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晩婚化の波も進み、平均出産年齢が年々上がっている昨今。高齢出産が珍しくなくなった一方、年齢を重ねれば重ねるほど、妊娠率が低下することも知られています。今回は、不妊治療専門クリニック『はらメディカルクリニック』院長の宮﨑薫先生に、アラフォーからの不妊治療の基礎知識について伺いました。
妊娠は、排卵後の卵子と精子が出会い、受精することで起こります。妊娠できるのは排卵日であり、最も妊娠率が高いのは排卵日の2日前~前日の性交渉です。タイミング法とは医療機関で超音波と呼ばれる機械を使い、女性の排卵日を予想。医師より排卵日に基づいた性交渉すべき日を指導される方法です。40歳の女性がタイミング法で妊娠し出産する確率は約1%と考えられています。
人工授精とは、精子を子宮内に直接注入する方法です。一方、タイミング法は性交渉により精子が膣に射精され、その先は精子の力で子宮の中に進み、卵子と出会う方法。しかし、精液検査によって精子の数や運動率に問題が見つかった場合には、精子と卵子が出会うプロセスをショートカットするために、人工授精を選択します。そのため、人工授精を選択する基準は、精子の所見によって判断されます。精子所見が正常な場合、人工授精の有用性はタイミング法とほとんど変わりません(精子所見に問題が見つかった場合には有効性が高くなります)。また、精子所見に問題はなくても排卵日に夫が出張などでいない場合や、タイミング法を6周期以上行ったけれど妊娠せず、かつ体外受精へ進むのを躊躇する際に選択することもあります。40歳の女性が人工授精で妊娠し出産する確率は約1~3%と考えられています。
※タイミング法、人工授精ともに、妊娠の可能性を高める目的で、自力で排卵できる場合でも排卵誘発剤を用いたり、排卵日のズレをなくす目的で排卵するための薬を使用したり、卵子と精子が受精した後の着床環境を改善するために黄体補充剤を使うこともあります。
卵子を採卵手術によって体外に取り出し、体外の環境が整った容器で精子と受精させ、妊娠直前まで外で発育した受精卵を子宮に戻す方法です。妊娠するためのプロセスの大部分を体外で行うことができるため、最も妊娠率が高い方法です。40歳の女性が体外受精で妊娠し出産する確率は2020年日本全国平均で18%。このように、体外受精(顕微授精)という方法は、他の治療と比較すると妊娠・出産できる確率は上がります。しかしその分、通院回数が多く費用も高額に。また、体外受精をしても妊娠や出産が出来なかった場合の精神的な負担も高くなります。体外受精を検討する際には、各医療機関で実施している「体外受精説明会やセミナー」に参加し、通院スケジュールのこと、費用のこと、不成功だった時のサポート体制を確認してから開始しましょう。
アラフォー世代が不妊治療を始める場合は、妊娠率から考えると体外受精をおすすめすることになります。テレビやSNSでは、40歳以上の女性の妊娠を目にする機会も多く、今の時代、40歳以上でも妊娠しやすくなったのではないかと勘違いしてしまいますが、女性が妊娠し出産できる確率は、ここ数年変わっていません。
アラフォー世代の妊娠が難しい理由は、卵子の老化です。卵子の老化には2つの意味があります。精子は毎日新しく作られる細胞であるのに対し、卵子は生まれた時から持っており、その後増えることがない、限りある細胞です。卵子は女性の年齢に伴い数(在庫)が減少。卵子の数が減るとホルモンに反応できなくなり、排卵できずに消えてなくなる確率が上がります。また、卵子は生まれてから今日までの時間が長くなると、染色体と呼ばれるDNAの集合体に異常を発生させてしまいます。これを染色体異常といい、アラフォーの卵巣内に残っている卵子の大部分が染色体異常を起こしている場合があるのです。染色体異常を起こした卵子が精子と出会っても、受精しなかったり、受精後に育たなかったり、子宮に移植しても着床しなかったり、着床しても流産したりといったリスクの可能性があります。
アラフォーの場合、残っている卵子の中で染色体異常を起こさない卵子の数は少ないと言われています。だからこそ、効率的な治療を進めていかないと妊娠出産が難しくなります。不妊治療や体外受精は妊娠可能な年齢を上げることはできません。しかし、体外受精は妊娠するためのプロセスが効率的であり、タイミング法や人工授精よりも正常な卵子に出会う確率を上げる・体外の環境の良いところで受精させることが可能となるため、妊娠直前まで発育した受精卵を子宮に戻すことができます。
卵子凍結とは、将来の妊娠のために若いころの妊娠率が高い卵子を凍結保存しておく方法のことです。上のグラフの横軸のように年齢が上がると、青色の妊娠率が低下していることがわかります。また、反対に赤色の流産率は上昇します。この時、例えば34歳の頃に卵子凍結をすれば、その卵子を使う時期が40歳以上になっても34歳同等の妊娠率を期待することができるのが卵子凍結の意義です。
