PEOPLE
20代やアラサーの頃、女友達と夢中になった恋バナや婚活の話。でも年齢を重ねるにつれ、いつの間にか恋愛トークから遠ざかってしまった人も多いのでは。
大人の女性たちは、今どんな恋愛をしているのだろう。今回紹介するのは、40歳で愛する男性との離婚を経験し、恋に臆病になった45歳・沙苗のストーリー。
◆あわせて読みたい
【INDEX】
「沙苗さん! 本日はお越しいただきありがとうございます」
目黒の老舗ホテルで開かれた、部下の結婚式。純白のドレスに身を包み、穏やかな笑みを浮かべる30歳の新婦に、新郎が優しく寄り添っている。
45歳の沙苗にとって、結婚式に参列するのはずいぶん久しぶりだ。幸せそうなふたりを見ているうちに、胸の奥がじんわりと温かくなる。同時に、少しだけせつなくなった。
――10年前は、私もこんなふうに笑っていたんだよなあ。
元夫から突然離婚を切り出されたのは、沙苗が40歳のときだ。自分のことを愛していると心底信じていた相手の口から、「ほかに好きな女性がいるんだ」という言葉を聞いたときは、耳を疑った。
もともと彼からの猛アタックで始まった恋だった。付き合ってからも愛情表現はストレートで、「この人だけは自分を裏切らない」とずっと信じていた。それだけに、離婚で失ったのは夫だけではない。自分が愛されることへの自信まで一緒になくしてしまった気がするのだ。
離婚後、一度は再婚活をしようと奮起したことがある。ところが勇気を出して登録した審査制のマッチングアプリに、あっさり審査落ちした。年齢が原因なのかそれ以外のスペックなのかはわからないが、さらに自信をなくした。
離婚から5年。いいなと思う男性には何人か出会ったし、デートもしたけれど……。
――また信じてまた傷つくくらいなら、最初から恋なんてしない方がいいもんね。
現在、45歳。パートナーは欲しい気がするけれど、誰かと深い関係になるのが怖くて踏み込めずにいる。
「沙苗ちゃん、久しぶり!」
「奈緒子さん、お元気でしたか?」
奈緒子は沙苗の4歳年上で、前職時代の同僚だ。転勤でニューヨークへ渡った彼女が一時帰国することになり、久しぶりにふたりで飲むことになった。
久しぶりに会った奈緒子は、以前よりずっと生き生きとして、綺麗になっていた。もともとは化粧も薄く、あまり着飾るタイプではなかったのに、今日は真っ赤な口紅がとてもよく似合っている。
「奈緒子さん、もしかして彼氏できました?」
そう尋ねると、奈緒子は「ふふ」と意味深にほほ笑んだ。
「彼氏はできてないよ。でもニューヨークって、すごく出会いが多いの。性別問わず、友達はいっぱいできたかな」
妙に色っぽい奈緒子の笑顔に、思わずドキッとする。
「そういう沙苗ちゃんは? いい人できた?」
「私は……」
実は半年前から、月に一度ほどのペースで会っている年下の男性がいる。「友達以上、恋人未満」という、昔のドラマにでも出てきそうなフレーズがぴったりの微妙な関係だ。
「一緒にいて楽しいんですけどね。元夫と別れて以来、初めて男性に手料理を作ったんです。そしたらすごく喜んでくれて。それ以来、何度かご飯を作ってあげているんですけど……」
最初は、そんな時間が純粋に楽しかった。けれど最近になって、少しずつモヤモヤするようになった。
思い返してみれば、会おうと誘うのは自分からの方が多いし、約束も彼の都合に合わせてばかり。
「もしかして、気になっているのは私だけなんじゃないかと思えてきて……。彼、10歳も年下なんです。45歳にもなった女が積極的になったら痛いんじゃないかとか、おばさんがガツガツしてみっともないって思われないかなとか。いろいろ考えちゃって、最近は自分から連絡しないようにしてます」
口にしてしまえば、言葉は次々とあふれてくる。ところが奈緒子は、沙苗が何をそんなに悩んでいるのかわからない、とでもいうように首をかしげた。
「ニューヨークにいるとね、出会いもいっぱいあるし、みんなすごく自由なの。40歳だろうが50歳だろうが、みんなガンガン出会って、恋愛してるよ」
