SKINCARE
有難いことに私は、化粧品の開発者に直接話を聞く機会が多々あって、そういう人たちの全身全霊の仕事ぶりにはいつも感動させられる。そのたびに、日本のモノづくりは本物、日本の化粧品って凄いと心を揺さぶられるのだ。昨今その感慨がいよいよ増してきて、だから今まさにJ -BEAUTYの時代という確信を新たにしている。しかも今にわかに「不老長寿」が現実味を増しているが、抗老化における日本の最先端研究もワクワクするような未来を見せてくれるから。
実際に人を10歳20歳若返らせる世界規模のコンペティションでは、準決勝進出で日本の大学や研究機関がアメリカに次ぐ第2位のチーム数を残す素晴らしい結果を出している。ましてやアメリカのように遺伝子治療やハイテク医療じゃなく、日本はオートファジーを高める健康茶や、和食や腸内環境に先端医療を組み合わせた長寿研究など、身近な方法が目立つが、それも富裕層だけが享受できる長寿では意味がない、いずれは社会全体がその恩恵を受けられる研究でないと……との発想からだという。そういうことにすら日本の温かみや思いやりがあぶり出され、何だか心がほっこりする。歴史的に極力〝格差〞を生まない世の中を目指してきた日本の精神性が最先端研究にも息づいているのは本当に喜ばしいこと。
そう、日本の化粧品にも同じような意思が感じられるのだ。例えば資生堂エリクシールのここ数年の製品は、エイジングケアの最先端を突っ走る驚くべき革新性を見せるのに、一方で日々のお手入れそのものを簡略化するためのスーパーマルチ化を同時に進めていて、何より信じられないくらいプライスを抑えている。最先端エイジングケアも美白も保湿もUVケアも化粧下地もトーンアップも凹凸欠点カバーも何もかもしてくれる最新作の「デーケアレボリューション」が、なんと3000円台?!これぞ化粧品の良心! と、頭が下がるばかりなのだ。資生堂は一方で70年前から粛々と濃いアザ用のカバーメイク「ライフクオリティー メイクアップ」を作り続けていて、そのカバー力もまた驚くほど先進的。肌に深い悩みを抱える人への慈愛と情熱に満ちている。声高にそれを主張しない利他の心に触れるたび、日本の化粧品の優しさに心が震えるほど。
同様に、日本の敏感肌用コスメの素晴らしさもそうした精神性から来たものなのだろう。まず、ドモホルンリンクルやファンケルのように、敏感肌用ではないものの敏感肌も含めた肌の健康と真摯に取り組んできたブランドは黙々と研究を続けてきた結果、今や不老長寿研究の最先端ブランドへと躍り出た。また、健常肌があえて選ぶほど魅力的な敏感肌対応コスメは、ディセンシアやキュレルのようにもはや新たなジャンルを作るほどの存在感を放っている。
実は最も感動したのがキュレルのボディケア「バスタイム モイストバリアクリーム」で、バスルームの壁に吊るしたまま濡れた肌に使い、水分をそのまま潤いバリアとしてラッピングするクリーム。1回目から見違える肌になり、その恐るべき使い勝手の良さも含めて驚かされた。まさに至れり尽くせりの日本的な献身を感じる製品。ふと思うのは、日本のいわゆる100円ショップの製品の優秀性が世界で驚かれているのも、100円でも決して手抜きをしない職人気質と日本人特有の奉仕の精神があるからこそ実現するもの。同様に日本のプチプラもただ可愛く安いだけではない、魂込めて作ったものをここまで安く提供するのは実力と思いやりの合作としみじみ思い知らされる。日本製品の品質の良さも決して真面目だからだけじゃない、実力と優しさの賜物、なのである。
