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更年期症状が出始める40代後半からは、少しずつその先にある閉経についても関心が高まってくる頃。今回の記事ではそもそも閉経とは体がどんな状態になったことを言うのか、判断基準や定義を含めて美ST世代の健康にどう関わってくるのかをまとめました。
閉経は月経がなくなったことを示しますが、日本産婦人科学会でつくられている定義は自然の状態で月経が来なくなることをいいます。
女性ホルモンは、妊娠・出産という繁殖活動だけではなく、女性の健康を支えるためにとても大切な役割を担っています。この女性ホルモンが産生されるのは卵巣で、卵巣は40歳を過ぎる頃から機能が少しずつ衰え始めます。女性ホルモンはそれに従って減少していき、段々と月経周期が不規則に。やがて閉経を迎えることとなります。
では具体的に、閉経とは体がどんな状態になった時のことをいうのでしょうか。対馬ルリ子女性ライフクリニック代表の産婦人科医・対馬ルリ子先生にお話をお伺いしました。
女性が自信を持って自分らしく生き、人生のクオリティを上げられるよう心と体のメンテナンスに寄り添ってくれる。年代別の検診メニューも充実している。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 中央区銀座2-6-5 銀座トレシャス7F ☎03-3538-0270
「閉経とは老化により卵巣の働きが失われ、月経がなくなって1年たったときに“1年前の最後に月経が来た時”を閉経と判断します。閉経状態の確認のために卵胞刺激ホルモン(FHS)と女性ホルモンエストロゲン(E2)の値を調べる血液検査を行うことがありますが、FHSは30〜40IU/mL以上、E2は10〜20pg/ml以下が閉経の判定目安になります。しかしこれにははっきりとした診断基準はありません。子宮を摘出した場合などは年齢や症状・ホルモン値などから総合的に判断します」(対馬先生)
「日本人の閉経年齢は50.5歳と言われていますが、そもそもの閉経の状態を示す定義は自然の状態で1年間月経がなかったときの最後の月経のことをいいます。閉経年齢については個人差が大きいですがほぼ45〜55歳の間です。初めての月経が来た年齢・分娩回数などはいずれも関係ありません。早い時期に閉経してしまう「早期閉経」について、多くは原因不明です」(対馬先生)
女性ホルモン(エストロゲン)の変化をグラフで見てみましょう。大塚製薬の調査では平均閉経年齢は52.1歳となっています。多くの方は40代後半〜50代前半で閉経を迎えると言えそうです。閉経の前後5年間を更年期と言いますが、40代前半から少しずつ女性ホルモンの減少が始まっているのがわかります。
40代で閉経を迎える人もいれば、50代後半まで月経がある人もいます。閉経を迎えるパターンはさまざまですが、多くは月経が不順になり出して1〜2年で閉経します。ここでは、あくまで一例として2つのパターンを挙げていきます。
まず30代後半〜40代前半にかけて、それまで周期が安定していた人でも少しずつ月経期間が短くなったり周期が乱れたりするなど、周期に変化が見られます。量が少なくなったり、一部無排卵月経になることもあります。やがて40代後半となり、どんどん周期が短くなるか、逆にダラダラと長く続くような、月経不順がより顕著になり、量も不安定になります。やがて月経の周期が2〜3か月に1回と減っていきます。そして51〜52歳で月経が来なくなりますが、1年以上が経った時に振り返って最後の月経が閉経とみなされます。
順調な月経期間だったのに、突然月経が止まり、そのまま1年以上来ず、(女性ホルモン値を検査してみると)閉経を迎えたと言うパターンもあります。
きちんとした月に1回の周期で来る月経以外の出血をすべて「不正出血」と呼びます。
「不正出血は、ホルモンのバランス異常により子宮内膜の細胞に変化が起こり、発生します。ですから、月経かそうでないか分からない不正出血、あるいはそもそも月経が不順になってから閉経5年以内の人は、毎年子宮体がんの検診を受けるか少なくとも超音波検査で子宮内膜の厚みや不整について診てもらいましょう。定期的に検診を受けることがベストです」(対馬先生)
リスク因子とされるものには、出産経験がない・肥満・月経不順・エストロゲン製剤を服用しているなどが挙げられますが、そもそもすべての現代女性は子宮体がんのリスクが高まっています。出産数が少ない・ホルモンバランスが悪い・高血圧肥満糖尿病などが関係しているため、低容量ピルを服用している人は子宮体がんのリスクは半分になります。
