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日本では半数以上の夫婦が陥っているといわれるセックスレス。NPO法人勤務の菜奈さん(仮名:45歳)もレスに悩む一人。長女を妊娠して以来およそ8年間、性交渉をしていないといいます。夫で不動産管理会社役員の亮太さん(仮名:48歳)が妊娠中に浮気してから「男としては見ることができなくなった」そうですが、夫婦は長女を溺愛しており、離婚を考えることなく「ストレス解消法を模索している」最中だそうです。
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「私と夫はお見合い結婚です。お見合いといっても格式張ったものではなく、実家に帰ったときに父の所属するテニスクラブに連れて行かれて引き合わされました。35歳で独身だった私を心配した父が、前日に『知り合いの30代の男性に会うだけ会ってみろ。会って気に入らなかったらもうあきらめる』とテニスに誘ってきたんです。まぁ1度行って断ればあきらめてくれるのなら、と思って行くことにしました」
亮太さんの実家は、菜奈さんの実家と同じ「地元の地主」の家系。蔵のある大きな家の存在は「なんとなく知っていた」そう。
「夫は次男です。いざ会ってみると『俺もだけど、なんかだまされて見合いさせられている感じだよね?』『ね。ご趣味は……とか言っときます?』なんてノリで同級生のように話がはずみ、お互いに恋人もいなかったので『レールに乗ってみるか』『楽だしね』とお試し半分で交際を始めました」
菜奈さんは「最初は恋愛感情があった」と話します。
「彼はトークに愛嬌があるタイプ。家庭環境が似ているせいか話のテンポも噛み合って好感を持ちました。あと、女性って男女の関係になるとしばらくは恋愛モードになりませんか? 今思うと『なんでこんなチャラい奴に惚れたんだろう?』という気もしますが、少なくとも交際当初は『素敵』と思っていましたし、新婚のころまではまだ『いい人だな』くらいの気持ちはありました」
両家が喜ぶ結婚をして、実家の近くに家を建て、不妊治療で子どもを授かった菜奈さん。しかし、妊娠中の夫の浮気で信頼が一気に崩れたそうです。
「私はつわりがひどくて実家に帰っていたんですが、ある日冬物の服を取りに家に帰ったんです。そうしたら女の人と鉢合わせをしました。とはいえイチャイチャしていたり抱き合っているところを目撃したわけではなく、女性は洗面所でメイクをしている途中。そういうときってお互い何を言っていいかわからなくて、相手は『キャー、すみませんお邪魔しています。すぐに失礼します』と口走り、私も『いえ……あの、私も急いでるんで』と言っちゃいました」
「さすがに家はないだろう」と怒りがわき、実家に帰ってすぐ両親に話して、義両親も交えた両家の話し合いに。亮太さんは畳に頭をつけて謝ったそう。
「お相手は、元カノでシングルマザーの年上女性。2人が出会ったときは向こうはもう子持ちだったそうです。どうやら事務の仕事のかたわらセミプロとして歌手活動をしている女性らしく、歌声が好きでライブに通っているうちに付き合い始めたみたいです。でも義両親に反対されて彼女と別れた頃に、私とお見合いをしたと聞きました」
離婚も頭をよぎったものの、子どもを1人で育てる自信がなかった菜奈さん。「もう会わない」という言葉は信じなかったそうですが、「車が買えるくらい高いアクセサリーをお詫びにもらって許した」と振り返ります。
「私が鉢合わせた浮気相手の女性は、女子大生がつけるような比較的カジュアルなブランドのネックレスをしていました。無意識ではありますが、もらったプレゼントの格で無理やり溜飲を下げたところもあるかもしれません。それに、お詫びにもらったアクセサリーは会社員時代からの憧れのブランド。私は妊娠を機に職場のデパートを退職したこともあり、周囲に愚痴を言う相手もおらずストレスを解消する方法がありませんでした。高級なものを手にすることで、シンプルに気分を上げたかったんだと思います」
その後、待望の第1子が誕生。しかも「親バカながらすごく可愛い女の子」だったことから、夫婦は娘に夢中になったそう。
