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米倉涼子さん(47歳)「過去の栄光と闘うことは、もうやめました」

挑戦も失敗をも恐れずにキャリアを重ね、第一線で活躍する俳優の米倉涼子さん。美しく、自由に、そしてダイナミックに飛躍する姿から、私たちは勇気と英気をもらい続けてきました。そんな米倉さんの中にも弱い自分がいて、葛藤と困難をどう考え、どう乗り越えてきたのか。ありのまま、まっすぐに、語ってくれました。

乗り越えたい!という強い思いが自分を支えてくれる

最近まで、台風の目の中に身を置き、そこから抜け出せない状態でした。誰かが慰めてくれても、反抗的な気持ちになったり、逆に悲しくなったり、応援してほしいのに辛く感じたり、なのにどうして共感してくれないんだろうとか、いろんな想いが巡りに巡っちゃって。もう何を言われても、身体的にも肉体的にもほんとに辛くて苦しくて悲しくて。完全に私、沼にはまっていました。

そのままでいいなら、それを選んで生きていくのなら、案外その方が楽でストレスもなくなるのかもしれない。でもね、ストレスをなくしたら逆に私は終わる。そう気づいたとき、絶対にこの沼から這い出してやる、って小さな出口を見つけました。自分自身で。今も沼の途中ですが、自分で解決するしかないと悟ったときから、自分を支えられるようになりました。

《Profile》
’75年神奈川県出身。代表作にドラマ「交渉人〜THE NEGOTIATOR〜」「リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜」「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」など多数。Amazonオリジナル主演ドラマ『エンジェルフライト』が’23年春に配信予定。Netflixドラマ『新聞記者』配信中。ファンクラブサイト「よねさんち」https://yonesanchi.com

辛い腰痛も、いつか「あんな時期もあったね」と笑い飛ばせる日がくると信じて

5歳からクラシックバレエをやっていたせいか、腰痛や肉離れが原因で、小学校1年生のときから接骨院に通い、マッサージを受けたり遠赤外線治療をしていました。以来、腰痛歴は長いんです。それが今年の夏前頃から突如悪化し、今も冷えた鉄の棒が腰に入っているような感覚です。とにかく冷たくて、温めるとラクになれるけれど、体が曲がらないので湯船に浸かれず、レンジで温めるハーブ入りパットなどを常に腰に当てるようにしています。椅子に座りづらく、大好きなハイヒールなんてもってのほか。だからOOFOSのリカバリーサンダルが定番です。

鍼、お灸、整体、トリートメント……できることは全部しました。精神的にも辛くなって、更年期なのか、精神的な病気なのか、それとも持病の再発なのか病名もはっきりしません。更年期なら更年期、うつならうつって言いたいくらい(笑)。

以前から起床後すぐのサプリが習慣ですが、小さなお猪口に入れていたサプリが今は倍くらいになって、吐き気を感じるほどの量を飲んでいます。健康体でなくなって元気が出なくなるとこんなにも大変なんだって思い知らされました。そうすると母の顔が浮かんで、母ってすごい、同じ経験したかな、更年期っていつだったかな、って改めて感謝の気持ちが湧くようになりました。母は私が出演する番組を見て、「あの言葉使いは良くないわよ」とアドバイスをくれる程度で、ほとんど何も言わないのですが、最近は「お願いだから、具合が悪い中で仕事をしないで」と言われます。

人との交流も若い頃より明らかに増えて、元気をもらったり、学んだり。同世代の女性と話す機会も増えました。周りには私に気を使わず、「その考えはおかしい」「それは違う」と自分の意見としてはっきり言ってくださる人間味のある方が多いので、ラッキーだと思います。「大丈夫ですよ」と軽く言われるのがいちばん嫌だもん。

一時期、自分のすべてを仕事に集中させ、人も仕事もいい出会いがあることに幸せを感じていたけど、今はそれよりも、自分を見つめ直すステージに入ってきているのかなって思います。これからどんな辛さと付き合っていくのか、さらに不安も増え、そうそう簡単に人生を楽しく過ごせないぞ、ということもわかってきました。

自分の心構えとして、もうちょっとクッション性を高める必要があることも感じています。肌もね、先日後輩と一緒に撮った写真を見たら、私も年齢を重ねたなぁと思いました。以前は超ズボラだったのでオールインワンで済ませ、シートパックもドラマのメーク時にする程度でしたが、最近は可愛いパッケージに惹かれて家でもするようになりました。

