【連載小説】TOKYO「白肌」恋物語② 「傷が痛みに変わる前に……」年下男子からの誘いに躊躇する透子。2回目のデートの行方は?

美しい肌は人生さえも変えてくれるの? ふと使い始めた美白コスメをきっかけに始まった、43歳シングルマザー・五本木透子の「2度目の青春」ラブストーリー。
前回のあらすじ
五本木透子は高校生になる娘・心白(こはく)を持つ43歳シングルマザー。ある日、コーヒーショップにて20代の男性、四ッ谷サトルからLINEの交換を持ちかけられる。”男子からのLINE”に心をときめかせている、まさにそのとき、幼なじみの八代くんから10年ぶりの連絡が。さらに、女友達からもテニス仲間の二階堂さんまで紹介されることに。シミウスをきっかけに、いくつもの恋が同時に始まろうとしていた。

第2話 シミウスと恋のテフロン加工

週末に思い切って買ったテフロン加工のフライパンは、
油を引かなくてもオムレツも餃子もするする焼ける。

軽くて便利、ヘルシー。

重い道具なんてイマドキじゃない。
手軽に扱えて軽くて傷つきにくいほうがいいに決まっている。

でも、透子がウキウキ、気持ちが華やいでいるのはフライパンのせいだけではない。

シミウスを使うようになって肌も生まれ変わったみたいに透明感が出てきた。

トロリとみずみずしいジェルは使うたびに肌も透子の自信も満たしてくれる。


肌の調子がいいと何をするにも、心に♪マークが跳ねるような感じ。
自然と笑顔になって自分でも声が弾むのがわかる。


それと四ツ谷くんからのLINEも♪を増やしてくれる、生活のアクセント。


四ッ谷くんから

(おはよ)

(なにしてる?)

(おやすみ)

の定期LINEがマメに来るようになって2週間。

短くシンプルな、ザ・男の子LINE。屈託のない男の子。
ひらがなで話すようなひと。
携帯恋愛が初めての透子は、最初こそ即レスしていいものかどうか迷ったけれど、テンポよく返してくれる四ッ谷くんのLINEは毎日を鮮やかに色どってくれる。早朝の心白のお弁当作りも、通勤電車も、今までと同じ日常の風景も違って見えるのだ。

けれど、28歳から見てバツイチ・43歳の女性はどういう対象?

毎日くれる連絡とトキメキはずっと続くものなの?

どんどん気になってLINEのタイムラインを見てみると彼が投稿していたのは空の写真、アフリカのとうもろこし農園、西インドの畑と海岸線、キューバの町並みと美味しそうなキューバサンド。旅が好きなのだろうか? それも少し思想や革命の匂いのする海外が。

SNSの中の世界を巡っていたらスマホが鳴った。

(ラインじゃなくて)

(やっぱりあいたい)

その瞬間、自分の詮索を見透かされたようで心臓まで大きく鳴った。
“あいたい”という言葉、その4文字の破壊力にグラグラしてしまう。

2週間前、10年ぶりに連絡してきた八代くんも「久しぶりに会いたいです」と言ってくれるし、OL時代の友達が紹介してくれたテニスの達人、二階堂さんも「是非、近々会いたいですね。透子さんのお好きなものを食べに行きましょう」と言ってくれているけれど、

四ッ谷くんの

“あいたい”

の文字だけが心に刺さって不安になる。
刺さった傷の内側から自分が自分じゃなくなっていきそうで。

それでも、”あいたい”の4文字は潤いを引き出してくれる。

久しぶりに発動した恋愛スイッチ。

鏡の前で深呼吸してシミウスを肌にのせるとワントーン明るくなって
表情まで柔らかく満たされていく。

外側からはシミウスで、内側からはトキメキで。

キッチンのオリーブの木も最近は葉っぱが瑞々しい。
翌日、心白のリクエストにこたえて朝食はパンケーキ。

するする、ふわふわ。踊るようにパンケーキが焼きあがる。



出社すると、このハウジングメーカーに推薦してくれた先輩から

「インテリアコーディネーターの資格取得の学校に通ってみない? 会社から援助出すわよ」

との言葉。

返事にためらっていると「迷ってないでやってみるのよ。迷うってことは“なくはない”ってことでしょ。ほら」と資料を渡され、その重みがそんなにイヤじゃなかった。重みを喜んでいる手があった。明るさを取り戻しつつあるのは、肌だけじゃなかったのだ。

