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齋藤 薫さんに伺いました。【ルッキズムフリー時代】の美人論

かつては絶対的な美を誇る人が憧れの対象でした。しかし今は表面的な美より、中身からにじみ出る人間性までしっかりと見られる時代。「美人」という誉め言葉より「いいね」の数が誇りの今、キレイに見せようとするより、本音をさらけ出せる人が本当の勝ち組になれます。美しさだけじゃない、本当の意味での自分の「売り」を探すべきときがやってきました。美容ジャーナリストの齋藤 薫さんに「いいね」がもらえる女性について伺いました。

いいねを得る境界線は、独りよがりでないこと。いつの間にか、誰かを救っていること!

昨今、「美人」という言葉の取り扱いが難しくなった。メディアによっては「美人」や「美女」という言葉そのものをNGとしているほど。毎年話題になる「世界の美しい顔100人」といったコンテンツに対し、異論を唱える声も年々大きくなり、水原希子さんが、ルッキズムそのものも含め「また始まった。本当に失礼」と痛烈に批判したことでも明らかに空気が変わり、ジェンダーフリー同様、ルックスフリーの時代に突入しているのだ。

しかし、いわゆるミスコンがなくなる気配はなく、人を見た目で順位付けするなんて!という批判は当然あるものの、これらはあえて美を競いたい人が自らがエントリーして行うレース。これからのミスコンはそれこそスポーツの大会のような位置づけになっていくのだろう。つまりカタチの美は、競いたい人だけが競う1つの種目に過ぎなくなっていく。だって、人の価値を測る種目は、もっと他にたくさんあるのだから。

そこでちょっとイメージしてみてほしい。あなたなら、どんな種目にエントリーするのだろう。どんなことならいいねをもらえるのかと。例えば笑顔も1つの種目!でも、ただの笑顔ではない。もちろん好感度を得るための意図的な笑顔でもない。人を包み込むように癒しをもたらす慈愛の笑顔。何だか心が浄化されるような〝人間クリーンビューティー〟とも言える作用がそこに生まれているのだ。

一方で、メンタルの弱さや悩み、失敗などを自ら語りだすことで「悩んでいるのは私だけではないのだ」と誰かを安堵させ、「生きるのが大変なのは私だけではないのだ」という共感性によって、〝間接的にでも誰かを救っている人〟がいいねを得ているのは確か。

同時にその人は透明な精神性でも評価を得ている。良いことも悪いことも隠さない。つまりあけすけに本音を語り、何も取り繕わないことが、人としての1つの清潔感につながるという時代でもあるのだろう。

多くの人が感じていることを、ズバリ言ってのけるキレのあるコメントで評価を得ているのが高橋真麻さん。世間や人の心を読む能力に加え、疑問や本音も上手に伝える才能が、同じ疑問や怒りを持っている人の溜飲を下げ、ストレスを軽減させて、やっぱりどこかで人を癒していると言ってもいい。

人の印象を決めるキモは、やはり言葉。他者に対してどう語りかけるか。明快な言葉でズバズバと物事を斬っていく人は、一見強気に見えるけれど、その結果、人を救えるのは、他人の気持ちに寄り添える〝しなやかな正義感〟を持つ人に他ならない。単なる自己主張ではなく、必ず他者の立場にたった主張であることを、見逃さないでほしいのだ。

いずれにせよいいねを得る1つの基準は、何であれ独りよがりではないこと。誰かのため、ひいては世のため他人のため、それが決してこれ見よがしではないことなのである。

ちなみに、料理や家事や片付けや子育て、もちろん美容も、日常的な義務をとても簡潔に楽しくこなせるものにしてくれた人々も皆、最大いいねをもらっている。結局のところ何かを学べたり、助けられたりすることがやはり評価の絶対条件なのだ。お笑いだって、突き詰めていけば人を楽にさせる人助けなのだから。

強い主張も、過激な提案も、個性的な自己表現も、すべてどこかで他者の役に立っていれば拍手を受ける。反対に、まるで自慢話のような発信は、いかに素晴らしい内容でもいいねはもらえない。それはもう決定的。そこに絶対の境界線があることに気づいてほしい。ちなみに、単なる美貌も人を助けない。あくまでも人を心地よくしたり、勇気づけたりする美しさでなければもはや意味がない時代なのだ。

だからこそ今は、いいねをもらう。どんな種目でもいい。これならば、人を救えるし、人を癒せるという自分なりのテーマを探してみたい。いいねをもらう生き方のために。

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2022年『美ST』3月号掲載
取材/安西繁美、柏崎恵理 編集/伊達敦子、佐久間朋子

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