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日本では半数以上の夫婦が陥っているといわれるセックスレス。元CAで、現在は化粧品会社で働くほなみさん(仮名・39歳)は、夫と10歳の息子と都内のマンションで暮らす3人家族。セックスレス歴は約11年だそうですが、最近、夫のふとした言動から「そりゃレスになるよね」と妙に納得したと話します。
【INDEX】
ほなみさんは、弁護士の夫・護さん(仮名・42歳)と結婚12年目。知り合ったのは、ほなみさんが大学生のころの大学野球の応援だったそうです。
「私は吹奏楽サークルに入っていて野球の試合で演奏していたんです。夫は大学の先輩で、サークル仲間に紹介されました。友人期間が長かったんですが、私が社会人になってから再会して約3年半交際し、結婚。なまじ馴れ合いがあるので、長男が生まれた頃にはもう“同士”みたいな存在になっていました」
結婚後すぐに妊活を始めたというほなみさん。若いころから定期的な通院が必要な婦人科疾患があり、「子どもを望むなら早いほうがいいかもしれない」という思いが、新婚で妊活を始めるきっかけの一つになったそうです。
「マイペースで交際してある程度恋愛感情が落ち着いてから結婚したので、『できれば1人か2人は子どもが欲しいね』『将来的には共働きを考えているけど、いったん立ち仕事は辞めて妊活したい』といったことも結婚前に話し合っていました。不妊治療に力を入れている産婦人科に近いマンションを購入し、結婚してほどなく妊娠することができましたが、性交渉が“ミッション”のようになっていたことは否めません」
ほなみさんは、妊娠後期に常位胎盤早期剥離を起こし、緊急帝王切開で出産。産後に大量出血し、重度の貧血で輸血を受けることになったそうです。
「たまたま産院のエレベーターで倒れたので、すぐ治療してもらえてラッキーでした。でも全身状態が悪かったせいか、重い産後うつに。当時はまだ珍しかった産後ケア施設に3週間ほど母子入院したのですが、退院後も具合が悪い日が続きました」
ほなみさんの実家は自宅マンションの近くにあったため、実母のサポートを受けながら家で過ごすことに。
「向精神薬を服用していたため、ミルクで育てることになりました。幸い息子は元気に育ってくれましたが、私のうつ病は完治せず、とはいえ悪化もしないまま、『時折強い不安に襲われる』『狭い場所では心臓がバクバクする』といった症状が残っています。それでも頓服薬を使えば、子育ても仕事もできています」
産後、護さんはほなみさんのメンタルを気遣い、仕事が忙しい中でもミルクをつくり、夜中の授乳まで担当してくれたそうです。
「母にもとても世話になりましたが、母も病気をしたので夜は頼れませんでした。そのころはまだ液体ミルクがありませんでしたが、夫は真夜中に哺乳瓶を用意して粉ミルクをお湯で溶かし冷まして飲ませる作業を、本当に丁寧に続けてくれました」
赤ちゃんはほなみさんよりも、夫の護さんがあやすほうがよく泣きやんだと振り返ります。
「夫は有給休暇をフル活用してくれました。義父が代表を務める小さな法律事務所だったので、配慮してもらいやすかった面もあります」
護さんは哺乳瓶の消毒やおむつ替え、衛生管理まで看護師のように几帳面だったそうです。
「子どもが生まれてから3歳くらいまでは、私も夫も『パパとママ』というより『ママとママ』状態。性交渉なんて考えられませんでしたね。婦人科の女性医師にも『あなたから母乳が出そうね』と言われるくらいでした。“産後の恨みは一生”と言いますが、私はむしろ産後の感謝のほうが大きくて、『たまには気晴らしでもしてよ』と言いたくなるくらい夫には負担をかけてしまったと思っています」
そんなほなみさんですが、最近、夫とセックスレスになった理由について「そりゃそうだわ」と妙に納得するできごとがあったそうです。
「夫には結婚前から“推し”の女優さんがいるんです。同世代で、お美しいだけでなく、おもしろくて美意識も高いステキな人。夫は友人の結婚式でお見かけしたことがあるそうで『すごく気さくでオーラがあった』と話していました。いつもその女優さんの出演番組を名前で録画予約しているくらい大好きだったんです」
結婚前は「それならその女優さんを紹介してもらえば?」なんて、やきもちを焼いたこともあるというほなみさん。それに対する護さんの返事は、「そういうんじゃなくてほなみの好きなアニメキャラや男性声優みたいなもの。あくまで推しだから」だったそうです。
「そのうち私も『あの女優さんの映画、Netflixにあるよ』なんて教えるようになって、完全に夫婦公認の推しになっていました。そんな女優さんが少し前に授かり婚したんです。夫は落ち込んではいませんでしたが、『へぇ、お相手はこの人なんだ』と少しだけ寂しそうにしていました」
ほなみさんが気になったのは、その後の護さんの手のひらを返したような変化。
「急にその女優さんの出演番組を録画しなくなったんです。さらに彼女が載っている女性誌も、以前は読んだり保存したりしていたのに、『読む?』と渡したら『いや、もう美容雑誌を俺が読んでもさ(笑)』とそのまま処分されてしまいました」
驚いたほなみさんは、「え、結婚したってきれいじゃん。なんで?」と聞いてみたそう。
「夫は『だって妊娠している女優さんの雑誌を集めていたら、ちょっと怖くない?』と言ってきたんです。『じゃあ、出産したらまた雑誌を集めるの?』と聞くと、『いや、お母さんになったらもういいかな。もちろん今もステキだけどもう集めようとは思わない』と言っていて。私は、推しの男性声優さんに子どもがいてもまったく気にならないので、価値観の違いに驚きました」
冗談交じりに、「納得いかない。顔もスタイルも変わらないかもしれないのになんで?」と問い詰めたというほなみさん。
「本人も最初は『え?なんでだろ?』と考えていましたが、『例えばどんなに大人っぽい美人でも中学生アイドルは推せない。それと同じで、誰かの母親も推せない。尊敬したり応援したりはできるけど、もう雑誌を集めたりミーハーな目で見たりはできない。なんというか一線を引くべきというか、人として侵しがたい存在になるんだよね』と説明してくれました。モラルというより生理的な感覚なんだそうです」
その話を聞いたほなみさんは、「もしかして私も、あなたにとって“生理的に一線を引くべき”存在になったの?」と聞き返したくなったそうですが、「まあ、どうでもいいか」と途中でやめたそうです。
「お互い出会ったころのように配偶者へドキドキすることがない。でも、その代わりに尊敬や応援はできます。もしどちらかがセックスレスに不満を抱いたら、話し合って歩み寄れる関係であれば、それでいいのかなと思っています。私は今のところ、経済的にも生活にも満たされていますし、うつの治療にも気をとられがちで、セックスレスそのものに不満はありません」
「護さん側が不満を感じていたら?」と聞くと、ほなみさんはちょっと考え込んで話してくれました。
「私との間にそういう男女の関係を望むなら、『南の島にでも2人で行こうか』なんて歩み寄りますね。浮気なら『息子に影響がない気の迷い程度ならいいのでは』とも思います。逆に私側にも、そんな気の迷いがあっても夫婦関係は壊したくないです。どうして鷹揚になれるかというと、婦人科の医師に『2人ともママ』と笑われるくらい、産後育児に協力してくれた記憶があるからかもしれません」
※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。
取材・文/星子 編集/根橋明日美 イメージ写真/PIXTA
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