会社帰りに寄った駅ビルで白のスニーカーが目に入った。

何年も流行っていてみんなが履いているのは知ってたけれど、自分には6㎝ヒールが似合うと思って、心白の小学校の運動会以来、スニーカーを履いていなかった。でも、鏡の中の自分は案外悪くない。足元を変えるだけでこんなに気持ちまで軽やかになるなんて。

世界って自分が裏返そうと思ったら簡単にひっくりかえせるのかもしれない。

するりとひっくりかえせるパンケーキみたいに。

四ッ谷くんとのはじめての待ち合わせは中目黒の肉バル。

「やっとあえた」

先に着いていた四ッ谷くんが立ち上がると記憶よりもうんと背が高い。

「あれ? きょうはなんだかちいさいね」

「靴が」

「あ、スニーカーだから? それもにあうね」

LINEをしているうちに美化していたのかなと思ったけれど、本物は甘ったるい美化を軽く越えていた。つるっとよどみのない肌と髪。黒目もうるうるしていて、そのうるうるがじっと透子を見ている。


眩しすぎる。・・・これは幻想?


テーブルにおかれた長い指。


「そもそもなんだけど・・・カフェでどうして声かけてくれたの?」

「目、かな。たぶんあのカフェで会ったの、初めてじゃないと思う」

「懐かしい気がして、トウコさんが店に入ってきたときから目が離せなかった」


ビールを一口しか飲んでいないのに、その声に酔いそうになる。

出会ったとき、四ッ谷くんはコーヒーに詳しかったけれど、今日わかったのはビールやワインの博士でもあるということ。

「どうしてそんなに詳しいの?」

「大学時代、世界のあちこち旅をしたからかな」

スマホのカメラロールを見せてくれた。

キューバはサンチアゴ・デ・クーバにあるサトウキビ畑、コスタリカやエチオピアのコーヒー農園。

「ひょっとして四ツ谷くんってバリスタなの?」

「あはは。違うよ」

カメラロールをスクロールするとき、彼の背景にほんの一瞬映った工場のロゴが目にやきついた。

YOTSUYA

四国にある、あの有名な繊維メーカー?
ひょっとして実家がYOTSUYA? 彼は社長の息子? 

もしかして・・・御曹司??

「今日はごちそうさま。美味しかった!」

帰りがけにお礼のLINEをするついでに聞いてみた。

「そういえば四ッ谷くんって、実家は東京?」

「四国だよ」

またチクリと何かが刺さりそうになる。

傷が痛みに変わる前に自分がオトナなんだということを思い出さなければ。そう思うと四ッ谷くんの定期LINEに即レスできなくなっていった。

その変化に四ッ谷くんはすぐ反応した。


(どうしてガードしてるの?)

(おれのきもち、とどかないの?)


既読にできずに未読スル―してしまう。


(なんかムリしてがまんしてない?)

(おれはありのままのトウコさんがしりたい)

(おしえてよ。トウコさんがおもってること)

(ふたりでいっしょに感じようよ、これから、いろいろ)




捨てられなかった鉄のフライパンを取り出す。



やっぱり鉄のフライパンで作るオムレツは違う味。

「ママ、今日のオムレツ、味が戻ったね」

「そう? わかる?」

「うん、鉄分もとれるし、あたし、こっちのほうがいいや」



テフロン加工じゃなくても、恋はできるよね。

透子は、ふとそう思った。

重くても面倒臭くても私は私。それでいい。
傷も味になるし、味方にもなる。

透子が見てこなかった景色を、四ッ谷くんなら見せてくれるのかもしれない。
四ッ谷くんとシミウスが年齢差や歩いてきた人生の違いも埋めてくれるのかもしれない。


透子は数字がたまったLINEのアイコンを押した。


2回目のデートは麻布十番。

ムール貝が美味しいビストロ。

いつもの6cmヒールを鳴らしながら、
2つの影が夜の街に消えていった。

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シャツ、エプロン、アクセサリー(すべてスタイリスト私物)
文/笹行あや香 
小説家。大学卒業後、女性月刊誌ライターを経て作家に転身。複数のペンネームで美ST世代を主人公にした小説や、エンターテイメント系のコラムなどを執筆。美STには男性アイドルのカバーストーリーを寄稿している。現在、長編恋愛小説に取り組む。

撮影/須藤敬一 ヘア・メーク/SATOMI スタイリスト/Toriyama悦代(0ne8tokyo)

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