HEALTH
ふと気づいた小さなすり傷や切り傷が「以前よりも治るまでに時間がかかっているかも」と感じたことはありませんか? 傷の治りが遅い原因はさまざま考えられますが、糖尿病による高血糖が隠れているケースもあるため、注意が必要です。
【目次】
傷が治るには、免疫機能によって細菌の増殖を抑えるとともに、傷口周辺に酸素や栄養が十分に届いて新しい皮膚が作られる必要があります。しかし、日々の忙しさから睡眠不足の状態が続いたり過度なダイエットや偏った食事によって栄養不足が起こったりしていると、免疫機能の低下や傷の修復に必要な材料不足が起きやすくなります。
また、傷の治りにくさは糖尿病のサインの可能性もあります。糖尿病と傷の治りの関係について、次からくわしく見ていきましょう。
糖尿病で傷の治りが遅くなる理由には、糖尿病によって起こる血流障害・神経障害・免疫機能の低下が関係しています。
高血糖の状態が長期間続くと、血管に負担がかかって傷つき、動脈硬化を引き起こしやすくなります。
動脈硬化が進むと血液の通り道が狭くなり、血液がドロドロに。すると、傷をふさぐために必要な酸素や栄養、免疫細胞が届きにくくなり、皮膚の再生が遅れてしまうのです。
糖尿病による高血糖は、神経の細胞にもダメージを与えます。その結果、神経が鈍感になり、ものに触れる感覚が鈍くなります。しびれや痛みなどの感覚も鈍くなり、傷に気づくのが遅くなるのです。
特に、心臓から遠い足は神経障害の症状が出やすい部位。靴擦れや小さな傷の発見が遅れてしまい、傷への対応が遅くなることで結果的に傷の治りも遅くなりやすいのです。
高血糖の状態では免疫機能が低下しやすいことも、傷の治りにくさにつながる要因です。
細菌などを退治してくれる白血球の働きが悪くなり、傷口を治す力が弱まるとともに、傷口から細菌に感染しやすくなるのです。一度細菌に感染するとダメージの回復に時間がかかり、傷が治りにくくなります。
糖尿病は自覚症状がないまま進むこともありますが、進行して高血糖の状態が続くと以下のような症状があらわれやすくなります。
・喉が渇く
・尿の回数や量が増える
・疲れやすい
・体重が減る
・手足がしびれる
傷の治りが遅いこと以外にも、こうした変化があるときはすぐに医療機関に相談することが大切です。
糖尿病は重篤な合併症を引き起こす恐れのある病気です。症状に心当たりがある場合は、放置せずに医療機関を受診し、医師の指導のもとで治療に取り組む必要があります。
また、生活習慣の改善も大切です。ここでは、糖尿病の予防や改善のために日常生活の中で取り組むとよいことなどを紹介します。
糖尿病の基本的な対策として、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。食事は、主食を抜くよりも、主食・主菜・副菜をそろえて量を整えることが基本。ご飯やパンなどの主食、魚や肉、卵などの主菜、野菜やきのこ、海藻を使った副菜を組み合わせると、血糖値の急上昇を抑えながら、体に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルもとりやすくなります。
また、甘い飲み物やお菓子は量や頻度を決めて楽しむのがおすすめ。飲み物は糖分を含まないものを選ぶ、お菓子は食後のデザートだけにするなどの工夫をしましょう。
何を食べるかだけでなく、どのように食べるかも血糖値のコントロールには重要です。食事を始めるときは、野菜やきのこ、海藻など食物繊維を豊富に含む食材からとることで糖質の吸収をゆるやかにできます。
また、早食いは食べ過ぎを招きやすく、血糖値の上昇を招く要因に。一口ごとに箸を置く、噛む回数を増やすなどを意識すると、早食いを防ぎつつ満足感を高めることができます。
適度な運動もインスリンの働きを高め、血糖値の改善に役立ちます。おすすめは有酸素運動や筋トレです。
息が弾む程度のウォーキング、階段の上り下り、軽いスクワットなどを、無理のない範囲で続けましょう。特に、食事から1時間後に運動をすると食後の血糖値を改善する効果が期待できます。
運動習慣がない場合はいきなり長時間行わず、ストレッチやゆっくりした散歩から始めましょう。
ストレスケアも大切です。ストレスを感じると分泌されるコルチゾールには、血糖値を上げる働きがあります。コルチゾールが過度に分泌されることで、高血糖の状態になりやすくなるのです。
ストレスを完全になくすことは難しいため、こまめに発散する習慣をつくることが現実的。深呼吸をしながら歩く、好きな音楽を聴く、カラオケで声を出す、湯船でゆっくりお湯に浸かるなど、自分が心地よいと感じる方法を選びましょう。
糖尿病対策では、漢方薬による体質改善もおすすめです。漢方薬は直接血糖値を下げるものではありませんが、心と体のバランスを整えながら糖尿病に伴うさまざまな不調に内側から対応していきます。
糖尿病対策では「血流を改善する」「水分代謝をよくする」「体にこもった熱を冷ます」などの働きがある漢方薬が用いられます。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血流をよくする作用で体全体に栄養や潤いを行き渡らせるとともに、熱の偏りを改善してのぼせや下半身の冷えなどを改善する漢方薬です。湿疹や皮膚炎、肩こりなどにも用いられます。
・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
体を温めて水分代謝を高め、冷えや手足のしびれ、痛みなどを改善する漢方薬です。下半身のしびれや痛み、むくみなどに用いられます。
症状や体質によっては他の漢方薬が向いていることもあります。自分に合う漢方薬を知りたいなら、漢方薬に詳しい専門家に相談することが大切です。食事や運動などのセルフケアと組み合わせて、糖尿病になりにくい体を目指しましょう。
年齢とともに体のさまざまな機能が変化する中で、皮膚の再生力が衰えて傷が治りにくくなることがあります。ただし、傷の治りにくさには糖尿病や細菌感染、栄養不足などが関係している可能性もあるため「年齢のせい」と決めつけるのは禁物です。
傷が1〜2週間経っても治らない、赤みや腫れ、熱感がある、強い痛みがあるなどの場合は医療機関に相談しましょう。傷そのものを診てもらう場合は皮膚科や形成外科、糖尿病が心配という場合は内科で相談しましょう。
教えてくれたのは…医師 木村 眞樹子さん
編集/根橋明日美 写真・イラスト/PIXTAほか
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