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【セックスレス AND THE CITY -女たちの告白-】きっかけは夫の鬱…アプリ不倫に走った「妻の言い訳」

日本では半数以上の夫婦が陥っていると言われるセックスレス。特にホルモンバランスが変化しやすいミドルエイジになるとより身近な問題になりがち。税理士の晶子さん(44歳、仮名)は夫・和也さん(40歳、仮名)のうつ病発症とともにセックスレスに。ストレスフルな生活に耐えかねてマッチングサイトに登録したそうです。

■4歳年下のミュージシャンに運命を感じた20代最後の年

晶子さんと和也さんが出会ったのは15年前、晶子さんが新卒で入社した税理士法人が協賛しているチャリティーコンサートの打ち上げの席。
「当時はまだ若手だった女性人気歌手の後ろでギターを弾いていたのが今の夫です。第一印象は『横顔のきれいな男の子だな』。一目惚れといえば一目惚れだったのかもしれません」。
アメリカの音楽大学を卒業し、20代は英会話講師をしながらバンド活動をしていたという和也さん。現在はゲーム音楽やドラマの劇伴楽曲の作曲や編曲、芸能人のライブや大手劇団での演奏活動などフリーランスの仕事を多く請け負っているそうです。
「お互い容姿が好みだったみたいで交際までは早かったです。向こうから食事に誘われ、2回目のデートで彼の家でカレーを作ってもらってその日は帰りませんでした。お互いフリーだったこともあり、阿吽の呼吸で付き合うことになりました」。

■結婚までは順調ではなかった。彼の職業がネックに

しかし女性が29歳で男性が25歳という微妙な年齢差もあり、結婚までは一波乱あったそう。
「海外転勤の多い家庭で育って大学もアメリカだった彼は愛の言葉を気軽に口にするほう。すぐに『君と結婚したいと思っている』『君の子供がほしいんだ』と言われましたが、いまいちリアリティがなく……。さらに問題だったのはうちの両親です」。
千葉で教師をしていた両親は厳格で「カタい資格」とされる税理士の取得も「東京での一人暮らしを許してもらいたかったから」という晶子さん。
「親はテレビに出ていない東京のミュージシャンがなにをしているのか、よくわからなくて怖かったんだと思います。それでも時間をかけて説得して、彼に会ってもらうことでようやく結婚を許してもらえました。一度会ってしまえば彼は爽やかな好青年なので」。
特に父親は、フリーランスの不安定な収入面についても心配していたそう。
「蓋を開けてみれば彼の父親は誰もが知る商社勤務で私の実家より裕福でしたし、彼自身も何社か安定した収入源を確保していたので安心したみたいです」。
最終的には和也さんの確定申告の書類のコピーまで見せて、結婚の許可をもらったとのこと。
「お互い家族を大切にしたかったので強行突破はせずに34歳と30歳で両家納得の上に籍を入れました」。

■レスの期間もスキンシップは大事にしていた

結婚2年目にして、女の子を出産した晶子さん。産前産後はセックスレスでしたが、和也さんはレスの期間でも「寝る時は妻とくっついていたい」タイプ。
「子供のベビーベッドにベビーモニターをつけて夫婦とは別部屋にしよう、と言われた時は、赤ちゃんが心配で同じ部屋にしてもらいましたけど。基本的に考え方が欧米風なので、夫婦のスキンシップは大事にするタイプでした」。
年齢相応に夫婦の性交渉の頻度は少なくなっていったそうですが、完全にレスにはならなかったのは住環境のおかげではないかと晶子さんは分析しています。
「結婚後に、千葉の実家の敷地内に音楽スタジオを地下に備えた3階建て住宅を建てました。地下にはトイレやシャワーも完備していて、籠もって楽曲制作をしたりレンタルスタジオとしても活用したりできるように設計したので、夫の城みたいになっています」。

当初は反対されていた結婚ですが、親しくなってみると晶子さんの母親はすっかり和也さんを気に入って新婚当初は平和そのもの。
「両親は新婚から妻の実家の敷地内同居に応じてくれた彼に感謝していたので、極力干渉しないようにしてくれていました。数ヶ月に1回はベビーシッターマッチングサイトを利用して夫婦だけでデートナイトを楽しんでみたり、結婚記念日には両親に娘を預けて外泊したり。そうしないとレスになるのがわかっていたので、意識的にロマンチックな雰囲気を作っていました」。
ミュージシャンは浮気をしがちという定説も気にしたことはないそう。
「夫が一度も浮気をしたことがないのかどうかなんて正直わかりません。ただ元々神経質な引きこもりタイプなので『平均的会社員よりは家にいてくれる時間が長いなぁ』とは思っています。掃除が好きで水回りは率先して掃除してくれましたし子育てにも協力的で浮気の気配は感じない。それだけで私的には満足でした」。