「50代も……!」
最近は特にブックバーが流行っていて、そういうところでいくらでも出会いがあるらしい。海外ドラマのような遠い世界に思えたが、自分と同世代の大人の男女が恋に積極的だという話に、沙苗は思わず前のめりになった。
「その彼だって、沙苗ちゃんが会いたいなら、会いたいって言えばいいじゃない。料理だって作りたいなら作ればいいんだよ」
「でも、それで都合のいい女になったら嫌じゃないですか」
「そうかな? 相手がどう思うかを先回りして、自分のやりたいこと我慢する方がもったいなくない?」
奈緒子があっけらかんと言うので、沙苗は拍子抜けする。
「そんなもんですかね? 彼、何考えてるかわからないところも多くて、振り回されてばかりで。自分とは合わない気もしてたんですけど」
「そもそも普通の人なんていないんだから。男なんてみんな多少は変わってる、くらいに思っておけばいいよ」
沙苗は思わず吹き出した。
「それ、雑すぎません?」
「いいの、いいの。細かいこと気にしてたら恋愛なんてできないって」
そのあともふたりで何杯かお酒を飲んで、ずっと笑い転げていた。「とにかく沙苗ちゃんは相手のことより、自分がどうしたいかをもう少し考えて」と言われた言葉を胸に、帰路についた。海外暮らしの彼女を労うつもりだったのに、逆に自分がパワーをわけてもらった気がする。
――次、いつ会おうか?
帰りの電車の中で、思い切って彼にLINEを送ってみる。連絡するべきかどうかずっとモヤモヤしていたのがばかばかしくなるほど、返事は意外にあっさり来た。
――来週末はどう?
それから3カ月が経った。
その後、彼とはどうなったかというと、今はもう連絡を取っていない。沙苗は自分から連絡するのをやめたのだ。
もともと気にしていた45歳という自分の年齢が原因ではない。
そもそも年齢差が気になる相手だったら、彼も最初から連絡しないだろうし、興味がない相手にわざわざ時間を割くこともしないはず。彼だって、会いたい相手だから何度も会おうとしたのだろう。ニューヨークで活発に恋愛をする男女の話に影響を受けたのか、あれほどネガティブだった考えは跡形もなく消えていた。しかし……。
――自分がしたいように、恋愛してみよう。
そう思った瞬間、はたと気づいてしまったのだ。彼が求めているのは、自分に合わせてくれて、料理を作ったり、あれこれ世話を焼いたりしてくれる女性なのかもしれない。一方の沙苗は、どちらかといえば甘えたい末っ子気質だ。
私たち、根本的に合わないのかも。そう気づいたら、恋心もすっと冷めていった。
再婚を急いでいるわけではないし、焦る必要はない。だったら50歳くらいまでを目標に、自分が本当に自分らしくいられる相手を探そう。そんなふうに思えたのだった。
関係は完全に終わってしまったが、不思議と未来は明るい気がする。
――そうだ。今日は、あのお店に寄ってみようかな。
仕事の帰り道、家の近くにある小さなワインバーの前でふと足を止めた。ワイン好きの沙苗が前から気になっていたものの、勇気がなくてなかなか入れずにいた店だ。
ぴたりと閉ざされた重厚な木の扉に、少し迷ってから手をかける。その向こうには新しい世界が広がっている気がした。
※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。
取材・文/小泉 幸 編集/岩崎利架 イメージ写真/PIXTA
HEALTH
PR
SKINCARE
PR
SKINCARE
PR
SKINCARE
PR
SKINCARE
PR
MAKE UP
PR
SKINCARE
PR
SKINCARE
PR
SKINCARE
PR
SKINCARE
PR
2026年10月15日(木)23:59まで
2026年10月31日(土)23:59
2026年10月15日(木)23:59まで
2026年9月16日(水)23:59まで