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芥川賞受賞作家・綿矢りささんが美ST世代へ贈るメッセージをお届けします。誰もが避けて通ることのできない加齢による肌の変化。コスメも美容医療も日々進化を遂げるなか、私たちは肌や美容とどう向き合えばよいでしょうか?
◆美のプロからのメッセージはこちら
私が子供の頃、世の中には「若いお姉さん」と「おばさん」に明確な区切りがありました。当時流行語にもなった「オバタリアン」という言葉は、40〜50代の女性を指していました。そう名付けられた方たちには納得できない面もあっただろうけれど、逆に達観しているようにも、堂々としているようにも見えました。そして私もやがてその境地になるのだと思っていました。
でも、今の40〜50代にその言葉は到底当てはまりません。私も今もって達観とはほど遠く毎日を送っています。
子供の頃に漠然となりたいと思った「可愛いおばあちゃん」も、その当時は60代だったはず。現代は寿命も伸び、おばさんやおばあちゃんと呼ばれる年を迎えるのが、20歳もしかしたら30歳くらい先になるのかもしれません。つまり、そのぶんマラソンの時間が長くなり、努力しなくてはいけない時間が長くなったとも言えます。
もちろん今の40〜50代だって変化は感じているでしょう。私も40代になって、バストの位置が下がってきたとか、写真に写る顔の面積が昔より広いとか、鏡を見れば毛穴も気になります(そう、最近やっとプライマーがなんのためにあるのか、そのすごさに気づきました)。
昔に比べると、きれいになるための情報も手段も増え続けています。以前は化粧品やエステしかなかったけれど、今は美容医療も身近になりました。10年くらい前、私が30代前半の頃に『美ST』のボトックスやレーザーの記事を見て、「プチ整形」と言われた一種の禁忌が解放されていくのがとても嬉しく、興味をもって読んでいました。しかし今では、シミを消さないでいるのは女を捨てている、たしなみに欠ける、という気持ちすら芽生え、若く見える同世代と比べて、自分もそうしなければならないという無形の圧力が世の中にあります。
「ありのままの自分が好き」ということが一番強いのかもしれません。でも「このシワやほうれい線が気になる」「こんな肌の荒れた自分は好きじゃない」というのも、また本当の気持ちです。30代の頃、私もボトックスなどの美容医療を受けましたが、こんなに痛みに弱い私ができたのは、やっぱり「きれいになりたい」という気持ちがあったからこそ。ありのままの自分を愛する以上に、もっと努力して美しくなりたい、と思う気持ち、それは悪いことではありません。
先日、70代のある先輩女性とご一緒した時、その方が私の話に興味を持って、ワクワクした表情で耳を傾けてくださり、とてもとても素敵でした。何かに興味津々な時の輝く目や表情は本当に魅力的で、その人の美しさを引き出すものなのですね。
美容に邁進している女性も、まさにそんな表情をしているように思えます。試行錯誤してこんなこともあんなこともやった、これもやってみよう! という気持ちに若々しさを感じます。自分が目指しているところとは遠い、と感じる時もあるでしょうが、努力されている方というのは、それでもう十分きれいなんだと思うんですよ。努力自体を諦めるという選択もある年代で、それを続けること自体がすでに美しいんじゃないかと思います。今、『美ST』を開いて読んでいることだって若さの表れ。自分に関心を持つこと自体が素敵だし、そんな女性に私は憧れを持っています。
本来老化は耐えがたい苦しみであることは否定できません。でも元気づけ合ったり、笑い飛ばしたりしてみんなで共有できたらいい。美しさを求め続けることを苦しいマラソンだと思わず、これからも美容と楽しく向き合っていく。その楽しいという気持ちを持ち続けることが、何より重要だと思います。(談)
綿矢りささん
撮影/深野未季
1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞受賞。早稲田大学在学中の2004年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞。最新刊『激しく煌めく短い命』(文藝春秋)は4年にわたる連載をまとめた著者史上最長の小説。京都と東京を舞台に、女性二人の20年近くにわたる関係と、心の奥に潜む繊細な感情、移り変わる季節や風景の描写が、圧倒的な筆力で描かれる。
本記事は、美ST編集部が取材・編集しました。「美ST」は16年以上にわたり、40代&50代女性の美容とライフスタイルを追求してきた月刊美容誌です。
『美ST』2025年12月号掲載
撮影/寺田茉布(LOVABLE) モデル/橋本マナミ ヘア・メーク/ AYA(TRIVAL) スタイリスト/中村真弓 取材/大山真理子
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