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日本では夫婦の半数以上がセックスレスだといわれています。理学療法士の正恵さん(仮名・54歳)は、総合商社勤務の大河さん(仮名・54歳)と結婚30年目。「たぶん四半世紀くらいセックスレス」だそうですが、「レス云々より仲のいい老後」を目指し、「定年後に2人で手をつなげる楽しい生活」を目指しているといいます。
正恵さんと大河さんは高校の軽音楽部で出会い、大河さんからの告白をきっかけに交際がスタート。青春時代をともに過ごした仲です。
「高校時代は家族ぐるみで仲良くしていました。初めての性交渉は高校3年生。田舎の進学校としては早いほうでしたが、交際1年が経っていて、真面目なお付き合いでした。でも、私は関東の短大へ、彼は関西の大学へ進学。遠距離になり自然消滅してしまいました」
正恵さんは短大卒業後、病院に就職。大河さんと再会したのは23歳の同窓会だったといいます。
「当時は短大時代の彼氏と別れて半年ほど経った頃。正直、夫である大河と再開する気まんまんでした。『きれいになった』と言われたくて当日に美容院でヘアメイクまでしてもらって。プロに整えてもらったおかげか彼はすぐにデートに誘ってくれました」
再び交際が始まり、長男を妊娠したことをきっかけに24歳同士で結婚。
「若すぎるというほどではありませんが、当時でも大学卒業してほどない20代前半男性の結婚は早いイメージでした。しかも今のように『授かり婚』ではなく『できちゃった婚』と言われていた時代。でもお互いの母親同士が“ママ友”として連絡を取り合う関係だったので両家からは温かく祝福されました」
20代は仕事と子育てに追われる日々。
「夫婦ともに早く一人前になりたい一心で働きながら、両家の協力を得て子育てもしていました。あくまでわが家の場合ですが、早い結婚・出産にはメリットもデメリットもあります。メリットはやはり若くて体力があること、そして親もまだ若いこと。デメリットは、正直に言えば夫婦ともに『まだモテてしまう』こと。ホルモン的にも元気で出会いも多く、異性に惹かれやすいんです」
実際、何度か危機もあったそうです。
「お互いに浮気未遂がありました。夫のほうは未遂で終わっていないかもしれませんが、本人の未遂という言い分を信じています。20代は『嫌なことがあれば乗り換える選択肢がまだある』年頃。離婚せずに乗り切れたのは、子どもの存在と高校時代の思い出、そして当時はまだレスではなかったからでしょうね」
夫の浮気疑惑を職場の異性の先輩に相談し、先輩に好意をほのめかされて離婚が頭をよぎったことも。それでも子どもの顔を見て、両親にも説得され、関係を修復した20代だったと振り返ります。
「レスになったのは30代に入ってから。私が流産を経験し、しばらく性交渉をする気力がなくなった時期と、夫の3年間の単身赴任が重なりました」
帯同も考えたものの、心身ともに弱っており、子どもの面倒を見てくれる両親のそばを離れる決断はできなかったといいます。それでも大河さんは月に一度は帰宅し、夏休みには正恵さんが子どもを連れて単身赴任先へ遊びに行くなど、家族関係は穏やかに続きました。
「流産を経て息子の成長を見守るチームとしての絆は強くなりました。でも30代から性交渉はなくなりました。一度途切れると『さあ復活しよう』というきっかけがつかめないまま40代へ。更年期も重なり性的接触はますますどうでもよくなる悪循環でした」
漠然とした不安はあるものの大きな悩みもなく過ごしてきた正恵さんが、夫婦仲について真剣に考え始めたきっかけは「同窓会」と「息子の自立」。
「息子は東京の会社に就職してしばらく実家から通っていましたが、1年半前に会社近くのワンルームを借りました。季節外れの服は家に置きっぱなしで2週間に一度はご飯を食べに来てお米や食材を持って帰りますが、とりあえず自立してくれました」
すると急に、夫との「沈黙」が気になるようになったといいます。
「半年前、高校時代に仲のよかった女性だけの同窓会に行きました。みんな夫のことも知っているので、『高校時代のカップルで結婚した子は何組かいたけど、別れていないのは正恵だけ』『すごく愛されていたよね、理想だよ』なんて言われて。お世辞でも嬉しかったんです」
同時に最近、更年期が重く、夫との会話が愚痴ばかりになっていたことにも気づきました。
「これはよくないと思い、最近は車でアウトレットに行こうと誘ったり、息子へのプレゼントを探しに大型家具店に行ったり一緒に出かけるようにしています。ドライブ中に懐かしい曲が流れると自然と会話も増えてきました」
正恵さんには更年期や婦人科疾患の悩みもあり、必ずしもレス解消を望んでいるわけではありません。
「レスは解消してもいいのかも知れませんが、自然にそうならないのならもう枯れたのだと思います。でも昔、食器洗剤のCMで手をつないだご夫婦が出てきたのを覚えていて。高校の頃、『あんなふうに年をとっても手をつないでいたいね』と話したんです。まだ手はつなげていませんが、肩に手を乗せるくらいはできるようになりました。これからは老後の支え合いに向けて触れることに慣れていきたいと思っています」
セックスレスかどうかよりも「触れ合える関係」でいられるかどうか。正恵さんの「触れ活」は静かに続いています。
※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。
取材・文/星子 編集/根橋明日美 イメージ写真/PIXTA
2026年4月16日(木)23:59まで
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