でも全く逆に、高級化粧品もまた日本の誇り。これほどプチプラが優秀な時代に、あえて高価格をつけることの意味を考えてほしい。もちろん真の実力とそこへの自負がなければ高価格はつけられない時代、でも日本の高級コスメは高額であることへの強い責任感までを感じさせるのだ。「高いものほど効く」とはもう言い切れない、またブランド力だけで5万10万のクリームが売れるとは考えにくい市場、だからその分、なぜ高いのか? あらゆる点でそこに深い納得を生まなければという強い使命感を持つのが日本の高級コスメなのだと思う。つまり先進性でも品質でも、ボトルの底に至るまで、持てる財産をすべて注ぎ込み、完璧な製品を作ろうとする特別な開発魂がフル稼働するからこそ、日本が誇る高級コスメは、むしろリーズナブルと言っても良いほどの傑作となるのだ。ザ・ギンザやSK-Ⅱの金継ぎ、ポーラ B.A、クレ・ド・ポー ボーテ、コスメデコルテAQ、エピステームのステムサイエンス、アルビオンのエクシア アンべアージュ……その最高額品こそがJ -BEAUTYの象徴、日本のモノづくりの極みと言っても良いのではないだろうか。
そして私自身が今、日本の誇りとして1番スポットライトを当てたいのが、黒カネボウことKANEBOの存在。「美ではなく、希望を語る化粧品」と自ら言い切った。これはコスメ界の1つのタブーを打ち破る勇敢な行為だったと思うし、このメッセージが少なからず化粧品の意味を変え、事実人々に大きな希望を与えたのは間違いない。こんなメッセージを送れるブランドは世界広しといえども黒カネボウだけと、大拍手を送ったもの。その結果と言っても良いのだろう。2024年発売のルージュスターヴァイブラントが、売り上げをベースにするWWD BEAUTYのベストコスメEC部門 総合1位。発売してすぐに、名だたる百貨店ブランドを抑え大ヒット。デパコス口紅市場では、海外ハイブランドが上位を占める中、日本ブランドの口紅がここまで大ヒットしたことは、歴史がひっくり返ったという事件と言ってよかったし、意識を塗り換えるほどの強いメッセージにみんな飢えていたことを教えてくれた。だからさらに拍手を送りたくなったのである。さらに今年も「人は老いるのではなく成長するのだ」とのメッセージとともにエイジングケア化粧水、カネボウジェネレイティング エッセンシャルズをデビューさせ、うれしい衝撃をもたらした。老化を老化と捉えない心が、人を老化させないのだという極めて重要な気づきを与えてくれた。こういうふうに、新しい気づきで人々の価値観を変え、心を前向きに導いて、いつの間にか存在それ自体で人々を幸せにする、そういう化粧品こそが今こそ必要なのではないか。
美容医療の台頭、AIの進化が加速させる医学的抗老化……そんな中では化粧品も役割を変えていかざるを得ないが、他のものでは決して叶えられないのが、幸福感をもたらすことなのだろう。コスメデコルテはいち早く、幸せホルモン「オキシトシン」をスキンケアに応用したけれど、これはまさに化粧品にしかできないこと。心への働きかけはもちろんのこと、最先端のリフトケア効果によって表情そのものも幸せそうに見せたりすることが化粧品にはできると思う。その時、世界の先頭に立つのはやはりJ -BEAUTYであると思うのだ。優しさや穏やかさは、日本人にとって美しさのひとつ。脳科学的にも優しい人を美しいと感じる脳の働きと、見た目に美しいものを美しいと思う脳の働きは、全く一緒であることがわかってきている。つまり、見た目に美しいだけではない、内面も美しい人まで作ってしまう、そういう化粧品を作れるのはまずどこより日本なのだろう。J -BEAUTYこそが、いち早くそういう領域に行き着くに違いないのだ。人生100年どころか、120年人生もあり得ると言われる今、立ち振る舞いや表情や心の内まで美しい人を作る……それがJ -BEAUTYなら、この上なく素晴らしいことではないだろうか?
齋藤 薫
《Profile》
美容ジャーナリスト、エッセイスト。約半世紀にわたり美容界の第一線で活躍し、現在、美容論からマインドセットまで、知識、理論、感覚すべてに不動の信頼を寄せられる存在。
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