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長年、料理の仕事に携わってきた〝ばあば〟のレシピには、知恵と工夫と愛情がいっぱい。あわただしい毎日を送る美ST世代に伝え遺したい、とっておきのひと皿を思い出のエピソードとともに教えてもらいました。
岩手県遠野市から70歳で上京し、世田谷に「みなと食堂」を開いた湊市子さん。元来、料理好きではあったものの、飲食店を切り盛りするのは、初めてのことでした。「私にできるのは、わが家の味を食べてもらうこと。煮物に和え物、卵焼き、から揚げなど、毎日、6~7品のおかずを作り、〝岩手のばあばの自由に盛り付け定食〟として、盛り付けはお客さんにお任せするスタイルで提供しました。どれも田舎の味なんだけれど、一人暮らしの若いコや、ご近所さんが、『懐かしい』『野菜がおいしい』と通ってくれて。私も若い人からパワーをもらいました」
料理が好きで、人が好き。市子さんの若さの理由はそのあたりにあるようです。そんな〝ばあば〟の得意料理のなかでも、これぞという一品が「ひっつみ汁」。野菜たっぷりで消化もよく、ひと椀で必要な栄養がバランスよく摂れる、岩手の郷土料理です。
「小麦粉をこねた生地を引っ摘む(手でちぎる)から、ひっつみ。もののない時代の料理ですが、手間もかかるし、現代ではちょっとしたごちそうですね。お盆などで親戚が集まるときは、大鍋いっぱいに作ります。おつゆの味は家庭によって違いますが、うちは醤油仕立て。具は、季節の野菜、山菜、きのこなど。山菜の塩漬け、干しきのこなどの保存食を使うこともあります。鶏ささみもわが家の定番。さっぱり・おだやかな旨みが出るんです。ひっつみの生地は、よくこねて2時間以上寝かせることで、つるつる・もちもちの食感になります。お客様にお出しする場合は、生地を別に茹でておき、最後におつゆと合わせると、おつゆが澄んだままできれい。味も上品に仕上がりますよ」
岩手県遠野市に生まれ育ち、26歳で結婚。一男一女を育て、夫を見送ったのち、2019年70歳で東京・世田谷へ。同年、松陰神社通り商店街に面する小さなアーケード街・共悦マーケットに「みなと食堂」をオープン。おふくろの味が評判となるも、老朽化に伴うマーケットの取り壊しにともない2021年9月閉店。現在は息子さんが経営する「麺屋かまし」を手伝っている。手作りの南蛮醤油は故郷の味。
ひっつみ
・すいとん粉(または強力粉)……200g
・水……150ml
おつゆ
・大根……中1/4本
・にんじん……1/2本
・ごぼう……1/2本
・まいたけ……1/2パック
・鶏ささみ……2本
・醤油……70ml
・かつお出汁……10カップ
塩……適宜
三つ葉……適量
①ひっつみの生地を作る。大きめのボウルにすいとん粉を入れ、水を少しずつ加えて粉となじませ、耳たぶくらいのやわらかさになるまで、よくこねる。こねるほどコシが出て、つるつる・もちもちとした食感になる。
②10分ほどこねたら、ひとまとめにし、ぬれぶきんを固く絞って生地をくるみ、ラップをして冷蔵庫で2時間~ひと晩寝かせる。
③おつゆの具材の下準備をする。大根、にんじんは、皮をむき、短冊切りに。ごぼうはささがきにする。まいたけは手で適当にさく。鶏ささみは、筋があれば取り、ひと口大に切る。
④大きい鍋にかつお出汁、鶏ささみ以外の具材を入れて火にかける。煮立ったら鶏ささみを加え、醤油を加える。味見をして足りなければ塩で調える。
⑤❷の生地を取り出し、ふたたびこねて、耳たぶくらいのやわらかさに戻す。粉(分量外)をつけた手で生地を引っ張って薄くのばし、ひと口大にちぎり、煮立ったおつゆに1つずつ入れていく。3分ほど煮込んだら器に盛り、刻んだ三つ葉を散らす。
残った生地は「かぼちゃだんご」に。かぼちゃをやわらかく煮たところに、ゆで小豆(加糖)を緑茶でのばして加え、別に茹でておいたひっつみを加えて、おやつに。
2022年『美ST』6月号掲載
撮影/須藤敬一 取材/伊藤由起 編集/小澤博子
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