でも「もっとケアしないと」と思う反面、70代の鍼の先生が超美肌でお元気で、「何をしているんですか?」と聞くと、石鹸1つで体も髪も洗い、化粧水もつけないけれど、エアロビが趣味だとおっしゃるんです。動きを止めないことも大事なのかな。そうやってあれこれ考えすぎると、年を取るのって面倒臭いってつい思っちゃう。とはいえ、老化は生きている限り仕方がない。でも病気をしたからこそ、こういう思いを無駄にしてはいけないと思っています。生きるのは大変だけど、「あんな時期もあったね」と笑い飛ばせる日が来ることも、私、信じられるから。

振り返ると体調・体力ともに花だったのが35歳前後でした。まさに花の30代(笑)。ドラマ「ドクターX」の前身「ナサケの女~国税局査察官~」が放送された頃で、そのチームで「ドクターX」がスタート。国民的ドラマと言われていますが、決して私だけの力でなく、チームワークの素晴らしさやキャストの化学反応の巡り合わせです。幸運でしたね。

その頃が栄光かどうかはわからないけれど、「あの頃良かったな」と思うときもあるじゃないですか。でも戻りたくても戻れるわけではない。だから、過去の栄光と闘うことは止めました。よくターニングポイントを聞かれますが、それって1つじゃない。その都度、嬉しさ、悔しさ、辛さ、感謝のすべてが少しずつ積もって、岐路になるきっかけが起こるのだと思います。

だから事実としての過去よりも、積もることの方が大事なんじゃないかな。いろいろなことを諦められるようになれたのもここ最近。今まではどうしてもそれができなかった。もちろん、目標への諦めはないですよ。だけどすべてが完璧に順調に回ることはないし、どうにもできないこともある。諦める勇気を持つことも大事だとようやく気づきました。それってストレスでもあるでしょ。でも、そのストレスを受け入れて、重さを逆に跳ね返すことができれば一歩スタートできるんだと思います。

今夏47歳になり、50代を前に最大の目標は体を治すことだけど、今後どんな目標が生まれても、絶対に自分に負けたくありません。そのためにやることは、まず、自分に対して悔しいと思うこと。次に今の自分をどうにか超える。そして突き進む方法と一緒に歩んでくれる人も見つけ、エールを送ってくれる人を探すこと。私は後回しにするとすぐ忘れちゃうので、今だと思ったらすぐに動き始めます。来年は確かなものを摑んでいきたいですね。

実はこんな気持ちになったのは久しぶり。デビュー直後、「こうしてやる!」って決意した新鮮な気持ちが、また自分の中に湧いてきて。あの頃ほどのエネルギーはないですが、経験を積んだ今の私が、再び、2度目のスタートを切りたい。そんな気分です。え、再婚?全く考えてないですよ。忙しくて考える余地がない!結婚したら何かいいことあるんですか?あるなら教えてほしいし、あるんだったら考えてもいいかも(笑)。今はそれよりうちの可愛い子供達2人(愛犬)と抱き合っている方が幸せですね。

《衣装クレジット》
・赤ワンピース
コート¥198,000、ワンピース¥132,000(ともにヌメロ ヴェントゥーノ/イザ)ピアス「セルパンボエム」[YG×DIA]¥2,164,800(ブシュロン/ブシュロン クライアントサービス)

・白ニット
ニット¥159,500パンツ¥100,100(ともにヌメロ ヴェントゥーノ/イザ)スニーカー¥113,300(ロジェ ヴィヴィエ/ロジェ・ヴィヴィエ・ジャパン)ピアス[WG×DIA]¥767,800、リング[WG×アコヤパール×DIA]¥1,046,100、ブレスレット[WG×アコヤパール×DIA]¥655,600 すべて「ジョゼフィーヌ」(すべてショーメ)

・フリル付きワンピース
ワンピース¥418,000(フェンディ/フェンディ ジャパン)ピアス「ビー マイ ラブ」[PG×DIA]¥1,122,000(ショーメ)

・ストライプシャツ
シャツ¥154,000(フェンディ/フェンディ ジャパン)ピアス[WG×アクアプレーズ×DIA]¥522,500、リング(上)[WG×DIA]¥429,000、リング(下)[WG×アクアプレーズ]¥298,100 すべて「セルパンボエム」(すべてブシュロン/ブシュロン クライアントサービス)

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2023年『美ST』1月号掲載
撮影/曽根将樹(PEACE MONKEY) ヘア・メーク/奥原清一 スタイリスト/大沼こずえ(eleven.) ネイリスト/菅 実加子 取材/安田真里 編集/漢那美由紀

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