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まばたきしてもヨレず、「濡れツヤ」が続くアイカラーを開発 非晶質ポリプロピレンとポリウレタンの複合ゲルにより実現


 株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、透明性と平滑性をもつ非晶質ポリプロピレン(APOM)と、柔軟性をもつポリウレタンゲルを組み合わせることにより、まばたきしてもヨレない化粧もちと、「濡れツヤ」を演出する効果を両立させたアイカラーを開発しました(図1)。
 この研究成果は2023年7月16日発売のアイカラー「コスメデコルテ アイグロウジェム スキンシャドウ」(※1)に応用されます。
(※1)2023年6月16日発行ニュースリリース https://corp.kose.co.jp/ja/news/8102/

(仕上がりイメージ)              ※残存率は塗布直後をそれぞれ100%とした
             図1 開発したアイカラーのまばたきに対する化粧持ち効果の検証

研究の背景
 化粧直後の美しい仕上がりが長時間持続する化粧もちは、多くのメイクユーザーが求め続ける機能です。特に目もとは、1時間で約1,200回ものまばたきや表情変化により絶えず動いており、徐々に化粧膜が偏っていくことによる化粧くずれも起こり得るため、それに対応できる品質が求められています。
 一方、アイカラーにおいては、濡れたようなツヤ感のある商品が近年人気を集めています。この「濡れツヤ」を演出する効果を出すためには、液体のように透明で平滑な表面の化粧膜が必要になりますが、従来の液状油をワックスで固めるという製剤技術では、「濡れツヤ」を求めれば化粧もちが悪く、化粧もちを高めるとツヤが出ないというジレンマを抱えていました。
 そこで本研究では、「濡れツヤ」のある透明で平滑な表面でありながら、顔の動きにも崩れない化粧膜と、それを応用したアイカラーの開発に取り組みました。着目したのは、透明性と平滑性に優れる非晶質ポリプロピレン(APOM)と柔軟性をもつポリウレタンであり、これらを組み合わせることで目標品質の具現化を目指しました。

非晶質ポリプロピレン(APOM)とポリウレタンの複合ゲルの作製
 APOMは透明性、密着性、均一な膜形成に優れており、結晶性を持たないため、高配合により強度を高めても、透明性を維持できる特長をもっています。また、ポリウレタンは油剤を含むことで動きに追従するような柔軟なゲルを形成することができます。そこで、まずはこれらを組み合わせることで目もとの動きにも耐えられる柔軟なゲルの作製を検討しました。その結果、両者を特定の比率で共存させることで、それぞれを単独でゲル化したときよりも高い弾力を持つ複合ゲルを形成できることを見出しました(図2)。これはポリウレタンの構造内の疎水部分(水を弾く部分)にAPOMが密着することで補強されたためと考えられます(図3)。


     図2 複合ゲルの弾力             図3 複合ゲルの構造の模式図

図4 複合ゲルの透明性
 一方、「濡れツヤ」を出すためには化粧膜の高い透明性と表面の平滑性が重要となります。従来はそのための液状油を配合し、ワックスなどの強固な結晶構造で固めることで強度と化粧もちを保持する方法が取られていましたが、ロウソクの様に白濁して透明性が失われるという課題がありました。その点、今回のAPOMとポリウレタンを組み合わせた複合ゲルは結晶性を持たないため、強度を高めても透明性が維持されていることが分かりました(図4)。また、APOMがもつ表面平滑性や上記で示したような弾力性があるため、ツヤを出しつつ、まばたきなどの動きにも柔軟に対応できる効果が期待できます。

複合ゲルを応用したアイカラーの化粧持ち評価
作製した複合ゲルを応用したアイカラーを開発し、まばたきや時間経過によるアイカラーのヨレに対する化粧もち効果を検証しました。アイカラーをまぶたに塗布し、まばたきを連続して100回繰り返した後、1.5時間が経過した時点の外観評価と画像解析による残存率評価を行いました。
 その結果、ツヤを同程度に調整した比較処方では、試験後はアイカラーが筋むらになっており、残存率は47%でした。一方、今回の開発品では試験後も濡れツヤを含め、塗布直後の外観をほぼ維持しており、残存率は99%とほぼヨレがない結果でした(図1)。このことから、今回開発した複合ゲルにより、アイカラーの濡れツヤとまばたきなどの目もと特有の動きにもヨレない化粧もちを実現することができました。

今後の展望
 本研究により開発したAPOMとポリウレタンを組み合わせた複合ゲルは、濡れツヤとまばたきなどの動きにも崩れない化粧もち効果を両立できる技術であることが確認できました。この特性はツヤと化粧もちが必要な他の剤型でも応用できる技術と考えています。当社では今後も化粧品の機能向上につながる製剤開発を推進していきます。

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