■コロナウイルスの蔓延で仕事がバタバタ中止に

そんな和也さんの様子に異変があったのは、新型コロナウイルス感染症の流行で緊急事態宣言が出された2020年。
「企画していたライブや有名劇団の公演での生演奏などが軒並み中止になり、バンドは専業音楽家と副業メンバーの意識の違いが浮き彫りになり解散しました。それでも助成金が出て、作曲の仕事や専門学校の講師は続けていたので生活費はいつも通り入れてくれていましたが、彼は目に見えて落ち込んでいました」。
まず、目の下のクマが濃くなったという和也さん。それから「部屋の中にカビがある」と異常な勢いで掃除をし始めて十分きれいな風呂場をゴシゴシと擦り続ける奇行も。心療内科でうつ病と不安障害の診断がおりて治療を開始。コロナ明けには奇行は落ち着きましたが、服薬は続けています。

「一見落ち着いたように見えても日常生活は不安定なままでした。仕事のない日は地下に籠もって何日も出てこないこともザラ。日常的に地下に布団を持ち込んで1人で眠る日々が続いています。仕事は自分のペースでがんばってくれていますが、家事や子育てはあまりできず、性交渉はまったくなくなりました」。
晶子さんからデートに誘っても気乗りしない様子で、娘が保育園のお泊り会で不在の日に抱きつくなどのスキンシップをとってみても「ごめん、体調が悪いし無理かもしれない」という消極的な返事が。
「両親も年でケアが必要ですし、ワンオペ育児と夫のメンタルケア……。口に出せないイライラがつのりました」。
急に涙が出たり無意識にSNSで昔の彼氏を検索したり、不穏な行動が増えてしまったという晶子さん。
「これはまずいと思って娘を預けて学生時代の女友達と飲みに行ったら、とあるマッチングサイトを教えられました」。

■マッチングサイトで出会った男性は「普通の人」

そのサービスは、公的身分証明書を使って身分確認を行う既婚者限定の会員制マッチングサイトで、有料ながら運営が介入することでトラブルを最小限に抑えているという触れ込みとのこと。
「まるで既婚者同士の結婚相談所。表向きは異性の友人探しという看板を掲げているんですけど。マッチングサイトのシステムは、ベビーシッターを探す時のそれとさほど変わりませんでした。写真をぼかして登録して1ヵ月ほどオンライン上で会話した男性と試しに食事に行ってみましたが、本当に普通の会社員。2つ年下のIT企業勤務の男性で、気の良い人でした」。

3回ほど休日に食事をして、彼とお互いの職場や家庭環境、求めていることについて話したという晶子さん。
「彼は『気晴らしがしたかっただけで家庭や子供が一番大事。下心はもちろんあるけれど晶子さん側が無理なら話すだけでもいい。時々、無性に家族以外の女性と話したくてしょうがない時があってそんな自分持て余している』と正直に話してくれました。嫌いなタイプではなかったし条件もマッチしたので、4回目のデートで昼間からホテルに行ってしまいました」。
今でもどうして自分がそこまで大胆な行動ができたのか分からないという晶子さん。ホテルでは当然のように性交渉がありましたが、カウンセリングのように愚痴を聞いてもらった時間が長かったそう。
「とにかく長時間男性と話がしたかったんだと思います。その後も数回お誘いがありましたが、忙しくて返事をしなかったら自然消滅しました」。

■アプリ不倫を経験してわかったことは

初めて浮気をしてしまったという晶子さんですが、そのことをきっかけにセックスレスでもスキンシップがなくとも情緒不安定な夫を平常心でケアできるようになったそうです。
「『なんであんなことをしちゃったんだろう』と考え出すといまだに謎です。性欲もあったかもしれませんが、『もう一生セックスができないの?』という恐怖感が根底にあって不安定になっていました。一度試して『その気になれば可能性はある』とわかったので、あれからマッチングアプリは使っていません。不倫云々以前にいくら慎重に身元確認をしてもネットで異性と出会うということに危険はつきものだと思うので、平常心ならできなかったですね」。
自分も不倫をしてしまったので、もしそれで夫のメンタルが整うなら彼が浮気をしてもかまわないと思っているという晶子さん。冷静になってみると病気や妊娠のリスクは恐ろしく、恋愛マッチングアプリではなくカウンセラーとのマッチングアプリを利用する手もあったかもしれないと少し後悔をしているそうです。

※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。

取材・文/星子 編集/根橋明日美

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