閉経前後10年の間に女性の心身にはさまざまな不調が起こりやすくなります。それが更年期症状です。更年期とは、閉経前5年から後5年までの計10年間を言いますので、期間はおおよそ45〜46歳から55〜56歳くらいと言えます。この時期にはホルモンバランスの乱れからさまざまな不調が起こります。
「女性ホルモンはもともと大きく揺れ動いていますが、卵巣の中の卵が少なくなり、脳からの排卵指令に反応できなくなると、自律神経や感情が不安定になります。のぼせ、発汗、動悸や胃腸症状などの自律神経症状と、イライラや抗うつ、情緒不安定や不眠などの感情、情動の不安定がよくあらわれる症状ですが、その他にも、手指の関節痛や倦怠感、易疲労、めまいやふわふわ感、皮フのかゆみや乾燥、頻尿や尿意の切迫などさまざまな症状が出ます」(対馬先生)
閉経前後に感じた不調と症状のTOP10は以下になります。
・のぼせ、多汗、ホットフラッシュ
・イライラ、落ち込み、抑うつ
・だるい、疲れやすい
・肩こり、首こり、背中の痛み、腰痛
・頭痛、腹痛などの痛み
・手指のこわばり、痛み
・めまい、ふらつき、浮遊感
・肌の乾燥、かゆみ
・眠りが浅い、不眠
・膣乾燥、性交痛
(『閉経のホントがわかる本』対馬ルリ子著、吉川千明著より)
閉経の前後に起こる多様な症状を総称して更年期症状といい、普段の生活が不自由なほど症状がひどくなった状態を更年期障害と呼びます。
ここでは、実際に閉経を迎えた先輩たちにどんな体の変化があったのか、どのようにして体の不調と付き合っていったのか、閉経後のライフスタイルの変化などを聞いてみました。
37歳の頃、子宮頸がんになり治療をした後から2日目などは1時間でナプキンがタプタプになってしまう量になりました。月経前緊張症もあり、生理痛や排卵痛も痛み止めが効かなくて。生理は47歳頃から量や日数もかなりまちまちになりました。50歳を過ぎ、年一ぐらいに思い出したようにやって来る生理は初日から経血量が多いので、常にパンティーライナーを付け準備していました。52歳の終わり頃に閉経し、今のところ更年期障害はありません。もし兆候がみられたら受け入れて治療をしようと思っています。歳はみんな取るので体の老化は認めて、労わることが大切だと思います。
\閉経してよかったことは?/
経血の量が多かった時は、仕事中に座ると立った時にドバッと出るのが怖くて座ることもできませんでした。司会という性質上、ミスが許されないのですが、閉経後は頭痛や腰痛からも解放され、仕事により集中できるようになりました。
20代の頃からずっと18日周期5日間でしたが、婦人科の先生から周期は人それぞれなので特に問題ないと言われました。46歳頃から周期が乱れ始めましたが、薄〜いだらだらが10日間、2週間、1カ月と続いた時にはがんが心配で2回病院に行きました。一度「閉経?」と思い調べてもらった時は違いました。その後はいきなり1週間で来たり、1カ月、2カ月なくて「閉経?」と思ったら来たり。最後は2カ月以上来なくなり検査をすると、ホルモン値が下がっているので1年なかったら閉経と言われ、そのまま来なくて現在に至ります。
\閉経してよかったことは?/
生理に振り回されずとにかく楽です♪ 18日周期だと、ほぼ生理前・生理中・生理後なので、今までいろいろ気になっていたことがなくなり、とにかく楽です。タヒチアンダンス教室に気兼ねなく楽しんで通えるようになりました。
50歳頃からかなり不順になり、いつ来るかがわからないので常にバッグに生理用品を準備してました。周期が2〜3カ月に1度になり、もう終わりかと思うと久々にやってきたりで油断なりませんでした。昨年秋頃からないので、もう閉経したのだと思ってます。周りの方もやはり、周期がバラバラで1カ月に2回来たり、3カ月振りにやってきたりを何度か繰り返して時間をかけて終わるので、あまり気にせず気長に考えたほうが良いと思います。人それぞれ違うのかと思いますが、自然消滅的なのは他の方も似ていると思います。
\閉経してよかったことは?/
いろいろなミセスコンテストに出場させていただいているのですが、体のラインが出るような白いドレスやバレエの衣装を着ることもあり、生理の時は心配でしたが今は安心して臨むことができます。
閉経2〜3年前は頭痛、イライラを解消するためホルモン注射を時々処方してもらいました。私は生理のサイクルがもともと28日でしたが、47歳頃から24〜20日になってきました。 少なくて半端な出血がダラダラ続いて不快でした。頭痛や出血による貧血も気になり、東長崎の「しのざきクリニック」を受診。ホルモンバランスと骨密度の検査を受け、不快な症状を抑えるホルモン注射をすると症状は収まりました。日常生活に差し障りがあったらお医者さまに相談して、自分に合った処方をされると良いと思います。
