にしおかすみこさん（49歳）「認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父。3人とも家で見送りたい」

本来は大のおひとり様好きというにしおかすみこさん。認知症のお母様、ダウン症のお姉様、酔っ払いのお父様とひとつ屋根の下で生活する中で、どうしてもひとりになりたいときもあるのだとか。そんなときに向かう場所や、ふとした瞬間に脳裏を掠めるご家族の看取りについて――、美ST ONLINE限定でお話をうかがいました。

実家に帰って４年目ですが、東京での生活を懐かしく思うことはしょっちゅうです。もともと私はひとりでいることが大好き。本を読んだりすることもありますが、基本的に何にもしません。ジーッと、本当にただぼーっとしていて、部屋の人感センサーの電気が消えちゃうほど！その都度ようやく動くっていう（笑）。

そんなおひとり様生活からの実家生活。自分の部屋はあるとはいえ、母も姉もお構いなしに入ってくるので、ひとり暮らしを懐かしむことはしばしばですね。ひとりになりたーい！と思っても、お金がないからどこにも行けない（笑）。だからもしお金があれば、近所に家を買ったり部屋を借りたりして、私が実家に通うのがいいな、と思うことも。どうしてもひとりになりたいときは、夜はじっと我慢します。何せコンビニすらないんですから！昼なら東京に出ますね。意味もなく表参道まで行って、オシャレなカフェのテラス席でいい女を気取って、コーヒーを飲んだり。もはや私にとっては最寄りの非現実という感じ。ほんのちょっとの現実逃避です。

認知症の母も、ダウン症の姉も、酔っ払いの父も、幸いにして今は元気です。ですが年齢も年齢なので、家族を「見送る」ことに思いを巡らすことも。誰から倒れるんだろう？全員一気に倒れるのかな？とか――。でも何を想像しても、慌てている自分しか浮かばないんですよ。だから、今は日々のことでパンパンになっていることもあり、何も準備とかはしていなくて。その時になって、やっとジタバタするのかな、とは思っています。

ただ、できたら３人とも家で見送ってあげたいなと思っています。３人とも慣れ親しんだ家がとにかく大好きなんですよ。だから私の手に負えない状況になったとしても、施設に入居させるのではなくて、ヘルパーさんに来ていただいたりして、なるべく３人が家で過ごせるようにしてあげたいなと。あ！それとひとつ絶対に決めていることがあります。私が先に死なないということですね（笑）。

姉と私は、母が看護師として働いたお金で育ててもらったと言って過言ではありません。父は稼いだお金をお酒に使ってしまっていたので（笑）。

実家に帰ってから今までを振り返ってみてふと思うのは、もっと認知症について知っていればよかったなということです。知っていれば小さなことで面と向かって喧嘩することもなかったのかな、と。認知症って、長い人生をかけて少しずつなっていくものだと学びました。実家がゴミ屋敷になってしまう前に、自分の時間もなく自分以外のためにずっと頑張ってきた母のストレスがどれほどであったか、ちゃんと気づいてあげられたらよかったなぁと思います。
だからこそ一緒にいられる時間は母が楽しくいつも通りの生活が送れるよう、母の気持ちを尊重して、最期は、「まんざらでもない人生だった」と納得できるようにしてあげたいですね。

撮影／向山裕信（cheek one）　ヘア・メーク／橋泉朱　スタイリスト／中村智香子　取材／キッカワ皆樹　編集／浜野彩希