PEOPLE
山本陽子さんと言えば、真っ先に思い浮かぶのが和服姿ですが、デニムにロングブーツ、レザージャケット姿で颯爽と現れたその若々しさは圧巻。第2の人生を楽しむために、東京から地方に移住して10年。〝80代が楽しみでたまらない〞と語る、そのポジティブシンキングの秘訣を伺いました。
冬はブーツですが、普段は7cmヒール。大好きなデニムは79歳の今までずっと穿き続けています。高価なジュエリーを纏うのは好きでなく、20代で購入したジョージ ジェンセンのシルバーのネックレスを重ねて、アルマーニのレザージャケットをサラリと羽織り、軽やかな女優の山本陽子さん。
《Profile》
’42年東京都出身。野村證券勤務を経て、’63年日活ニューフェイスとして芸能界入り。’94年舞台『おはん』で菊田一夫演劇賞受賞。上演回数は400回以上を記録。’06年舞台『いろどり橋』で名古屋演劇ペンクラブ賞受賞。数多くの映画、テレビ、舞台でも活躍し、幅広い役をこなす高視聴率女優として人気を博す。山本海苔店のCMモデルを長年務める。
以前から女優の大地真央さんのファンで、よく舞台を拝見させていただいていました。そうしたら、真央さん主演の舞台『夫婦漫才』で共演のお話が来て、飛び上がるほど嬉しかったですね。昨秋、ご一緒に全国4カ所公演を巡りました。ただ、コロナ禍で終演後に一緒に食事をしたりすることもきず、お部屋にご挨拶も伺えない状況でした。とても残念でしたが、毎日お目にかかって、同じ舞台に立てることはこの上ない喜びでした。
今年80歳を迎えます。みなさん「舞台は大変でしょう?」と、心配してくださるのですが、これはもう慣れですね。ただ、座敷に座って立ち上がるシーンがあって、「ひっくり返ったらどうしよう」と内心、冷や冷やしていました。でも、本番のセットがテーブルと椅子で、ほっとしました。未だにこうして元気にやっていられるのは、まずは健康だから。私の一番の財産だと思っています。
長年ウォーキングをしています。多いときは1万歩、少なくても7千歩は歩くようにしていますが、無理はしません。一日中、家にいるときもマンション内を5千歩は歩くようにしています。よほど荷物があるとき以外は、あえて階段を使っています。そうすると4階くらいまでなら平気で上がれます。でもちょっと怠けていたら、ふーふー辛くなる。歩くことも階段を上がることも何でもないことですが、少しでも毎日やっているからこそ、疲れずにできる。大事なことだと思います。
家では一日中立ったり座ったり。じっとしていることはありません。他人が見たらせわしないと思いますよ。でもやることがいっぱいあるのです。家事は全部自分でやります。掃除も洗濯も大好き。きれいになると気持ちがいいでしょ。だから面倒だとは思いません。目の中に入るものは全部好きなものを置いているんですね。そうするとホコリがついたらクロスで拭くし、掃除機もかけたくなるんです。自分が癒されること、幸せに感じることを家の中で見つけると、体は動くし、アンテナも張れるし、何より楽しいです。
道に咲いていたあの葉っぱを摘んで生けようか、お茶室には山茶花がいいな、来週は友人が遊びに来るから、前回はこの湯呑みで出したので、今回はあれにしようと、押入れから新しい器を出してきたり……。そんなふうに気を巡らしているのが好きなの。だから、長年ひとり暮らしですが、ひとりでも十分楽しいです。私はこれっていうことは何もできないけれど、日常の普通のことを毎日繰り返しやっています。
同様に特別なケアは何もしていないのだけど、唯一30年以上飲んでいるのが高麗人参。最初はロケ先で出合った大阪の「御幸の漢方」の高麗人参を45分間煎じて、少なくなったエキスを飲んでいました。初めて飲んだときに元気が出て、しゃきっとするのを感じ、欠かせないものになりました。その後、正官庄の高麗人参と出合い、韓国の畑を訪ね、優れた製品だと確信したので、6年前から変えています。一時期すっぽんを飲んでいましたが、高麗人参のほうが私には効果があるようです。ここのところ風邪も引きませんし、引いても数日で治るし、寝込むことはありません。調子が悪くなったことはあっても、入院や手術は一度もなく、更年期もまったくなかったです。
食事は毎日自炊です。コロナ禍以降の2年間は一度も外食をしていないですね。朝昼晩と作って食べていたら体重が増えて、今は1日2食、朝ごはんを食べたら2食目は16時にして、18時以降は食べないようにしています。体の調子も良くなり、ダイエットと健康を兼ねて。努力をしないとね。それでも40代の頃から10キロ程度太りました。
よく食べるのはブロッコリー、玉ねぎ、キャベツ、椎茸、納豆。夏はキュウリ、トマトも。絶対に欠かせないものが海苔。ご飯だけでなく、バターを塗ったパンの上にのせて食べたり、うどんやラーメンにも何にでも入れています。特に好きなものはわかめの酢の物。キュウリや人参、タコやかぶなど季節の物を一緒に和えて食べています。
今朝は炒飯を作ってきました。昨夜の残り物の鮭缶と人参の煮物に、ウインナーを刻み、玉ねぎと明太子を入れて。あとはオレンジ1個。毎朝メニューは変わります。冷蔵庫の中を見て、食べたいものを作っていますね。
料理は好きです。現役時代も撮影の合間に開いているスーパーに行って買い出しをし、現場の冷蔵庫にお願いして入れてもらっていました。OL時代に市ヶ谷にある江上トミさんの料理教室に通って基礎は覚えたんですよ。すべて目分量ですが、自分が美味しくいただけたらいいわけだから、手間暇かけずに楽しんでやっています。