\閉経してよかったことは?/
病気ではないのだから、あまり気にすることはありません。終わってしまえば何の不快感もありませんよ。今ではパワースポットの山を登りに広島まで行くなど、アクティブに楽しく過ごしています。
「生理がなくなると女性じゃなくなるようで……」という声を聞きますが、「女子」の「子」の部分は子供を作ること、つまり妊娠する可能性があるということだと思っています。生理がなくなって妊娠する可能性がなくなり、この「子」が取れて女になる。生理がなくなってからが本物の「女」になれるってこと、とポジティブに捉えています。閉経4年前から生理周期が短くなってきて“だらだら生理”にもなり、婦人科を受診しました。閉経してからは女性ホルモンを整える意味で納豆やオリーブオイルを料理に活用しています。
\閉経してよかったことは?/
生理中は旅行に行っても温泉に入れなかったり下着が汚れたりしないかなと心配でした。ちょうど子育てから手が離れる時期の人が多いので「さぁ、今から自分のことをしよう!」って話しています。
閉経をまだ迎えていない人も、「もしかして始まった?」と感じている人も、これから起こる体の変化、心(情緒)や機能(加齢)の変化に不安を抱いている方は多いはず。ここでは、閉経を安心して乗り越えるために今からできることを3つ挙げていきますので、ぜひ実践してみてくださいね。
生活習慣病のリスクは、更年期以降急増していきます。例えば妊娠中に血圧が高い・尿糖が陽性だった妊婦の方は、将来的に高血圧などの生活習慣病のリスクがあります。更年期にも健やかな生活を送るためにも更年期前から健康を気遣うことはとても重要になっていきます。
更年期は時期です。症状がある人もいれば、ない人もいます。どんな不安や疑問でも話しやすい医師やアドバイザーのいる、自分と相性の合うかかりつけ医を見つけて、ずっとサポートしてもらえる環境を整えておきましょう。
閉経期は女性ホルモンの量が減少することで、さまざまな病気のリスクが高まります。しかしエストロゲン低下は必ずすべての人に起こり、症状がなくても女性ホルモンの守りがなくなれば生活習慣病、甲状腺機能低下、関節変形、胃腸障害、骨粗しょう症などのリスクが必ず高くなります。エネルギー代謝や骨の代謝、肌や髪の毛の状態も変化してくるため、より代謝や消化吸収が低下します。更年期症状をひどくしないためにも、心身機能を整えるために必要な栄養素をしっかり摂るこが重要です。
骨を強化するカルシウムやビタミンD、ビタミンB、Cやカロテン、鉄や亜鉛やマグネシウム、肌や髪の状態を改善するコラーゲン、ハリと潤いを保つオメガ3や更年期症状を緩和させると言われている植物性エストロゲン、などを適切に摂るようにしましょう。自然と太りやすくなる時期でもあるので食べ過ぎには気をつけましょう。
栄養をしっかり摂っていないとますますパワーが出なくなり、ときに見た目にも衰えます。食生活をこれまで以上にしっかり見直すことを意識してみてください。
閉経が近づき卵巣機能が低下すると、女性ホルモンが減少し、自律神経が乱れます。自律神経は交感神経と副交感神経の2つに分類されます。体温を上げる・興奮する・心拍数が上がる等、交感神経が優位な状態に対し、副交感神経が優位に働くとリラックスした状態で心拍数が減る・眠くなるなどの変化が起こります。
この2つのバランスが乱れることで更年期の不快症状が続くことになるため、自分なりに自律神経の整え方を身につけておくと良いでしょう。
自律神経を安定させるには、リズムのある運動・良質な睡眠・深呼吸(横隔膜をよく動かす複式呼吸)の他、目的に合ったサプリや漢方で体質改善を図ることも効果的です。
閉経について基本的な知識や症状の説明、閉経を迎えた先輩の体験談などをまとめましたがいかがでしたでしょうか?
閉経とは女性ホルモンが減ってほぼゼロになる転換期を指します。閉経前には女性ホルモンがありますが、閉経後にはありません。月経に悩まされていた時に比べて悩みから解放されて華やかで充実した生活を送られている方も多いものです。人生における新たなライフステージと捉えて、知識を持ち、ヘルスリテラシーを上げて素敵に歳を重ねていきたいですね。
撮影/大瀬智和(人物)、大槻誠一(静物) ヘア・メーク/久保フユミ(ROI) 取材/菊池真理子
2019年『美ST』1月号に加筆修正
取材/門脇才知有 再構成/長谷川 智
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