HEALTH

運動しなくちゃと思ったらまず「読むこと」から始めるのが正解です

運動を始めてもつらいし長続きしない……。その原因はきっと「知らなかった」から。ヘルシーな体型になるためには運動を始める前に〝気づきの言葉〟が必要です。

 

 

 

肩甲骨を寄せると若さのスイッチが入る

 

俳優が老け役を演じるとき、最初に作り込む場所は顔ではなく肩なんだそうです。年齢を重ねると、筋肉が衰えメリハリのない洋梨のようなボディラインになりますが、それを印象づける一番のパーツは肩。腕との境目がなくなり、脂肪が肘の上にたまり、Tシャツやノースリーブが似合わなくなります。お腹や脚に比べ、肩の老化にはノーマークの女性が多いのではないでしょうか。肩甲骨まわりが衰えれば猫背になり、猫背は胸が垂れ、肩凝りの原因にもなります。猫背を続けていると、高価な美容液を使っても追いつかないほど、シワやたるみが急速に進行します。猫背は日常生活で育まれてしまった体のクセです。しっかり肩甲骨を寄せることができるようになると自然に胸を張れるようになり、肩甲骨周辺の広い範囲の筋肉を使うことで代謝がアップします。まさに、次々と美しさをもたらす美のスイッチなんです。「肩甲骨を寄せる」という感覚がなければ、両方の手のひらを外側に回転させてみてください。肩をすくませるのではなく、逆に肩を落とし、肩甲骨をみぞおちの真後ろに寄せるイメージ。これをオフィスでも外出先でも、家事の合間でも、気がついたときに行うだけでも体は変わります。

 

 

 


 

 

思い込みの筋トレはゴールのないマラソン

 

私のジムに駆け込んでくる方のなかに、脚やお尻など体の気になるパーツを改善しようと厳しいトレーニングに時間を費やしてきたのに、成果が出ないどころかコンプレックスを増長させてしまったという方がいます。スクワットやランニングを頑張ったら余計に太ももやふくらはぎが太くなったとか、背中や胸を鍛えるはずが、腕や首まわりにボリュームがついてしまったとか。体のコンプレックスとは、生まれつきあったものではなく、日常の体のクセが原因であると知らないためです。そのクセを修正することなくトレーニングを重ねても、無駄な努力どころかコンプレックスを増長させることになってしまうだけ。昨今はトレーニングに関する情報が溢れているため、余計に「自分に合わない」トレーニングをしてしまうことも多いのです。見よう見まねのトレーニングはゴールのないマラソンです。それでは苦しいだけ。まず、なんのためにトレーニングするのか、つまり目標とする美しい体とはどういうものかをイメージすることが大事。目標を設定したら、なぜそうなっていないのかという自分の体のクセを見直し、それを解消する方法を見極めてから実践する。ボディメイキングに一番必要なのは、その気づきなのです。

 

 

 


 

 

どんなに走っても美しい体にはなれない

 

みなさんはどんな理由で運動していますか? ランニングが流行っているので何時間もかけて長距離を走っているという人も多いと思います。もちろん、走ることを趣味=スポーツととらえるならば、それでOK。気分は爽快ですし、大会へ参加するなど目標を持ててよい面もあります。ただし、健康のため、美容のためというのであれば、疑問が生じます。あなたが目指しているのは長距離ランナーの体型でしょうか? ボディメイキングという面からすると、欲しいところにはまったく筋肉が作られず、欲しくない部位がどんどん発達してしまうなど、有酸素運動ではボディラインのコントロールが残念ながらできません。また、ダイエットという点でも、1時間の運動をした場合の脂肪燃焼において有酸素運動と筋トレを比較すると、有酸素はその1時間のみ、筋トレは運動後も6時間燃焼効果が高まると言われているため、あまり効率的とは言えません。筋トレが有効だといっても、長時間運動をすると、筋肉までエネルギー源として消費され、逆に筋肉量が減ってしまうことも。運動を楽しむこと以上の効果を得るためには、正しい知識を持って、無駄なトレーニングをしないことが重要です。

 

 

 


 

 

パーソナルトレーナーなんていつか卒業するもの

 

