寺島しのぶさん（52歳）「息子の裏方に回って得た学びがある」歌舞伎俳優・眞秀さんを支える日々は

12歳となった初代尾上眞秀さんの母としても日々奮闘中の、俳優・寺島しのぶさん。「息子から日々学ぶことが本当に多くて」と語る寺島さんの子育てや、多忙な日々の中での自愛について、美ST本誌では掲載しきれなかったエピソードを公開します！

2023年に息子の眞秀（まほろ）が初代尾上眞秀として初舞台を踏みました。思い返せば私もその年の10月に座長として歌舞伎座の舞台に初めて立ったので、実はとてもメモリアルな1年だったんです。あまりにも目まぐるしくて人から言われるまで気づかなかったんですけれどね。「頑張れ！」と息子に言っていたのにその次には自分が立つことになったわけですから、人生っていうのは本当にわからないものだなぁと思います。
2025年もお正月から新国立劇場で上演している初春歌舞伎公演『彦山権現誓助剣（ひこさんごんげんちかいのすけだち）』で、眞秀は若武者役として出演しています。私も裏方として全力でサポートしていますが、息子のおかげで知ることが本当に多いと感じます。息子がお世話になっている方にお礼状を書いたりご挨拶周りをしたり。自分ではない人のことで、こんなにも有り難みを感じるということ。自然と頭が下がるんです。そんなふうに裏方として歌舞伎に接することで私の歌舞伎への愛がさらに深まったというのも、息子がいるからこそです。

積極的に促したわけではないのですが、息子は自然と歌舞伎に興味を持ち、今ではすっかり歌舞伎好きになりました。
ただ舞台には立っていますが、このままずっと歌舞伎役者でいなければいけないとはまったく思わないんです。息子は私の子供時代によく似ていて、広く浅く何でもやってみたいタイプ。何でもトライすればいい。方向転換も全然アリ。突き詰めるのは後でよくて、焦る必要なんかないんです。習い事にもお金はかかりますが、「まかせろ！母ちゃん働くし！」という心意気で何とか踏ん張っているという感じです（笑）。

私は基本的に何においてもルール決めはしません。ルールを決めることで逆に「やらねば」とストレスになって、結局続かないことってありますよね。
私は今インスタグラムやスレッズなどSNSの更新を割としているんですが、それも頻度のルール化はしておらず「できるときにやる」という感じ。そうそう、SNSを通じて、いい意味で見栄を張ることを覚えました。人に見られると思うとちゃんとしますからね（笑）。なるべく継続できるように、逆に言えばできるタイミングを逃さないように常にアンテナを張ってはいます。

それは“休む”ということにおいてもそう。家庭のことと仕事の間を行ったり来たりし、定期的に決まったタイミングで休むことはほぼ不可能です。1週間ぶっ通しでてんやわんやなこともザラ。だからこそ「休める！」というタイミングを逃さないようにしているんです。
私にとっての最高の休息は「何もしない」こと。ヴァカンスなどがそうですが、目覚めたいときに目覚め、食べたいときに食べたいものを食べ、寝たいときに寝る。厳密に言うと何もしていないわけではないけれど、自分の気持ちに添って、自分に向き合う時間が最高のご褒美なんです。
あとは息子の稽古の送り迎えの間の一人ドライブの時間。大好きな音楽をかけ、ちょっと路肩に車を停めて物思いにふけったり。たった５分でも自分のためにそういう時間を持つことって、実はとっても重要なこと。せわしない毎日だからこそ、「今だ！」というタイミングを逃さないようにしています。

撮影／彦坂栄治（まきうらオフィス）　ヘア・メイク／立身 恵（CaNN）　スタイリスト／中井綾子（crêpe）　取材／キッカワ皆樹