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不妊治療は、男女両方にとって精神的・肉体的な負担が大きく、夫婦間における大変にデリケートな問題。しかし、子供を望むかどうかは、夫婦の問題でもあると同時に個人の人生の問題でもあります。もし夫に不妊治療を拒否されたら、離婚理由になるのか。その逆はどうなのか。アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に、法律上のポイントについてお話を伺いました。
協議離婚の場合は、いかなる理由であれ、お互いに離婚に合意できれば離婚できるので、不妊治療が拒否されたという理由でも問題なく離婚できます。。法定離婚事由には、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④強度の精神病、⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由、の5つがあります。
裁判で離婚を認めてもらうには、不妊治療の拒否が「⑤婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しなければなりません。また、これは、夫と妻どちらが拒否をしても同じです。しかし、この問題は非常に複雑です。まず、不妊それ自体は離婚事由とはならないと考えられます。なぜなら、男性不妊や女性不妊は、本人に責任があるわけではありません。子どもを持つことを希望していても難しいご夫婦もいれば、子どもを持つことを選ばないご夫婦もたくさんおり、結婚しても必ず子どもを授かることができるわけではありません。ですから、不妊を婚姻が継続しがたい重大な事由があるとは認めることは難しいといえます。
さらに、家族のありかたを決めるのは自己決定権の一つであり、結婚により子どもを持たなければならない義務が生じるわけではないので、相手の求めに応じて必ず不妊治療をしなければならないとまではいえません。また、不妊治療は精神的、肉体的、そして経済的にも負担が大きく、治療を受けたとしても必ずしも子どもを授かることができるとは限りません。そのため、夫婦間で子どもを持つかどうかや不妊治療を行うかに関する価値観の違いが生まれ、不妊治療に応じてくれないとしても、それだけでは離婚事由とはならないと考えます。
お互いに子どもを望んでいるご夫婦であっても、不妊や不妊治療に向き合う中で夫婦仲が次第に悪化してしまうこともままありますが、不妊治療の拒否がきっかけとなって、けんかが絶えず夫婦関係が冷えてしまい別居に至る、他の異性に安らぎを求めて不倫関係を持つようになるなど、他の事情があいまって離婚事由と認められることはありえます。
不妊治療の拒否を理由とする一般的な慰謝料相場を示すのは難しいですが、離婚慰謝料の相場が数十万円~200万円程度であるため、同程度の相場になると考えられます。
離婚の手続には、大きく分けて、夫婦の話し合いによる離婚(協議離婚、調停離婚)と、裁判所が離婚を認めるか判断する離婚(審判離婚、裁判離婚)があります。まず夫婦で話し合って、お互いに納得して離婚に合意できる場合は、離婚届を提出すれば離婚できます(協議離婚)。次に協議がまとまらない場合や夫婦関係が悪化していて当事者での協議が困難な場合は、家庭裁判所の調停を申立てます。
調停では、主に中立の立場の調停委員がお互いの言い分を聞いて、離婚の合意や条件面を調整していきます。調停で話がまとまれば離婚できます(調停離婚。条件面など些細な点が合意できず調停不成立のときは、家裁が離婚の成否や条件を判断する審判離婚となる場合もあります)。最後に、調停でも合意できないときは、裁判所に裁判を起こし、離婚するという判決をもらって強制的に離婚することになります。離婚裁判の平均期間は半年から2年くらいで、裁判所に離婚事由があると認めてもらうだけの証拠が必要ですし、審理が長期化する場合もあります。
まずは、セックスレスや不妊治療に関する問題が起きたときは、夫婦間で真摯に話し合うことが大切です。それでも離婚が避けられない場合は、具体的な離婚の話し合いをする前に一度弁護士に相談することをおすすめします。離婚事由に該当するかどうかはケースバイケースで判断が異なり、専門的な判断が必要だからです。離婚が認められるかどうか、慰謝料の有無、離婚時に決めるべきこと、準備すべきこと、手続きの流れや費用などを確認してから、どうするか冷静に判断するのが、後悔のない離婚につながるのではないでしょうか。
不妊治療に関する離婚は非常にデリケートな問題であるため、SNSなどの不確かな情報に惑わされず専門家に早期に相談することで、正確な情報を得ることができそうです。
弁護士 正木裕美(アディーレ法律事務所/愛知県弁護士会所属)。男女トラブル、夫婦問題、労働トラブルなどを多く扱う。過去「ザ・世界仰天ニュース」(日本テレビ)に出演のほか、現在は「ゴゴスマ -GO GO!Smile!-」(TBS系列)、「ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB」(文化放送)等のコメンテーターをはじめ、多数メディアに出演中。
取材/星子 編集/岡村宗勇
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