「ここのジムは学校だと思って、いつか卒業するつもりで学んでくださいね」。ジムを初めて訪れる多くのお客様に私はこう言っています。悩みを抱えている体を、理想のスタイルへ削り上げるのが私の仕事、ですから、肩書きもボディスカルプターとしています。コンプレックスの原因となっている弱点、つまり体のクセに気づくこと、それを取り除き、最短距離で理想のボディラインを手に入れるトレーニング方法を身につけることを目的にセッションを行っています。だから、トレーニングを始める人には体を動かす前にまず、座学で知識と気づきを得ていただいているのです。ここで語っている言葉の多くは、そのときにお話しさせていただくことです。ボディメイキングは知識5割、運動5割。正しい知識なくして、理想の体型は得られません。そして、知識はリバウンドしません。出産であったり、仕事が忙しかったり、生活環境が変わってしまったり……、と一度手に入れた理想の体型が維持できないこともあります。それでも、正しい知識を身につけていれば、もう一度その体型を手に入れるために、それほど多くの労力は必要ありません、ボディメイキングの半分はすでに身についているのですから。

 

 

 


 

 

人が見ているのは体重計の数字じゃなくてシルエット

 

「あの人スタイルがいいね」と思ったとき、何を見てそう思いましたか? 決してその人の体重を連想したわけではなく、シルエットを見て判断したのですよね。人間は、知覚の80%以上を視覚から得ています。ところが、いざダイエットをしようと行動する場合、何kg太ったから、何kgやせよう、というように数値ばかりを気にしてしまいます。美しくなること=体重計の数値を下げることではなく、シルエットを磨くことです。3サイズを気にする女性は多いですが、同じヒップサイズでも丸くて持ち上がったお尻と、垂れて扁平なお尻とでは美しさの違いは歴然。数字というのは一人歩きしがちな幻です。脂肪より重い筋肉が多ければ、その分体重計の数値が大きくて当たり前。数字で美しさを判断することはできないのです。美しいシルエットは二等辺三角形で表現されます。全体のシルエットはもちろん、腕も脚もすべて逆三角形の二等辺三角形となることが理想的。アッパーバランスでシンメトリーなシルエットを人は美しいと感じます。さらに、体は3Dですから前からだけではなく、横からも、後ろからも二等辺三角形に。まずは、理想の全身像を明確に設定してから、トレーニングに取り組んでください。

 

 

 


 

 

タイトスカート&ヒールの女性がスクワットをすると脚が太くなる

 

タイトスカートのように骨盤をしめつける衣類を日常的に身につけている女性には、股関節が正常に機能せず、脚の動作にクセが生じて膝や足首に問題を抱える方も少なくありません。そのように生じた体のクセを考慮せず、例えば「細い脚になりたい!」といってスクワットを必死に行っても、脚の前側や外側に筋肉が張り出してしまい、脚が太くなるばかりで美脚にはなれません。女性は男性と比べると、ボディメイキングの土台となる股関節に悪影響を与える環境が多いのです。さらに、ヒールを履いたときに起こるつま先歩きによって、お尻の筋力が低下し、外側に広がったぺたんこ尻になりがち。本当に美しい脚を手に入れたいなら、股関節をまず正常に機能する状態に戻すことから始めなければなりません。運動をする前に自分の弱点を把握しておかないと、理想の結果には結びつかないのです。膝や足先だけでなく、歩くときは脚の付け根(股関節)から意識的に動かす習慣をつけ、夜寝る前には仰向けに寝て膝を伸ばしたまま両脚を90度に起こし、揃えて左右に下ろすストレッチをしてみてください。股関節を動かすことができれば下半身が巡り始めるはずです。

 

 

 

教えてくれたのは……ボディスカルプター 和久井 拓さん

PRO FIT.代表取締役。雑誌『VERY』で活躍するクリス-ウェブ 佳子さんをはじめ、多くのモデル、女優のパーソナルトレーナーとして活躍。初の著書『読むボディメーキング』¥1,200(光文社)発売中。

 

 

 

 

 

2018年『美ST』7月号掲載 
撮影/柴田文子 ヘア・メーク/吉村 純(LA DONNA) スタイリスト/柿田たみか 取材/中田ゆき、金子美智子

 

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