PEOPLE
今年20代のラストイヤーである初代中村莟玉さん。2年前に芸能事務所に所属し、歌舞伎以外にも活動の場を広げています。「30代って、もっと大人だと思っていました(笑)」と語る莟玉さんの30代の青写真とは?今回の美STオンラインでは歌舞伎界の若手のホープ、中村莟玉さんにフォーカス。歌舞伎のみならず映像の世界にも進出する莟玉さんのこれからについて、たっぷりとお伺いしました!
《Profile》中村莟玉さん
1996年9月生まれ。東京都出身。歌舞伎俳優(屋号は高砂屋)。9歳の時に本名である森正琢磨の名前で初舞台を踏む。翌年の2006年に中村梅玉の部屋子となり、同年に中村梅丸を名のり本格的に歌舞伎俳優として歩み始める。その後2019年に人間国宝・中村梅玉の養子となり、初代中村莟玉と改名。立役、女方ともに勤め、歌舞伎界の枠を超え人気急上昇中の若手のホープ。2025年放映の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の西村屋万次郎役が記憶に新しい。今後ますます目が離せない存在。
◆公演情報
六月博多座大歌舞伎
公演日程:2026年6月2日(火)~22日(月)
昼の部 午前11時~
夜の部 午後3時45分~
劇場:博多座
第三回 高砂会
公演日程:2026年8月22日(土)17時、 23日(日)11時30分/16時30分
劇場:日本橋公会堂
30代の目標ですか?そうですねぇ、バリバリ働く30代でありたいと思っています(笑)。2年前に芸能事務所に所属させていただくことになり、去年は大河ドラマ「べらぼう」にも出演させていただきました。バラエティ番組にも時おり呼んでいただいて、歌舞伎以外の仕事も経験させていただいています。僕は高砂屋という一門にいるのですが、その一門の礎を築いたのは六代目中村歌右衛門です。歌右衛門は僕の養祖父にあたり、歌舞伎一筋で歌舞伎以外の舞台や映像の仕事は一切しませんでした。養父の梅玉も同様なので、映像とは縁のない一門だと思っていたのですが、僕が十代で梅丸だった時代にドラマのオファーがあって、梅玉から「受けておいたから」と事後連絡が(笑)。ドラマの仕事なんて受けてしまったら、一門のやり方から外れるんじゃないのかと戸惑いましたが、「私はそうは思わないし、何が歌舞伎に活きるかは歌右衛門の時代と今では違う。お声がけいただける内が華だから、自分から制限をかけるのはもったいない」と梅玉に言われ、それならと覚悟を決めて臨んでみたら、それがすごく楽しくて勉強になったんです。歌舞伎以外の仕事で得たものは、きっと歌舞伎に活きると思いますから、今はとにかくなんでもやってみたいですね。自分がどんな分野に向いていて、どんな風に歌舞伎界のために動けるのか、それを30代で模索していきたいと思っています。
今年の1月に行われた新春浅草歌舞伎では、昼の部に「藤娘」を、夜の部では「男女道成寺」の舞踊をさせていただきました。僕は芝居も好きですが、舞踊も好きなんです。舞踊は、観てくださる方も踊りたい気持ちにさせることが大事で、そのためには踊る側がそれを好きでいないといけない。だから舞踊好きで良かったと思います。今回の「藤娘」は歌右衛門のやり方でやらせていただきました。歌右衛門は一門の誇りですし、歌右衛門が創り上げた作品を残せる機会も大切にしたいし、何より莟玉という名前をいただいた以上は挑戦したい大きな壁だと思っています。
今回の浅草歌舞伎では急遽の代役という、あまり経験できないこともありました。夜の部の「傾城反魂香」という演目の女房おとくというお役です。「傾城反魂香」の内容はもちろん知っていますし、別のお役で出演したこともありますが、おとくは初役でした。代役の知らせは当日の朝、10時頃に電話があって、僕は丁度会場である浅草公会堂に向かっている途中だったんです。お引き受けし、すぐにスマートフォンで過去の舞台映像を観ながら劇場に向かいました。本当に便利な世の中になりましたよね。劇場に着いて、着替え、年始のお年玉挨拶をし、昼の部の「藤娘」の支度をしつつ過去の舞台映像を観続け、夜の部の開場までの間にお相手役の橋之助さん(中村橋之助さん)と段取りの確認をし、いざ出番。朝に代役の電話をもらってから、大体出るまで5時間くらいでしょうか。恐怖感ですか?それは今回の代役に限らず、どの公演でも恐怖感はあるんですよ。逆に何と言うか、急遽の代役なので、セリフや動きを間違えても誰からも怒られないだろう、という気持ちでしたね(笑)。梅玉は同時期に歌舞伎座公演に出ていたので僕の代役は観ていないのですが、代役となった初日に電話がかかってきたんです。それどころじゃなかったので電話に出られず、公演後に折り返したら、「あなたが代役をやると聞いたので。知ってるかな?と思って」と。「知ってますよ!というかもうやりましたよ!」と言ったら「ああそう、お疲れ様」って言われました(笑)。
歌舞伎は敷居が高くて難しそう、と思っていらっしゃる方も多いと思いますが、ストーリーをわからないとつまらないという考え方は一度捨てていただきたいと思います。歌舞伎のストーリーって、現代の価値観では理解できないことも多いんです。なので「感じる」ことが大事。物心つく前に歌舞伎に食いついた僕だって、理解したのではなく「感じて」好きになった訳で、それが今も続いているんです。合わなければもちろん無理をする必要はありませんが、せめて3回は観てほしいですね。歌舞伎には舞踊も古典も新作もあります。世話物や時代物などジャンルも豊富。義太夫や常磐津を楽しむも良し、煌びやかな衣裳を楽しむも良し。「コレは合うけどコレは合わない」で全然構いません!歌舞伎は役者を観に行く演劇とも言われていて、ただ再演を繰り返している訳ではなく、「この役者が演じるとどうなるか」が面白い。20代でやったお役を80代でやることもあって、そんな芸能は他にありません。「お客様が見たい役者でやるかどうか」が歌舞伎にはとても大事で、僕自身、100歳になっても歌舞伎に必要とされる役者でありたいと思っています。
撮影/佐藤容平 ヘア・メーク/森永瑠衣(mfn) スタイリスト/藤長祥平 取材/キッカワ皆樹 編集/西村公寿
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