それでは、アラフォー世代にとって卵子凍結の意義は何でしょうか? 卵子の染色体異常の発生率は38歳頃からぐんと高くなり、40歳でまた上昇し、その後どんどん上昇します。染色体異常を有した卵子を将来のために凍結保存しても、将来その卵子で妊娠できる可能性は非常に低いです。そのため、将来の妊娠だけを考えると39歳以上の女性の卵子凍結はおすすめしません。しかし、実際は40歳以上の女性も多く卵子凍結を選択している現状があります。その理由は、妊娠率よりもQOLを優先する女性も多いため。卵子凍結のデメリットはコストです。卵子凍結をするために通院する時間と費用です。しかし、これ以外には特段デメリットはありません。コストに問題がない場合であれば、今が最も若い卵子なので、その卵子を凍結保存しておくことが今の生活への焦燥感を和らげることも分かっています。アラフォーの卵子凍結に重要なのは、デメリットと将来の妊娠率をしっかり理解することです。
顕微授精とは、卵子と精子を授精させる技術の名称です。卵子を採取し、精子と受精させる治療方法の総称は体外受精といいます。受精方法の中でも、シャーレの中で卵子と精子の自然な力で受精する方法を「コンベンショナルIVF」と言い、これを体外受精と呼ぶ場合もあります。他方で、卵子の状態が良くなかったり、精子の所見が悪い場合にはシャーレの中で自然に受精するのが難しいことが予想されます。そのような時に人が受精を手伝う方法を「ICSI(顕微授精)」と言います。これは、精子の中から見た目上最も良好と思う精子を顕微鏡下で受精させる方法です。コンベンショナルIVFとICSI(顕微授精)はどちらが良いのかという単純な判断はできません。両者に一長一短があり、卵子と精子次第で適応が異なります。
今年4月より、不妊治療は保険適用になり、保険診療の窓口の支払い額はこれまでの1/3以下になりました。保険診療の場合は、「高額療養費制度」が使えるため、女性の所得に応じて決められる保険医療費の上限額以上を支払った場合、後日返金されます。つまり、事実上毎月の支払額は高額療養費制度の上限額までということです。そして、保険診療と平行して行うことができる「先進医療」というさらに妊娠率を高めるための治療は、民間保険に加入している場合には先進医療給付金が支給されることがあります。さらに、東京都はこの度、先進医療を最大90万まで助成することを発表しました。東京都以外の都道府県や市区町村でも助成金制度をもっている自治体もあります。
しかし、保険適用には年齢と回数の制限があります。不妊治療の保険適用は、少子化対策として行われます。妊娠率は女性の年齢の上昇に伴い低下することから、公的資金導入となる保険適用は年齢と回数の制限があります。体外受精の場合、保険適用は、39歳までの女性で6回まで、40歳~42歳までの女性で3回まで。43歳以上は適用外です。タイミング法と人工授精は年齢と回数の制限はありません。
下記、2022年4月以降の不妊治療の保険・自費料金の一例です。(はらメディカルクリニック調べ *1)
保険診療での治療モデル
・タイミング療法
1周期合計 約5,550円
・人工授精
1周期合計 約15,710円
・薬をなるべく使わない体外受精モデル
採卵~胚移植 合計 約114,800円
(胚移植1回目が不成功の場合、再度採卵から行うため、2回目も同額程度の費用がかかります。)
・1採卵あたりの妊娠率を重視した体外受精モデル
採卵~胚移植 余剰胚4個 合計 約241,100円
(胚移植1回目が不成功の場合、胚移植2回目~余剰胚のある限りは「胚移植周期費用」のみかかります。)
ミドル世代の女性は社会経験も豊富で、これまで努力して、成功体験を積み重ねて充実した人生を送ってきた方が多いことと思われます。しかし、不妊治療は、自己コントロールはゼロの世界です。妊娠に最も影響を与えるのは卵子の質であり、生まれもった細胞であるため、食生活の影響はほとんど受けません。だからこそ、これから不妊治療を開始する人は自己流で生活改善をする前に少しでも早く不妊治療専門施設を受診してください。その際には、「生殖専門医」がいる専門施設を選択することをおすすめします。
上の表は著名な論文から表化された出産達成率別にみた妊活を開始すべき上限年齢の一覧です。子ども1人は絶対に欲しい場合、90%の行を見ますので、IVF(体外受精)であっても36歳までの開始が必要でした。出産率を75%まで下げると39歳までに体外受精を開始すれば可能な範囲になります。また、42歳までの開始なら子ども1人を50%の確立で授かることができます。妊活を考えている皆様の一日でも早い不妊治療専門施設への通院を応援しています。
ノースウェスタン大学産婦人科(米国シカゴ)研究助教授を経て、帰国後は生殖医療専門医として「最先端の医療で、最短の妊娠を」という方針のもと、患者様それぞれの身体の状態、さらには社会的状況などに応じて、患者様一人一人に合った治療にあたっている。
はらメディカルクリニックでは月1回、卵子凍結説明会を行っています。参加方法は来場とzoomの2通りあり、毎月参加者は100名を超えます。説明会の中でデメリットについて詳しく説明し、費用は各自でシミュレーションできるようになっています。体外受精の妊娠率・出産率は医療機関による差が大きいですが、はらメディカルクリニックの場合、2020年の40歳女性の出産率は25%です。
【参考URL】
(*1)はらメディカルクリニックの保険不妊治療の窓口支払い額: https://www.haramedical.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2022/03/price2022.4.pdf
取材/星野星子 編集/安岡祐太朗
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