40代はよく遊びました。恋愛に燃えている時期もあったし、ゴルフもよくやって、乗馬にも行きました。アクティブなことが大好きなんです。女優業も一番忙しい時期でしたが、お休みになると、恋人や友人と出かけていました。学生時代の友人、野村證券時代の友人ともいまだに続いています。
50代は人生の半ば。そろそろ一生の趣味になるようなことを始めたいと思ったとき、姉が絵をやっていたので、同じ先生のところに日本画を習いに行きました。もともと絵心がないから無理だと思っていたのですが、私に合った技法を教えてくださり、風景や果物、花を描きました。お気に入りの2作品を家にも飾っています。姉は丁寧ですが私はアバウト。先生はその個性を認めてくださって、教え方も上手で、1度だけ個展も開催しました。
60代は流されず、自分の中で流れに沿って人生を歩いて生きていこうと思ったときです。若い頃からそう思ってきましたが、60代はその思いがもっと強くなりました。日常生活はさざ波もあれば荒波もあって、緩やかな波もあるじゃないですか。それに沿って人生を進んで歩いていけば怖くありません。諦めたらだめです。流れに沿っていると必ず前は開けてくるから。
そうしているうちに70代になって、人生のいろいろなものを整理しようという気持ちになって、断捨離をしました。時代に合わせて役立つと聞き、撮影所の衣装部に旧い型のゴルフシューズやお洋服を引き取っていただいたり、先日も決心してピンヒールを20足くらい、友人のお店に引き取ってもらいました。シャネルなんかもあって、あっという間になくなったそうです。
でも捨てられないのが器。和、洋、クリスタルとセットで揃え、これでひとり暮らし?と驚かれるほどの量。大変なんだけど、まだ使っています。断捨離はし始めたけど、全部すっきりとはなかなかしないものですね。
振り返ると20代、30代も楽しかったですね。野村證券のOLから女優に転身して、数々のドラマや映画に出演しました。車が大好きで、憧れの赤のポルシェ911を買ったのも20代後半。日本女性でポルシェに乗る第一号でした。その後もいろいろ乗り換えましたが、30代の頃に初めて買ったジャガーをすごく気に入って、壊れては乗り換えを繰り返し、3台ほど乗り継ぎました。最後に購入したジャガーを30年以上経つ今でも持っていて、最近2年ほどかけてレストアしました。
その都度その年代ごとにいいことがあるんです。だから年をとることって怖くないです。人間誰もが年をとるし、最後は亡くなります。年をとったから私はダメではなくてね、年をとったことを生かせられるように、自分で努力しなくちゃね。
結婚しない人生でしたが、結婚できなかったことは宿命だと思っています。女優でも結婚したかったらしたと思うし、結婚したいと思う人はいたけれど、できなかったってことは縁がなかったのですね。でもしなかったのは私の性格というよりも、私の人生がそういうものなのだと捉えています。冬は寒いし、夏は暑いでしょ。寒いから嫌だって思うとそれでおしまい。寒くても暑くてもその中で耐えられる自分でいたい。結婚の時期を逸してひとりで生きてきたことは、それと同じことで、逆らわないのです。子どもも大好きで、子役と共演すると仲良くなって、その子たちが大きくなってからご飯を食べたりもします。自分の子どもはできなかったけれど、これも私が選んだ道。子どもがいなくてひとりで寂しい、これからの人生どうしようかとは考えません。そう考えると追い詰められて、ドツボにはまるから。冬は寒いのだからというふうに、宿命の中にいると思えば、その中で楽しく生きていけるし、家の中でひとりでも寂しいと感じないですね。
80代はどんな人生が待っているかわからないけれど、もし人に頼る人生だったら、その人生をまた自分が歩いていけばいいのです。だから、80歳になるのが楽しみでしょうがないです。
いろんな意味で落ち込まない性格です。でも辛さや苦しさは、もちろん感じます。台詞だって覚えるのはとても辛いけど、それができてしまうとまたやってしまう。恋愛が辛くて大変でも、自分で選んだ恋愛だし、次に出会いがある、と自分に言い聞かせれば、必ずまた出会えるんですよ。誰でも苦しさや悲しさは味わいます。でもそこにのめり込んでいると這い上がるのが大変です。だから嫌なことがあると「くよくよしない」と、自分に言い聞かせています。
美しさって、心を開くことだと思います。自分に対して、美しいと思うことです。私こそ、毎日ひどい格好して掃除しているけれど、ちゃんとメークをして髪を整え、大好きな洋服を着て鏡を見たとき、「美しくなれるんだわ」と自分で確認。心を開くとそれによって美しさも磨かれるのです。自分で自分の美を確認し、美を開いていくことが美への近道なのかしらね。
自分でできることは、まずは人の手を借りずに自分でやってみる。苦労することもあるかもしれないけれど、やっているうちに新しい発見があり、そこには新しい生活が待っています。
2022年『美ST』3月号掲載
撮影/佐藤航嗣(UM) ヘア・メーク/堀 ちほ スタイリスト/相澤美智子 取材・文/安田真里 編集/和田紀子
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