるような痛みが2〜3分続く
・急な息切れや呼吸困難がある
・痛む場所が移動する

ご自身の胸の痛みや体の状態と比較しながらセルフチェックをしてみましょう。

3:更年期の胸痛と受診の目安

更年期に胸の痛みを感じるケースとして乳腺炎などの可能性はありますが、自己判断せず受診することが大切です。もし、突然の激しい胸の痛みを感じた場合は救急医療に。乳房や乳首の腫れや赤みが見られる場合は婦人科医や乳腺外科医に。胸の圧迫感や苦悶感や息切れ、めまい、吐き気などがあらわれた場合は微小血管狭心症の可能性もあるので循環器科を受診しましょう。

4:更年期の狭心症対策

微小血管狭心症など、更年期が原因で起こる狭心症の予防策として、普段から気を付けておくべきことを5つ紹介します。

①食生活を見直す

栄養バランスが偏らないよう気をつけましょう。栄養バランスの偏りをなくすためには、主食、主菜、副菜が揃った定食の形を意識すると良いです。また、「イソフラボン」「ビタミン類」「食物繊維」の3つは特に意識してしっかりと摂取しましょう。

【イソフラボン】
イソフラボンは女性ホルモンに似た作用を持っています。閉経直前や閉経後はエストロゲンの分泌量が急激に減少するため、イソフラボンを積極的に摂取するよう心がけましょう。イソフラボンを摂取するのにおすすめの食材は大豆製品です。例えば、お味噌汁には必ず豆腐を入れる、夏は冷奴を食べるなど、簡単にできる方法で毎日摂るのがおすすめです。

【ビタミン類】
ビタミン類には抗酸化作用があります。特にビタミンE、ビタミンCは血管の若々しさを保つ作用があるため積極的に摂りたい栄養素です。ビタミンEを含む食材は、ナッツ類、かぼちゃ、鮭、サバなど、ビタミンCを含む食材は、いちご、柑橘類、さつまいもなどです。

【食物繊維】
食物繊維には血中コレステロール値を下げる作用があり、動脈硬化の予防にも役立ちます。食物繊維を含むおすすめ食材は、海藻類、ごぼう、いも類、こんにゃくなどです。

②喫煙や飲酒などの悪習慣をやめる

喫煙は「更年期症状を悪化させる」「血管を収縮させる」「動脈硬化のリスクを上げる」ことがわかっています。喫煙の習慣がある方はやめるようにしましょう。急にやめるのが難しければ、徐々に本数を減らすところから始めてみてください。一方、飲酒には「コレステロールの増加」「中性脂肪の増加」「骨粗しょう症の誘発」といったリスクがあるため、飲酒習慣がある方は改めましょう。お酒を飲む際は、たしなむ程度にしたり休肝日を作ったりするなどして摂取量をコントロールしてください。

③ストレスを溜めない

微小血管狭心症はストレスが原因で起こるともいわれているため、普段からリフレッシュする時間を作るように心がけましょう。短時間でも1人の時間を作ったりお楽しみタイムを作ったりするといった些細なことでも構いません。

④運動習慣をつける

運動習慣は、体の機能の向上や維持に役立つだけでなく、ストレス解消にも繋がります。強度が強く激しいものでなくて構いません。運動が苦手な方やこれまで運動をあまりしてこなかった方は「ストレッチ」や「散歩」など、体の負担が少ないものからはじめると良いです。

⑤漢方薬を飲む

更年期症状が気になる場合は、漢方薬を試してみるのもおすすめです。
漢方薬の中には、血流を良くしたり、自律神経やホルモンバランスの乱れを整えたりすることで、心身の不調の根本改善を目指せるものがあります。さらに、更年期によく起きるイライラや落ち込みなどの精神症状、腹痛や関節痛などの身体症状、ホットフラッシュやほてりなど血管に関する症状へのアプローチも可能です。

〈更年期の症状によく用いられる漢方薬〉

・加味逍遙散(かみしょうようさん)

肩が凝り、疲れやすく、いらいらしやすい方に。気(エネルギー)、血(栄養)の流れを整えて、体にこもった熱を冷ますことで、ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)、気分の落ち込みやイライラなど、幅広い更年期症状に用いられます。

・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

肩凝りや冷えのぼせが気になり、下腹部に圧痛のある方に。滞った血(栄養)を取り除くことで、生殖器系の機能を整えて痛みや炎症を取り去ります。頭痛、めまい、のぼせ、肩凝りなどの更年期障害に用いられます。

・桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

のぼせて便秘がちな方に。下腹部に滞った血(栄養)の流れを良くすることで、下腹部の熱を取り去り、更年期障害の他、下腹部や腰部の痛み、精神不安、イライラ、便秘に効果があります。

ただ、漢方薬はその人の体質に合っていてこそ効果が現れるものです。体質に合っていないと、効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。

5:更年期の微小血管狭心症による胸の痛みは治療が必要

更年期になると乳房の痛みなど様々な箇所で痛みを感じることがありますが、これらは基本的に治療する必要がない場合がほとんどです。しかし、胸の痛みは要注意で、微小血管狭心症が疑われる場合、放置すると心不全を起こす可能性もあるため必ず治療しなくてはなりません。少しでも気になる方は循環器科への受診をおすすめします。

神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。 症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行う。あんしん漢方(オンラインAI漢方)はこちら

 

編集/岡村宗勇

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