「かわいいと言っても、美少女コンテストとかそういうタイプじゃなく、どちらかというとやたら愛嬌があるタイプ。前髪ぱっつんのおかっぱがよく似合う元気な子です。私が小学校受験対策にのめり込んで、近隣の女子校に合格しました。そういうときは夫婦でタッグを組むのですが、正直、浮気騒動以来、夫のことは『娘育成プロジェクトのビジネスパートナー』くらいにしか思えなくなりました」
亮太さんがなんとなく男の子も欲しそうなことを匂わせてくっついてきたことはあるそうですが、何度か「疲れているの」と断ったところ誘ってこなくなったそう。
「別にさほど残念そうでもなかったですね。欲しかったのは『私との男女の交流』ではなく、『男の子』だと思うので。それに私が避けたのは、元カノと切れていないのをうっすら感じていたからです。同時期に2人の女性を抱く男に嫌悪感がありました」
特に浮気の証拠を探していたわけではないそうですが、夫の車で「10万円くらいのネックレス」を見つけたときはさすがに離婚を考えたそう。
「私は専業主婦で無職でしたが、若くて健康なので働けますし実家もあります。『養育費をもらえるなら別れるよ。弁護士と弁護士で話す?』と激怒したら、落ちていたネックレスの10倍以上の値段のピアスと指輪を買ってくれました」
その頃、菜奈さんは子育てに疲れ、夫の浮気に冷めたフリをしても傷つき、「どこかおかしかった」そう。
「首にも、耳にも、指にも、いかにもなラグジュアリーブランドのアクセサリーをこれみよがしにつけて、でも洋服は子育て優先の汚れてもいいファストファッション。そんな身なりで保護者会にも同窓会にも行っていました。娘の通う私立小学校はお金持ちも多くてさりげないブランド品は珍しくありませんが、今思えば私は過剰だったようです。陰でブランド名のあだ名で呼ばれて笑われていたと、後で知りました」
その頃の菜奈さんにとって、ブランド品を身につけることは「おしゃれというより、全身にお守りをぶら下げている感覚」だったそうです。
「夫の元カノの影は節々に浮上していたので、そのたびにバッグや時計も買わせていました。なぜだかわかりませんが、そうすることで鬱っぽい脳が一瞬パッとポジティブになる気がして身につけることがやめられなくなっていたんです。自分がヤバいのは薄々感じていましたが、それを指摘してくれたのは関西に住む兄でした」
久しぶりに実家に帰ってきた兄は、高級アクセサリーをたくさん身につけた妹に唖然としたそう。菜奈さんの兄は20代に何度か海外赴任を経験したこともあり、眉をひそめて言ったそうです。
「『お前、殺されて全部盗られておかしくないぞ、それ。すれ違いざまに耳をちぎられるかもしれないし指を切られるかもしれない。どうしてもそれをつけたいんだったら、白いTシャツにマジックで“ニセモノ”って書いとけ』って」
菜奈さんの兄は「暇なのがいけない」と、知人がかかわっている困窮する子供を支援するNPO団体に妹を推薦してくれたそうです。
「その団体で事務やイベントの手伝いなどのパートをするようになって、自分の収入で好きなものを買うようになり、やっと憑き物が落ちました。ブランド依存症が解消し、ある意味“丸腰”で出歩けるようになったんです。兄は就職祝いに、ラグジュアリーブランドをもじった言葉がひらがなで書かれたネタTシャツをプレゼントしてくれました。『これを着とけば誰も本物と思わない』ということみたいです」
菜奈さんは、次に浮気が発覚したらプレゼントはいらないので、弁護士も挟んで両家で話し合おうと亮太さんに提案したそう。
「夫は娘の寝顔を見ながら泣いて、『彼女に頼られるとズルズルと関係を切れなかったけど、思春期になった娘に嫌われたら俺は終わる。今度こそ本気で向き合う』と心療内科にも通い始めました。セックスレスなのは今でも変わりませんし、今後どうなるかもわかりません。ただ私個人は、仕事を始めたことで、心に余裕ができたことは感じています」
※本記事では、プライバシーに配慮して取材内容に脚色を加えています。
取材・文/星子 編集/根橋明日美 イメージ写真/PIXTA
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